個人的!あいみょんの楽曲ベスト10

 独断と偏見と好みで選ぶあいみょんのベスト10です!


10位:RING DING

 この曲は強い女性が恋人をぶっ飛ばす曲だ。「いちいち蹲ってるとかまじでうざい ほっとけとか言うならまじでほっとくぞ カッコつけんな」「明日晴れても晴れなくてもどこか行こう 指切りげんまん 嘘ついたらぶん殴りに行くからさ」という歌詞は、背中をぶっ叩く勢いで勇気をもらえる。

 あいみょんの歌い上げる強い女性像が好きだ。もちろん、その強さは弱さも内包している。固くて脆いコンクリートではない。柔軟な壁面と確かな芯を持っている。つまり、あいみょんの歌う女性が持つのは"自分を貫く"という意味の強さなのである。


9位:ふたりの世界

 恋とは不可思議なものである。「そばにいるだけで幸せだなんて 私そんなこと今まで一度も思ったことないわ でも勘違いしないで 嫌いなわけじゃないのよ 自分でもよくわからないわ なぜ泣いているのか」という、よくわからない好きな人への感情をよくわからないまま歌うのが本当にいい。あいみょんはいつも言い訳しない。感情に対して真っ直ぐだ。それが潔くてかっこいい。


8位:二人だけの国

「きっとここが天国」という歌詞にすべてがある。この恋愛のふわふわ感がたまらない。夜行バスに乗って住み慣れた街を離れていく夜に聴くととてつもないことになる。


7位:どうせ死ぬなら


「どうせ死ぬなら二度寝で死にたいわ 欲を言えば父ちゃんと母ちゃんに挟まれて 誰かを愛した証を私の胸に張って よくできましたと手を添えて」

 この歌詞を初めて聴いた時は泣いた。二度寝はありえないくらい気持ちがいい。二度寝で死にたい。本当にそうだ。全身麻酔で死を疑似体験した時に思ったのは、死とは抗いようのない睡眠であり、落ちる瞬間すべてのことがどうでもよくなりニルヴァーナに至るということだ。あの瞬間はものすごく気持ちがいい。父ちゃんと母ちゃんに挟まれたらもう無敵である。さらに誰かを愛せたなんて、最高の人生だ。


6位:風のささやき


「このまま朝が来なけりゃいいのに うずくまってる真っ暗な布団の中で またあいつとあいつをぶん殴ってやった それでも変わらない生活に 一生のお願いとか使えたなら この先を僕じゃない誰かに変えて」

 この歌詞はあいみょん自身の経験も入っていると思っている。彼女は学校に行かなかった時期(ないし、行っていたけど楽しくなかった時期)がけっこうあったとどこかのインタビューで言っていた。後半の精神科医の歌詞ももしかしたら体験なのかもしれない。ちなみにあいみょんは体験と妄想を半分ずつくらい歌詞にしているらしい。視点では男性視点の方がやや多いとか何とか。男性目線の歌詞は、女性である自分からは想像になるが故に面白いと、これもどこかのインタビューで言っていた。


5位:生きていたんだよな


 初めて友人と話題にした曲だった気がする。冬の京都、タイルの床がものすごく冷える居酒屋であいみょんの話をした。大学から少しだけ今出川通を堀川寄りに進んだところにあった。寒すぎて頻繁にトイレに行き、また酒を飲むという無限機関みたいなお店だった。あいみょんよりも半世紀昔のフォークソングが流れていた。

「生きていたんだよな 新しい何かが始まる時 消えたくなっちゃうのかな」

 この歌詞は危険だ。春の心をそのまま掬い取っているから。始業式に出る前に桜を見てはいけない。同様に、始業式の午後は友人と帰れなければ危ない。そういう白い空気に融けていってしまうような危なっかしさがある。

「最後のサヨナラは他の誰でもない 自分に叫んだんだろう さよなら さよなら」

 この部分でいつも泣いてしまう。


4位:夢追いベンガル


「セックスばっかのお前らなんかより 愛情求め生きてきてんのに ああ今日も愛されない」

 この歌詞に心臓をぶち抜かれる人間はたくさんいると思う。僕も一生歌っている可能性がある。ちなみに「貯金通帳はいつもカモメだな」の部分が本当に最寄りのゆうちょに行っている時に流れやすい。再生時間と家からの移動距離のせいだろうが、何だかおもしろい。


