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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
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2022年7月の記事一覧

「フッ素化学入門〈2010〉基礎と応用の最前線」(三共出版)のすすめ/機能材料技術者、生命科学技術者向け

企業に働く、機能材料技術、生命科学技術者向け、フッ素材料化学のおすすめ本です。 テフロンなどの樹脂材料から、医薬まで、守備範囲として構造機能材料、エレクトロニクス、創薬等まで、俯瞰的網羅的に、フッ素材料の物理化学から基本材料とその応用までを非常に分かり易く、本質を理解できるようにまとめています。 私自身、90年代に3Mという米国フッ素メーカーの技術者と共同で研究開発の仕事をしましたが、それが失敗に終わった後、せっかくフッ素材料に取り組んだのだからおさらいをしておこう、とこ

「新・日英同盟と脱中国 新たな展望」馬渕睦夫、岡部伸(ワニブックス)のすすめ

 昨年6月出版の「新・日英同盟と脱中国 新たな展望」馬渕睦夫、岡部伸(ワニブックス)のすすめです。  岡部伸さんは産経新聞特派員として、モスクワ、ロンドン駐在歴が長く、政治中枢へのコネクションもあったとのことで、特に英国情報に詳しく、歴史にも通じています。  馬渕さんは、元駐ウクライナ大使でモスクワ、ニューヨーク、英国に駐在歴もあり、歴史にも当然精通しておられる現在の保守論客の筆頭とも言える方です。  このお二人が、19世紀の歴史から紐解き、英国と日本の関係を軸に、歴史

「2017年世界最終戦争の正体」馬渕睦夫著(宝島社)「ウクライナ戦争 歴史は繰り返す 戦争と革命を仕組んだのは誰だ」同(WAC)

 6/24付け本ブログで、エマニュエルトッドの最新刊については紹介しました。  このレベルの内容がすんなり頭に入ってくる方々におすすめするのが、「2017年世界最終戦争の正体」馬渕睦夫著(宝島社)です。(馬渕さんは、元駐ウクライナ大使です)  2016年トランプが大統領選に勝つ直前に書かれたものですから、そう理解して読む必要がありますが、世界の基本的構造についてはそれを差し引いても十分奥行のある見識を示してくれる好著と言えるでしょう。  世界を動かす実質的要因としての国

「生物科学入門: 代謝・遺伝・恒常性」(白木賢太郎著 東京化学同人) のすすめ

 生物科学の入門書、高校生物から専門へ進む大学初年用と思われますが、改めてこの分野を学び直そうとする、企業に働く物理、化学関係の技術者、研究者にも十分応える普遍的なものと思います。  基本的なことをわかりやすく記述してくれて、易しいけれど奥の深さを感じさせる内容になっています。いわく、生命の根源を学術的に真摯に探ろうとする、学術研究の歴史を踏まえた本書後半の記述に見ることができます。  それは、著者である白木賢太郎氏(筑波大学 数理物質系 教授)の学究者としての志の高さに

「もっとよくわかる!免疫学 (実験医学別冊)」(河本宏著、羊土社)のすすめ

 先日、10年ほど前からの新しい生命科学の動きとしての「相分離生物学」についておすすめしましたが、今回も生命科学領域へ踏み込んでいこうとする物理、化学の若き研究者、技術者におすすめしたい本です。  羊土社から出版されている「もっとよくわかる!免疫学 (実験医学別冊)」(京都大学教授河本宏著)です。医学生には少し優しいと言われたりしますが、十分広範に免疫学領域をカバーし、免疫の全体像が把握できる良い教科書だと思います。  優しいと言っても、私自身は数年前2回繰り返し読んだ時

「こわいもの知らずの病理学講義」(仲野徹著、晶文社)のすすめ

 これも他分野、特に物理、化学の研究者技術者向けの病理学読本のおすすめです。  著者の仲野先生は、大阪大学病理学教授(現在は名誉教授)ですが、一般読者向けに非常に親しみやすく書かれています。この方は非常に博学でいわゆる教養学、リベラルアーツを十分深めておられる方だと思います。そういう意味で読み物としての面白さが有ります。  読んでいただければわかりますが、専門家としてもちろん優れた方である一方、一般的にはどれほどの意味があるのかと言った視点を常に意識して書かれて、門外漢に

「石原慎太郎」

 折しも参院選ですが、先日「『私』という男の生涯」関するブログでも述べましたように、石原慎太郎の不在がいまさらのように感じられます。  私と石原慎太郎の出会いは「挑戦」という、例の出光佐三が企図し成功したイラン産石油の米国を出し抜いた事件に関する小説です。40年前学生当時友人の一人から聞いて読んでみたものですが、そこからのめり込みまではしなかったものの、やはりひとかどの印象は受け、その後議員辞職、都知事就任をきっかけに「国家なる幻影」、「弟」をはじめその後の主だった著作は読