Mリーグの点棒授受間違いについての所感

昨日(3月29日)のMリーグセミファイナルで、オーラス前の点棒授受で放銃した伊達選手が供託を間違えて自分の所に入れてしまった分、トップの石橋選手の点棒が1000点過少に見える状態となり、他者のトップとの見た目点差が変わってしまったため鳴き仕掛けの有無(順位取り)にまで影響しちゃった、という件について。

見てて思ったのは、審判の立ち位置がフワフワしすぎじゃね、ってことだった。審判本人が悪いというより、審判という、Mリーグをスポーツっぽくしようという意図で設けられたポジション設定が運用の中で「雑」過ぎという意味だ。

Mリーグの規則の中では、「まあなんかいろいろと起こるかもしれんけど、そこはそれ、審判がうまいこと裁定してちょ」という感じになっていて、それもあって審判には張さん、梶本さんという、麻雀ビジネス界のベテラン的な?選手が文句言えないだろうという方を指名してるのだが、実はそれだけじゃ上手くいく訳がないのだ。

一般的に、メジャープロスポーツにおける審判、レフェリー、アンパイア、といった、試合判定を裁定すると思われている人々には、実は非常に細かく「職務範囲」が設定されている。試合前にグラウンドにゴミが落ちてないか、ゴールネットが破れてないか、ボールの空気圧は大丈夫か、などから始まり、警告や注意を出す基準が選手に対して示されているルール運用のガイドライン(毎年改訂される)に適合しているか、など極めて繊細かつ包括的な業務範囲が設定、公開されている専門職である。

一方、スポーツであることを目指し発展途上であるMリーグの場合はどうかというと、「実況解説を聞きながら観戦していて、実況解説が気づいて騒ぐレベルの何かがあったら、当たり障りのないように進行させる人」である。具体的に何をチェックして、何に責任を負うのかが全く不明だ。

具体的に言うと、今回のように点棒授受の誤りについては過去にも訂正を指示することが何度かあった。ということなら、正しい点数状況を把握していて、それが間違っている場合に選手に警告するのは審判の職務範囲であるはずだ。アガリ点についても誤りを訂正することがあったから、それも職務範囲らしい。山を崩した時にどうするかもそうだし、少牌時の指摘もだ。

で、問題なのは、そんな感じで「真面目にやったら目を離せないレベルでえらく大変そう」な審判業務の立ち位置が現場運営側では軽視されてるっぽいことだ。

なんでそう思ったかと言うと「Abemaプレミアム」の裏インタビュー担当が、レギュラー解説者じゃなくて選手解説の時は審判の業務になっちゃってるからだ。

つまり、上述のえらく大変なはずの本来的職務行為よりも、「あの局面でリーチしなかった理由聞くのはネタになるなー」とかの方が重要なタスクになっちゃってる訳だ。だって「判定を要する変なこと」は起きるかどうかわからないけど、重要な販促行為である対局後の課金者向け選手インタビューは必ず実施するタスクだからね。誰があの立ち位置に置かれてもそうなっちゃうと思う。

で、私が「軽視」と言ったのはそこだ。
「あ、選手解説の時は裏インタビューどうしよっか」
「審判に頼めばいいんじゃね」
「ちょっと選手解説の時は審判の〇〇さんが裏インタビューやってもらえませんかね」
「お、おう」
みたいな感じの流れが容易に想像できる。
そりゃまあ試合見てれば、審判が積極的に何かを裁定しにいくってことはなくて、実質後付けで当たり前のことを言うだけの人ってポジなのはわかるし、ルールに書いてあることでも、空気読んでお目こぼししてたりするお飾り外部監査役みたいな感じだ(萩原選手等の度重なる時間のかかる絞り盲牌はどう見てもルール記述からイエロー相当なのだが、4年経ってまだ改善されなくても放置だしね)

現場が「競技」「スポーツ」という「理念」から離れて運用、コスト、に寄っていくのはエントロピーの法則みたいなもので、ある意味避けがたいことではある。
だからこそ「興行」であることと、それでも「競技」であることは不可分なものとしてガバナンスを効かせていかないとマズいのではないかな、と感じる。「審判がきっちり仕事する環境を準備する」のは「競技」の領分だから「興行」的理由でなし崩すべきじゃない、でないとプロレスとの境界線すら危うくなってくるんじゃないだろうか。

個人的には、細かいチェック担当なんて麻雀得意な若者バイトでなんとでもなるんだから、キッチリとチェック事項整理して時給1200円2名体制とかでやらせりゃいいと思う。牌譜投入させてる奴とかもいるんだからさ。で、実況解説より先に気づいてイエローフラッグ投げ込んでくれ。事実関係確認した後選手と相談して裁定出す、の段階で張さんとかの大御所が出ていけばええやん。ウマ娘マネーをワールドカップにつぎ込んでくれるのはありがたいけど、Mリーグ番組運営にもその1万分の1くらい流してくれよ笑。機構とAbemaの境目の話とかはよく知らんけど、似たようなもんやろ。

ついでに、伊達ちゃんの審判に対する発言にも触れておこう。
自分が伊達ちゃんの麻雀やキャラのめっちゃファンであることを差し引いても、あそこで「状況変わっちゃうんですが」と言うのはすごく良いと思った。なんだろ、競技や相手に対するリスペクトというか、スポーツマンシップというか、そういう矜恃を感じた。ゴルフで相手プレーヤーが不利を被らないようにプレーする的なやつというかね。
すぐ別視点で見返したんだけど岡田プロ、1000点違うってなった時に明らかに「あわわ」って顔してて笑。トイメンにいた伊達ちゃんが察したんだと思う。さすがや。白鳥さんの海底ずらしフォローでもらった恩をここで返すんやなって感じでちょっと感動した。



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