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IBN寮物語

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2023年11月の記事一覧

IBN寮物語—半地下の生活—

IBN寮物語—半地下の生活—

 IBN寮(小学校の廃屋)から出てきたのは小柄な男性であった。法学部の3年生という彼は受け答えもしっかりしており、玄関先の受付でいくつかの事務手続きをてきぱきとこなしてくれた。廃屋に住んでいるとは言え、住人は礼節を守っているようであり、これなら自分もIBN寮でうまくやっていけそうだと少し希望の光が見えてきた。
 手続きが終わって、あとは自分の部屋に行くだけになり、部屋番号を聞くと、「無い」と言う。

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IBN寮物語—入寮初日—

IBN寮物語—入寮初日—

 大阪から東海道新幹線に乗り、東京でMaxやまびこという新幹線に乗り替えて、仙台に向かっている。初めて親元を離れることと自立した生活をすることで不安と期待が自分の中には混じっていた。IBN寮についたあとは、不安が自身の感情の全てを埋め尽くすことになるとも知らずに。
 仙台駅で八木山動物園前行きのバスに乗る。布団などの荷物は既に送っているので、旅行バックが一つあるだけの軽装である。八木山神社前で下車

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IBN寮物語—はじめに—

IBN寮物語—はじめに—

 本書のタイトルを読んで、技術革新や企業成長を成し遂げた天才技術者や敏腕経営者の話を聞けると思った方は大いなる勘違いをしているので、読むのをすぐにやめてほしい。本書のタイトルはIBNであり、IBMではない。IBN寮というのは、「トンペイ」という某国立大学にある寮を省略した名前であり、その寮生活の話が本書のテーマだからである。そのため、ここで出てくる話はその寮で悪戦苦闘する奇人や変人の話であり、そう

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