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酔い止めは果たして効くのか。それともただの気休めなのか。

昨日、乗り物酔い(動揺病)について記載した。
予防に酔い止めを飲むことを挙げたが、酔い止めは種類もたくさんあり、何を選んだらいいのか分かりにくい。フローチャートを作成してみよう。

酔い止めフローチャート

乗り物に酔うと吐き気が出る理由~吐き気の経路~

乗り物酔いは、今までの経験で蓄積された感覚情報のパターンと、実際の視覚や平衡感覚からの情報とが一致せず、脳が混乱してしまう(感覚混乱)によって起こるとされる。この感覚混乱の情報を伝える神経伝達物質の1つが「ヒスタミン」と呼ばれる物質であると考えられている。酔い止めにはこのヒスタミンをブロックする成分が入っている。

※<医学的説明>
吐き気を引き起こす経路には大きく分けて、①前庭-自律神経反射によるもの、②化学受容器引き金帯(CTZ)を介するもの、③胃・腸管粘膜刺激によるもの、の3つがある。この中で、乗り物酔い(動揺病)に関連するのが、①前庭-自律神経反射である。前庭自律神経反射は、前庭系刺激が脳幹の嘔吐中枢のヒスタミンH1受容体を介して伝達され、第一世代の抗ヒスタミン薬はこれをブロックする。ちなみにラットを用いた動物実験において、CTZや自律神経求心道の切断をした動物モデルでは、動揺病を抑制できないことが報告されている。

酔い止めの成分

酔い止めには、上に書いたヒスタミンをブロックする成分(抗ヒスタミン薬)を中心として、いくつかの成分を混ぜたものとなっている。含まれている成分としては、下記のものが挙げられる。

・副交感神経を抑える成分(抗コリン成分):自律神経の乱れを抑え、胃の不快感など乗り物酔いの不快な症状を防ぐ。
・局所麻酔成分(アミノ安息香酸エチルなど):胃粘膜を麻酔することで、胃への刺激をやわらげ、吐き気 などを抑える。
・中枢神経を興奮させる成分(無水カフェイン、ジプロフィリンなど):脳を軽く興奮させることで脳の混乱を抑えて、乗り物酔いを予防する。頭痛軽減効果もある。
・めまいを抑える成分(ジフェニドール塩酸塩など):平衡感覚をつかさどる内耳の神経の働きをよくしたり、血流を改善したりして、めまいなどの不快な症状を抑える。
(ファーマライズホールディングスの薬局新聞2016年8月号より引用)。

酔い止めの選び方

市販の酔い止めを選ぶとき、まず考えるのは副作用の眠気である。効果が高いものは副作用の眠気も強く出る。そのため、眠くなってもよいので効果が高いもの、もしくは逆に移動中は寝たい場合などは眠気が強く出るタイプを、遊園地などに行くため眠気はない方がいい場合には眠気が弱いタイプを選ぶ。次に乗り物酔いで出やすい症状を考える。吐き気が出やすい人は吐き気止めの効果が高いものを、めまいが出やすい人はめまい止めの効果が高いものを選ぶとよい。

①眠気が強いタイプ

市販薬の中では、センバア®、アネロン®、マイトラベル®、トラベルミン®、などがある。これらのうち、吐き気予防の効果が高いのはセンバアProやアネロン®、めまい予防の効果が高いのがマイトラベル®となる。

②眠気が少ないタイプ

トラベルミンファミリー®、トラベルミンR®、パンシロントラベル®、トリブラプレミアム®などがある。これらのうち、吐き気のみを抑えたいならパンシロントラベル®やトリブラプレミアム®、めまいも抑えたいならトラベルミンR®となる。あとは値段などと相談だ。

酔い止めは果たして効くのか。それともただの気休めなのか。

酔い止めに対しては、「効くという思い込み」によって効果が出る、という話を聞く。確かに乗り物酔いは精神状態の影響を大いに受けるが、上記の通りに医学的な効果が報告されているのも確かである。ただ、効くのか疑いながら飲むよりも、よく効くと思って飲んだ方が効果があるのではないだろうか。

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