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IBN寮物語

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#口上

IBN寮物語—新入寮生歓迎会3—

IBN寮物語—新入寮生歓迎会3—

私と猪俣が4階談話室に戻ろうとしているとき、4階の便所の流し台で、初めての手術を終えた外科医のように、手を洗っている坊主頭がいる。嘉門である。話を聞くと、嘉門は口上(こうじょう)を済ませた上に、自力で便所で吐いて、その後自分の手や口をゆすいでいたとのことだった。そして、「二人とも口上(こうじょう)まだやってなかろう。みんな待っとうよ」とまるで自己紹介を済ませていない我々をIBN寮内の寮生が待っ

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IBN寮物語—新入寮生歓迎会2—

IBN寮物語—新入寮生歓迎会2—

 鹿本が小鹿のようにプルプルと震えて立ち上がれずに腰砕けになっているのを見て、アルコールのアレルギー反応が出ていると全員が思った。鹿本は金属アレルギーを持っているので、アルコールアレルギーを持っていてもおかしくない。
 と新入寮生が思っていると、先輩たちが数名立ち上がり、鹿本の手を彼らの肩に乗せて担ぎ込むように、便所に連れて行った。そして、「鹿本、吐け」と言う。鹿本も吐こうとしているのだが、うまく

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IBN寮物語—新入寮生歓迎会1—

IBN寮物語—新入寮生歓迎会1—

 新入寮生となった4月1日にIBN寮内で歓迎会が行われることになった。本来はうれしいことなのだが、新入寮生全員が沈痛な面持ちをしているのは「口上(こうじょう)」の件があるからだろう。
 午後9時に開始された歓迎会は初め和気あいあいと始まって焼きそばなどを食べていたが、10分ほどして、2年生の先輩が一人すっと立ち上がり、「新入寮生の皆様、入寮おめでとうございます!これからも仲良くやっていきましょう。

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IBN寮物語—口上(こうじょう)1—

IBN寮物語—口上(こうじょう)1—

 入寮して数日が経過し、4月1日のエイプリルフールを迎えた。仙台は朝から雪が降っており、(半地下室にある)一階談話室から見上げる道路にも雪が積もっていた。室内に目を転じると、猪俣はすやすやと眠っており、北王子も眠っているが、なぜか奴の右手の隣には木刀が置いてある。嘉門も眠っているが、彼の足元にはロックピックハンマーがやはり置かれている。そして、鹿本はアレルギーのために夜中にくしゃみを多くしたのであ

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