いつか死ぬときは朝日に照らされて。

・人混みの中で臭さがあったとき、由来は自分ですかね!? になる。

・チ。がすごかった。一貫して継承の物語であり続けた作品テーマの強度。最後の1ページまで継承する者される者の物語になっている。物語をあそこで止めたバランス感覚がすごい。描こうと思えばどこまでも描けたのに、継承の物語であるために、最適なタイミングで物語を終わらせた。
 悪役に据えられているキャラクターが魅力的であることもすごい。それも、悪役として魅力的というより、1人のキャラクターとして描かれるうちに、配役を超えたところで魅力的だった。
 主人公たちも悪役も、地動説に運命を狂わされた人間だという共通点がある。地動説の物語だから地動説が共通点であることは当然なのだけれど、その共通点のもと敵対しているのに、どちらも祝福されて終わるということがすごい。散々な目にあった悪役も、最期は朝日に照らされて死ぬ。

・チ。の世界観では天動説が正義で地動説は異端思想だけれど、読者の世界観では当然地動説が真理であり、天動説は過去のものである。という常識の層が、チ。の主人公を応援しやすくなっている理由なのかもしれない。

・あしたのジョーを読み始めた。
 絵やセリフはめちゃんこ古いけれど(連中をレンジュウと読んでいる)、構図とストーリーテリングには不朽の魅力がある。
 まだ初めの頃しか読めていない。力石も登場していない。ジョーが何者か? それも分からない。丹下段平の過去が明かされたくらいまでしか読めていない。
 しかし、ジョーが何者か分からないが、すでに彼の人生がどうなって行くのかを知りたくなっている。ジョーはテンポよく魅力的になっていった。まず変なおじさんに絡まれるけど軽く返り討ちにする。ドヤ街の子どもたちに囲まれるがこれも飄々と退ける。ヤクザな4人組がやってくるが、これも赤子の手をひねるように追い払う。ヤクザが集団で報復にくるけれど、しっかり半壊させる。
 この主人公は絶対に何かしてくれる! と思える。だから応援したくなる。
 ジョーの夢は? 強さの理由は? 女の子と話すときキモくなるのはなぜ? 何も分からないし明かされていないままだけれど、ジョーを好きになりつつある。『あしたのジョー』のネームバリューだけが理由ではない。
 でも、主人公がめちゃんこ強くて、そのために人から求められるという序盤のストーリーは、そのまま安い物語の設定と骨子が同じである。なのにおもしろい。ここを考える必要がある。

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