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「現代化学史 原子・分子の科学の発展」廣田襄著 京都大学出版会

 2013年初版の京都大学廣田先生による、現代化学史を京都大学出版会が英断により刊行してくれています。

 化学に志したものは、読んで損はなく、化学において創造的事業(研究、技術開発、製品化)を行おうとするものは是非読んでいただきたいと思います。

 人間が社会に出て、近代を生き抜こうとすれば歴史に学ぶことは、ビスマルク(賢者は歴史に学ぶと言ったとか)に言われなくとも、最も大切な自己啓発であろうかと思います。

 一方、科学や技術を志すものは、最新の動向に敏感であろうとするものが歴史に学ぼうとするより圧倒的に多い。もちろん科学は合理的な検証を大原則とする以上、過去は現在未来の基盤にあるから安心して現在未来に取り組めるということが有るのはわかります。
 しかし、いまや高度に科学が発展してきた以上、またそれは人間が成した営為である以上、科学の歴史を学ぶことで、科学者や技術者は賢くなれて、だからこそ創造的仕事が可能になると思います。
 そう思うのは、きっと私だけではなく、この「現代化学史 原子・分子の科学の発展」の著者はじめ、出版関係者すべての意見ではないかと思います。

 この本は、特に科学の内、化学に志した者向けの『化学の歴史』です。
 この本がまた、面白いのは、もちろん廣田先生の見識によるところですが、化学の理論や現象、知見を編年体で追いながら、強くそれに関わる人物に焦点を当てている点です。
 また、我々日本人の化学者にとって、自分の化学の人間の繋がり上のルーツがわかるように日本の化学者をも丁寧にその化学における発見や貢献と共に紹介してくれている点です。

 このような本を読まない手はありません。

 是非有志のご一読をお勧めします。


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