徒然物語45 免許皆伝

「よくぞ、ここまで耐え抜いたのぉ。
入門したころは、剣の振るい方もロクに知らん、ど素人じゃったのに。
 
…あれから10年。あっという間じゃったな。
 
兄弟子や同期が耐えられず次々と逃げ出す中、おぬしだけがメキメキと腕を上げおった。
数多の道場破りや強者も、皆退けおった。
おぬしに敵う者はもはや、おらん。
 
そう、ワシを含めてじゃ。
 
今日、奥義を取得したことで、おぬしはワシを超えたのじゃ。
もはや、ワシが教えられることはない。
 
“免許皆伝”じゃ!
 
我が流派の看板をしょって、これからはおぬし自身の道を歩むがよい!」
 
「ありがたきお言葉。師範、それでは免許皆伝の身として、早速ではございますが、ひとつ進言させていただきます。」
 
「なんじゃ。何でも遠慮なく申してみよ。」
 
「では。まず “流派 どて煮ちゃんぽんカマボコ流” はおそろしくダサいです。そりゃ弟子たちも辞めてきますって。

あと、この流派、総じて技の名前もダサすぎます。
奥義が “爆熱熱風ドッキリ斬改” って。
今時誰も口に出しませんて。
技使ったときに、そんなエフェクト出るのも恥ずかしいですし。
 
これからは、今風で行きます。

流派は “嘆きトキメキ初々流” に改名します!
あと、奥義は “春風恋恋つむじ斬” にします!
いいですね!」
 
「う、うむ。よかろう…」
 
こやつの威圧感に圧倒されつつ、ワシは思う。
 
ええ~今までそんな風に思ってたの!?
てか、ネーミングセンスどっこいどっこいじゃね?

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