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「小説 雨と水玉(仮題)(40)」/美智子さんの近代 ”転勤の可能性その3”

(40)転勤の可能性その3

翌週の水曜日の昼、英子が美智子を呼び止めてバックヤードで教えてくれたのは、東京では来年大規模な新規開店があり人手が不足するらしく、各所に配置転換の希望がないかという話が来るらしい、という話だった。
英子によれば、こういう話の時は希望すれば転勤しやすく、早めに手を挙げておいた方が良いということらしい。あまり頻繁にあることではないので是非上司に希望を言っておいた方が良いとのことだった。

その夜、美智子は早速、啓一に電話で、詳細は土曜日に逢ったときに話したいとして、東京へ転勤の可能性が出てきたことを伝えておいた。

土曜日はいつもの時間に待ち合わせ、早速以前に行ったレストランへ行った。
注文をしてから美智子が、
「あの、英子さんが教えてくれはったんやけど、来年東京で新規開店が有って、こちらの方にも配置転換の希望がないか、問い合わせが来るらしいんです。こういうタイミングでは希望すれば女性でも東京転勤も出来る可能性が高くて、早めに手を挙げておいた方がいいって」
「うん、それはいい機会やね、そうした方がいいね。」
「ただ、上司に言うにしても、一旦言ってしまうと決まる方向にいくので、両親に先に言うとかなあかんのちゃうかなって」
「うん、それはそうや、その方がいい。
僕、お家へ行くよ、そうしよ、それでいい?」
「はい、まず、わたしから両親に啓一さんとのことを話しておいて、うちに来てもらうという感じやろか?」
「うん、そうかな。
ただちょっと待ってよ、それで勤めはって言われたたら、、、、
東京転勤の口がありそうって、言うのはなんかタイミング良すぎないかなあ?」
「それは確かにそうやと思う」
「なんか、結婚を急かせてるみたいな感じもあるなあ。
大丈夫?って思われれへんかなあ?」
「はい」
「でも、勤めのことは大事やけれどもいずれにしても結婚優先で考えてきたんやから。
違うかなあ?どう?」
「はい、それはもちろん結婚優先です」
「そしたら、まずは結婚のことをお話ししましょ。
仕事のことはまだ確かではないし、上手く行ってもすぐには決まらへんでしょ、
いずれにしても早いうちに美智子さんのご両親に結婚させてくださいって言いに行く」
「はい、それがいい」
「いつにする?」
「今晩、わたしから話してみます、
できれば来週とか、でいい?」
「うん、ええよ、そうしよ。
僕の方も両親には話しとくわ、近いうちに。
あの、この仕事の話があったからばたばたっていう感じに思えるけど、
ご両親に会わせてもらうっていうことは二人で話してたことやしね。
こうやって進めていくもんやと思う。
二人で力を合わせてやっていこう」
「はい、覚悟決めてやっていかなあかんと」
「そうそう」

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