『バーン・アフター・リーディング』『ディパーテッド』

・マットレスと枕を変えてから、休日でも7時ごろに目が覚めるようになっている。一日の時間が増えると嬉しい。

・『バーン・アフター・リーディング』を観た。
 登場人物はカスとちょっとカスに二分される。でも、全員が今よりも良い人生にしたいという思惑で動いていて、その結果苦しんだり死んだりするので、悲しい人間臭さがあった。人生を良くする方法として浮気を採用するキャラクターが多すぎてカスだけど。
 行動力のあるカスは面白い。整形費用を稼ぐためにCIA機密文書を売ろうとする精神性をガソリンにしてこの映画は進められていく。
 悲しいことがあると、カスは泣かずに怒る。泣くカスもいるけれど、泣きながら周りの手を差し伸べてくれる人に当たり散らす。でも、カスもカスなりに悩んでいるので、それなりに感情移入できるし可哀そうにも思える。対岸の火事という感じ方ではあるけれど。
 張っていた伏線とチェーホフの銃口がそこに向けられるのか、という驚きがあった。90分映画ならではのテンポがある。スナックなスピード感。
 人の繋がりが複雑だけれど、順番に一つずつ明かされていくから意外と混乱しない。
 物語の最後はCIAの偉い人のため息というのも、ちょうどいい。

・『ディパーテッド』を観た。
 警察とマフィアの両陣営にそれぞれオトリが潜入している! という設定のワクワク力が強い。それを裏切らないキャラクターの強さと展開がある。
 特に凄いのはサブキャラの強さ。セリフや死に方、態度で観客が忘れにくいキャラクターを作っている。間を持たせて大仰に話すマフィアのボス、部下への態度が威圧的すぎる部長、他にもワンシーンしか登場していないのに印象的なキャラクターばかり登場している。
 意外性の演出が曲がり角で接触事故を起こすようなスピードで行われる。物語の4分の3を過ぎたあたりから顕著になってくる。エレベーターのシーンが特に興奮。
 映画を4分割したとき、それぞれの切れ目で物語の明確な転換点がある。とても綺麗な形だ。ちょうど半分を過ぎたあたりでこの映画で最も重要なアイテムが登場する。それも、あまり重要であると思わせないような、さりげなく印象に残る演出で。あの演出の手つきが凄い。思い返してみると、あんなに急に挿入されるエピソードなんだから重要に決まっているけれど、観ているときは大したことがないように感じていた。すごい。
『HEAT』ならここからとんでもないことになる……というようなシーンが何度もあったけれど、ドンパチすることにはあまり興味がないみたいだった。無くて良かったとも思う。
 この映画のタイトルは本当にディパーテッドなのか? というのはある。タイトル回収も2回くらいあったけれど、バチッと決まっている感じがない。
 特に良いシーンは、ネズミの2人が無言で電話をするシーンだ。物語が佳境を迎えた時、緊張がギリギリに引き上げられる。実際どれほどの時間が経っていたのか分からないが、1分くらい無音だったように思える。映画ならではだし、正体を隠さないといけない2人ならでは。

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