FANTASIAの熱、卯月コウ。

・にじさんじ 4th Anniversary LIVE 「FANTASIA」Day2

・人生で参加したライブは全てにじさんじ関連のライブで、それもすべてオンライン参加だというのが僕の中でとくに現代の若者らしい特徴だろう。
 ただ、現代の若者だろうがオンライン参加だろうが、ライブの熱は確かなもので、箱の熱気の代わりに全身が熱源になっていた。オンライン参加の熱は通常の暑さと勝手が違う。体温の上昇は感じるのに汗が一滴も流れない。精神的発熱と呼んでいるが、単に高揚とも言う。

・部屋の電気を消したあと、左右に二つあるモニターのうち、使わない方のモニターの画面を消した。FANTASIAにはライブ本編を観るチケットに加えて出演者個人だけを映すライバーカメラというものが用意されており、これを見るには追加でチケットを購入する必要がある。資本主義の正体見たりと思ってそのチケットは購入していなかったが、セトリの一曲目が出演者全員の歌で、それを観ているうちに、好きな人だけを観ることができるのにそれをしないということに耐えられず、購入を決意……。結果、正面のモニターにライブ本編を映し、もう一つにライバーカメラを映す形となった。

・卯月コウが画面に映るたびに嬉しさで満たされる。八人の中で金髪は卯月コウだけで、そのためにひときわ明るく見えた。美しかったんだよな。立ち姿は変な前傾姿勢だしリズムの乗り方は変な縦ノリだったしリスナーにしか向けていないような小ボケを挟んでいたけど、それでも美しかったんだよな。いや、あれを美しかったというのは明らかな表現の間違いかもしれない。卯月コウという文脈を知ってしまっているからこそ、あれは美しさなんてものではなくて、異彩だった。他とは異なる色をもってそこにいた。

・歌が上手だった。Prismatic Colorsの『再会』のときにも同じことを思ったが、そのときよりもさらに感動した。まさか『脱法ロック』を歌ってくれるなんて。伏線回収で、かつ、ライブ王をダブルミーニングに格上げしていやがる。

・コウが『脱法ロック』を歌い始めたとき、脳が拡張されたような快感があった。気持ち悪い表現だが、そんな感じだった。さらに頭からつま先まで衝撃の稲妻が走り、口角が天井に刺さった。「お……お……」みたいなうわ言を繰り返していたような気もしたが、ヘッドホンをしていたのでそれは聞こえなかった。僕のFANTASIAのピークはコウの『脱法ロック』で、それ以後はどこか放心していた。

・『Snow halation』で「思い出すなぁ、四周年ライブの帰りに――」とコウは言ったけれど、元ネタのラ帰雪牛がラブライブ4thライブなこととFANTASIAがにじさんじ4thライブなことが重なっていて、さらに再びダブルミーニングを生み出している。

・『らしさ』をコウが歌うのも良いな。大人代表っぽい加賀美さんと歌うのも良い。「自分らしさってなんだ?」を問いかける歌をコウが歌うなんて。
 加賀美さんは子どもの心をもって成長した大人なら、コウは子どもの心を失くさないように足掻いている子どもで、その2人が歌うという対比。
「変わらない大切があるから」という歌詞の説得力がとてつもない。
「理解されない宝物から理解されるための建前へ」という歌詞を聞くとどうしてもピノキオピーが好きだと思い出した人を思い出してしまう。コウ自身はライブの最後で変わっていくことを表明していたけれど、この歌詞を歌ったということがこれまでを忘れないという意味になっていて、これまでどおりにみんながおいていってしまったものを拾っていくスタンスを続けることを示していて、嬉しい。嬉しさで満たされた。

・パフォーマンスが終わってコウが1人残されたとき、「大事なお知らせ」があるんじゃないかと心臓が冷たくなった。これは出雲霞の引退を知った時と同じ冷たさで、ライブの熱がそのまま反転したような霊感だった。内容は普通に現地参加の人へ向けた退場のアナウンスで、初めて胸をなでおろす体験をした。

・世界中に同じ感動をしている人がいる人がいる事実に震えながら、公園のプランターやらフェンスを飛び越えて町内を走り回る運動でその感動を解消した。

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