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遺された物、遺していく物 ~洋服・バッグ編~

両親の遺品整理と義実家の家仕舞いをやり遂げての私の学びを、何回かに分けて綴っていく。

この学びを更に咀嚼して留めておく目的は、私が自分の子ども達に親の遺品整理で困らせたくないからに他ならない。なので、遺される側と遺す側、双方の視点から考えることとする。

今回は遺品・実家整理に取り組んだ際に多くの人が処分に困る物の上位であると思われる服やバッグ等服飾品について、私の体験を基に考察する。
処理に困った理由として三点挙げる。

理由1  大量にある

多くのお宅(ご実家)で探せば、50年前の服やバッグでさえ出てくることはさほど珍しくはないのではないか?そこから積もり積もれば、十年単位の古着が大量にしまわれてあることはよくあることだと思われる。

ただし大量であることが問題であるならば、労力、時間、お金さえかければ確実に片付いていくので、単に量「だけ」の問題ならばさほど問題とはならないと感じる。

私の場合、義両親(存命)のそれはそれは大量の洋服を、本人達に持たせる数枚を除いては誇張無しに100%破棄したのだが、全て生協かヨーカドーで購入したレベルの品物(良品を仕分ける必要がなかった)、且つ私には(そして息子達にとっても)思い出深き物は皆無であったので、ひたすらゴミ袋に詰めていく作業であったことはラッキーだった。もし本人達や小姑がそばからそれは捨ててはだめ、あれは勿体ない、などと口出ししてきたのなら、こうもスッキリさっぱりは片付かなかっただろう。

時間はかかったし、廃棄用袋に詰めた物の移動は重労働だったが、まだ使えるモノを捨てるという罪悪感以外、単純作業だったので大した葛藤は生まれなかった。

理由2 購入した際には高価だった

購入した時の値段を知っていると、捨てる、もしくは安価で売り払うことには非常に抵抗を覚える。
私が買取りをしてもらう際によくお願いするのは三越伊勢丹のアイムグリーンというサービスなのであるが、以前は婦人服を担当していたという百貨店社員が、カシミヤコートでさえ二束三文にしかならないのが心苦しいと言っていた。シャネルのワンピースでさえ買取額は2万円とも。

ごく一部のエルメスのような最上級ブランドの限られた物以外は、購入した直後から市場価値はどんどん下がっていくのであろう。ならば「勿体ないから使わない」なんてナンセンス、気に入って購入したモノは高価であってもどんどん使っていくに限る。

そして良いバッグ、良いコートだから、子どもに遺してあげようという気持ちは持たない方が良い。クロコのバッグや毛皮のコート、象牙のネックレスの需要がなくなったように、人気のデザインも使いやすい素材も変化していくのだから。

理由3 思い出とリンクしている

この理由が一番厄介だった。母が若い頃によく着ていたワンピースの数々を見れば、それらを誂えるために連れていかれた下北沢の布地屋も新橋の洋裁店も、帰りにいつも寄るレストランで食べたパイシチューの味までもがまざまざと思い出される。
私が小学校に上がる頃に祖母が銀座サエグサで購入してきたスイスの刺繍ワンピースは、右も左も分からない小学校受験の時に着させられた。あまりに強烈な体験だったので、着ていた服以外にも試験内容でさえ覚えている。

遺す側からは、海外にに住んでいた時に子どもによく着せていたセサミストリートのエルモがプリントされているなんてことない大量生産のワンピース。手に取れば、毎日の蒸し暑さ、乳児の可愛さ、初めての育児の不安な気持ち、飼っていた犬猫の姿までが鮮明に甦る。

義両親の物はあんなにポイポイ棄てられたのに、我ながら自分本位と呆れながらもなかなか仕分けが進まない。そして母の洋服よりも、自分の子どもに着させていた洋服がとにかく仕分けできない。当の子どもは社会人2年目の未婚であるのに、まだ見ぬ孫は着るかしら?などとバカなことを考えてしまう。

祖母が私に与えてくれたワンピースも、私が子どもに着せていた服も、選び与えた人の愛情が物に載っているのだから、数は絞れど取って置くことに罪悪感は感じなくてもいいかなと思っている。

まだまだ綺麗な状態の可愛らしい幼児用ワンピース等はうまく執着を捨て、フリマアプリで見ず知らずのお嬢さんが喜んで着てくれることを想像しながら、幸せな気持ちで手放していけたら良いな、と思っている。(我が家はとても親戚が少ないので、お下がりを親戚の子どもにあげる手段はないのだ。)


結論としては、
・義両親の物の片付けは、他人である嫁がさっさと、できればこそこそと進めた方が、たとえそれが重労働で時間がかかったとしても、結果的には楽。

・高価な物を買ったら、勿体ないなどと思わず、また綺麗に遺そうとも思わずに、自分が使い倒す気でどんどん使う。

・子ども服は、着られなくなってから一年後までに売ってしまえば、かなり良い値がつく。ラルフローレンやファミリアでさえ良い状態であっても、3年経てばリサイクルショップでも渋くなる。とっておきを厳選し、それ以外の物は写真に残したら執着は捨てて手放す。蛇足だが、名前を記入する際は、生地にではなく、タグに書いておけば引き取りokなことが多い。

基本的に子孫に洋服やバッグは遺していかないよう心がけるのが吉だとの結論である。

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