痛くて気持ちがいいぜ!

・0時回るまでに眠ろう! と思って寝転がって、鳴らせる骨を全部パキッた。
 指から初めて手首、首、肩、腰、足指、足首までした所で、ふくらはぎがビキビキに固まった。
 何が起こったのか分からないけれど、想像を申し上げると、筋の紐みたいなのが絡まった? のではなかろ? または筋肉の伸び縮みのくだりが縮まず終わったのか。
 眠たいから目は閉じたまま、暗い部屋でうずくまっていた。あんなに情けないことはない。
 目を閉じていると世界は無限になる。この感覚は伝わるだろうか。伝わらなくても良い。目を閉じていると、特に暗闇で目を閉じていると、春の平原に立っているよりも、宇宙の神秘の解説動画を見ているよりも、親の若い頃の話を聞いているよりも、無限を感じられる。
 無限というのは、空間の中にポツンと僕という個が置かれているのではなくて、自分が無限の数に霧散していることを意味している。視覚を放棄することで、どういうわけか身体という規定が緩まる。柔らかな無限になる。
 そこにふくらはぎの痛みが差し込まれる。刺すような痛みに近い。感想だけで表現すると、捻り切られるような痛み。引き千切られるような痛み。その辺りのバイオレンスな痛みだった。生まれてきたことを後悔する。
 痛みによる侵略が始まる。
 目を閉じている時に激烈な痛みがあると、無限に拡散した自分が全て痛覚に変わる。あの夜、僕は全身がふくらはぎになっていた。そして攣っていた。
 あの瞬間、自分に顔があることや血が流れていることや尻に穴があることを完全に忘れていた。無限の中でふくらはぎの痛みを受容するだけの存在。無限に広がる自我が痛みを感じることだけをしている。
 痛みって楽しいから好き。
 やっぱり刺激だ。

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