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本当はね、世界は144p画質なんだ。大人は嘘だって言うけどさ。

・目が覚めたらバスの中でした。終点に着くアナウンスで起きたのでワタワタドタドタ降車してしまい、こんなときに限って車内に忘れ物をしてしまいます。

・バスから10歩も歩かないうちに違和感が膨れ上がり、僕は忘れ物をしていると確信。

・――刹那、反射的に腕が動く。つまり僕が何を大事にしているのか、これを無意識で動いた僕の体が決定する。僕の右手が「それ」に触れるッ!

・スマホでした。USJで数年前に買ったネルフのカバーが付いたiPhone7でした。僕のスマホは他のスマホと違い、なめこ栽培キットが入っています。そしてその機能しか活用できていません。僕のスマホはそれに気づいた時から充電コネクタやスピーカーから白い液晶の涙を流すようになりました。寂しい思いさせてごめんな、と僕は保護ガラス越しにスマホを撫でます。スマホの涙にはなめこ特有のぬめりが混ざっています。

・スマホですね。スマホなんですわ。結局。じゃあ何だったら良かったですかね?

・考えます。

・ライトニングエルドラゴでした。メタルファイトベイブレードのライバルが持っているベイ。他のベイが青だったり黄色だったり分かりやすいカッコよさが並んでいる中、ライトニングエルドラゴはクリアな白を基調としたカラーリングで、且つ、左回転という逆張りのオタクみたいなベイなんですね~。

・封印されし者の右腕でした。まさかと思い左胸ポケットを探ると封印されし者の左腕、ズボンの両ポケットからはそれぞれ封印されし者の左足、右足が。地面に並べてはみるものの、やはり封印されしエクゾディアが足りない。僕が困っていると、突然後ろから声を掛けられた。「このカード、『エクゾディア』なんですねぇ。私は『エグゾディア』だと思っていました。だって濁点が多い方が強そうだって思いませんか?」声の主はバスの運転手さんだった。僕は同意を示すため深くうなづいた。「これが足りないんですよね」運転手さんが僕にカードを差し出す。見るまでもなく、それが何のカードなのか分かっていた。僕は勝利した。

・奇をてらっても良いことないですね。もうしません。

・上のような態度をとることからもう卒業したいです。

・忘れ物は眼鏡でした。

・僕は眼鏡が無いと世界が144pの画質になるので、そのための違和感だったのですね。眼鏡をかけると、かけなれているはずなのに、くらっとしました。1話のコナン君みたいなコミカルなくらっではなく、吐き気を伴ったくらっでした。コミカルとかけはなれていました。

・戻った視界が最初に捉えたのはカメムシでした。今日だけで三匹見ました。

・144pなら見られることがなかった存在を確認できて、嬉しかったです。

「私が非存在してあげている幸福は常にかみしめてね」
 僕の半身である無象ちゃんはスマホを触っているときに現れることが難しいです。なのでスマホを敵対視しています。

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