3位:今日の芸術


「ポラロイドカメラを手にした 高校卒業の春に 嫌いな人と縁を切り これでバンザイ ハッピーエンドだぜララバイ」という出だしが好き。これはかなりあいみょんの体験が入っている歌詞だと思う。さらに言えば、僕のように家からはるか遠くの大学に進学した人間にも当てはまる歌詞だ。新しい人生を始めようという気になる。

 さらに「後ろ指さされたらその手に花束を持たせてやれ」「目の前にあるキャンパスに何も描かなくてもいい それも芸術だ」は岡本太郎みがあって最高である。あいみょんは岡本太郎の『今日の芸術』に影響されていると言っていたわけで、これはまさにそういうことだ。


2位:空の青さを知る人よ


 あいみょんのワードセンスは天才的だが、それが如何なく発揮されているのがこの曲だ。

「全然好きじゃなかった ホラー映画とキャラメル味のキス 全然好きになれなかった それなのにね 今は悲鳴をあげながら 君の横顔を探している」

 この歌い出しだけで史上最強の恋愛ソングだ。『好きじゃない、それなのに……』というのは鉄板であり、それを軽快かつどこか哀し気なリズムに乗せて歌う。

 その行先は「一番弱い自分の影 青く滲んだ思い出隠せないのは もう一度同じ日々を求めているから」である。そして、その想い人は「いつも君が最初にいなくなってしまう なんで僕にさよならも言わずに空になったの?」となる。つまり、歌い手の前からいなくなってしまったのだ。いなくなることを「空になった」と表現できるのはすごいセンスだと思う。遠くへ飛行機で行ってしまった感じもするし、亡くなってしまった感じもする。まさに詩である。

 だが、悲観では終わらない。最後には「君が知っている 空の青さを知りたいから 追いかけている 追いかけている 届け」と、消えた君を追う宣言をする。悲しいけれど爽やかに、まさに抜けるような青い空に向かって。

 恋の歌でもあるだろうが、個人的には高校時代の先輩へ送る気持ちも近いのではないかとも思う。男女かもしれないし、同性かもしれない。いずれにせよ歌い手=後輩は先輩を慕って追いかけていた。それが空になってしまった。そういう別れを乗り越えて、それでも歌い手は走っていくのである。


1位:君はロックを聴かない


 あいみょん本人が一番好きな曲だと言っていた。この曲ができた時、「これから何かが変わる」と思ったらしく、事実この曲の大ヒットによってあいみょんは売れない歌手から時代の寵児へと駆け上がっていった。

 さて、「君はロックなんか聴かないと思いながら 少しでも僕に近づいてほしくて ロックなんか聴かないこと知ってるけど 僕はこんな歌であんな歌で 恋を乗り越えてきた」というサビで歌われるのは、「埃まみれドーナツ盤には あの日の夢が踊る 真面目に針を落とす」という1番を聴く限りレコード時代のロックだ。おそらく、THE BEATLESではないか(あいみょんの父親が好きだったらしい)。歌い手にとっても青春の曲なのであるが、今時の子である君はそんなこと分からない。でも、"僕"の好きな曲を君に聴いてほしい、好きでいてほしいという気持ちは、リスナーみんなとてもよく分かるはずだ。

 2番「僕の心臓のBPMは190になったぞ 君は気づくのかい? なぜ今笑うんだい? 嘘みたいに泳ぐ目」

 ここの卓越したリリックセンス。思春期の恋心を見事にとらえている。そして「君はロックなんか聴かないと思いながら あと少し僕に近づいてほしくて」「君がロックなんか聴かないこと知ってるけど 恋人のように寄り添ってほしくて」と歌う"僕"は、自分を理解してほしい(理解しようとしてほしい)と同時に、『君』を『ロック』と一体化している。この『君』は現代音楽シーン/聴き手でもあると思う。ロックキッズだったので「君」に「僕」の「ロック」を聴いてほしいという気持ちは本当に分かりすぎる。僕の好きなものを君にも好きになってほしい(大切なことなので2回ry)。
 

 10位以内に入らなかった曲もいい曲ばかりである。ヒットしているからと倦厭しないで、是非あいみょんを聴いてほしい。君はあいみょんなんて聴かないかもしれないが、僕はこんな歌やあんな歌で人生を乗り越えてきたのであるから……。

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