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【酒肴】夏越のかつを


  かつをの季節が過ぎようとしている。
  江戸っ子ではないが、かつをだけは放っておけないという、その一点に限っていえば、典型的な江戸っ子気質カタギと呼ばれてもかまわない。いや、呼んでくれ。それも、やっぱり、戻りかつをより初鰹。銀皮を残したサクがあれば、タタキでもいいし、厚めにねっとりとした刺身もいい。いつだったか勝浦で一本買ってきた、かつを。あれは難儀した。うちの台所の流し場じゃ、ちと荷になる。ここはおとなしく、サクでいい。
  近所のスーパーは魚の仕入れがいい。
  ホントはいい魚屋が駅前にあったのだけれど、数年前に店をたたんでしまった。たたんだとたんに、オヤジさんは亡くなった。仕入れる魚のように、キレイな生き方だと思った。
  だが、しかし、それ以来の魚屋難民だ。
  なので、このスーパーの鮮魚部は助かっている。
  で、かつをのサクを見ていたら、不揃いな切り落としをみつけた。丸魚を扱うがゆえの切り落とし。よし、これにひと手間だけ加えよう、と、買ったかつをが298円。
  商店街で青唐辛子を買って、うちにはカウンター仲間からいただいた新にんにくがある。
  煮切醤油をつくって、そこに青唐辛子を半分、にんにくを薄切りにしてすこし。漬けるのなんて15分でいい。その間に薬味を刻む。みょうがに青葱、大葉がわんさかなったので、大きいのを10枚ほど。薬味は多ければ多いほうがいい。ちなみにこの漬けだと、薬味がなければ辛子を溶くといい。
  酒は勝浦の腰古井。
  ねっとりと、さっぱりと、がっつりと。
  夏越の肴。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。