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城下国際演劇祭2022-23

どうも。昨日は最後の最後で思いつきで設定を弄り倒したため、台本が1Pしか進まなかった僕です。
大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。

さて、日曜日にいつも僕に懐いてくれる和田君の紹介のもと、フラッと行ってきました「城下国際演劇祭2022-23」
去年も何度か上演し、ピンからキリまで色々な作品が楽しめるこの企画(言い方)

本当は昨日感想を書こうと思ったのだけど、ちょっと昨日だけじゃ処理しきれず、酒もずいぶん残っていたので、今日は落ち着いて話したいと思う。

ガンガンネタバレしてますが、まあ良いでしょう。

最初がスズキカクの「私があなたの未来です」
中学生の女の子が、未来に不安を抱いている時、ふと未来の自分が近くにいるのではと気付き、未来の自分を探していると、そこに現れたのは男になった未来の自分だった。

と、ざっくりなあらすじですが、こんな感じ。
タイムパラドックスや親殺しの、自分殺しのパラドックスなど、SF要素を取り入れながら、物語は進んでいった。

とっても初々しかった。やりたい事が上手く噛み合ってないアンバランス感。ギャグもツッコミもまだまだで、次に期待。物語のオチもなんとなく読めちゃうけど、何故最後の行動に至ったのか?が弱すぎて消化不良。

中学生役の伊藤さんは、芝居を覚えれば良い役者になると思いました。

そして劇団はだざわりの「Oh My Goddness!」
絵描きのジャンが、美術館の立入禁止区域にある彫像を発見する。
それは美しい妻を友人に奪われ、悲しみの中、妻を忘れることが出来ない彫刻家が作った「女神の像」だった。ジャンはその女神像に一目惚れし、その美しさを伝えようとするが、口から出るのは「おっさん」という単語ばかり。だから言葉ではなく、絵で伝えようとするが、出来上がったのは「おっさん」の絵だった。

うん。自分で思い出しながら書いてはいるが、このあらすじだけで面白いのが悔しい。

とりあえず話は置いておくが、演出のセンスが抜群に良い。「お客さんに見せる事・見られる事」がちゃんとわかっており、なおかつ「お客さんが欲しいもの」を確実に掴んでいた。

中盤何度も訪れるジャンの創作シーンは、全て奇妙な音楽とダンス、そしておっさんで締め括られ、最初見せられた時は「なんだこれ?」と思うのだが、2回目、3回目が楽しみになっており、みんな視線は「おっさん」に釘付けになる。

我々はもう冒頭の重々しいナレーションも、絶世の女神のことを忘れ、ひたすらジャンとおっさんの苦悩を見せられる。なんだこれ。一言も喋らないおっさんに心奪われるなんて、滅多にないぞこんな経験。

で、まあこのジャンは芸術家としては一流なんだけど、天才的であるための合理性や論理性が偏っていて、友人と言えるのはいつも長靴を履いている「長靴」と赤いルージュを塗っている「ルージュ」だけ。

その二人が「長靴」を履いているのも「ルージュ」を塗っているのも、全て「ジャンに認識してもらうため」だった事に気が付く。二人がジャンの才能なのか人柄なのか、どこに惹かれたのか。その答えは劇中に出ないけど、二人がジャンの側にいたいと思う気持ちにグッとくる。

そしてジャンは自分が表面上の美しさしか汲み取っていない事に気づき、初めて自分の心に浮かんだ「存在しないもの」を描く。その後中盤で喧嘩した長靴と仲直りをして幕を閉じる。

何がうまいって「おい?女神像はどうした?」「おっさんは?」ってならないんだよね。美しさの魔力に引き込まれたけど、美しさは表には出ない。自分の内側にあるんだという王道ストーリーに、きちんと仕上げていた。
演じている役者達も芸達者で、特にルージュの多田さんは何やっても上手いな〜と感心した。

で、ここからが本題(前置きが長い)

「何故ジャンは女神像を見て、オッサンとしか表現することが出来なかったのか?」これを昨日からずっと考えている。なんか気になってしまうから。なのでいくつか仮説を立ててみた。

仮説1「ジャンに「真の美しい」を表現する手段がなかった」
ジャンは表面的な美しさはわかっているが、見た事のない美しさを表現する言葉も方法も持っておらず、それを「誰にどう伝えたいのか?」も曖昧だった為、オッサンになってしまった。
他人に興味がない為、自分自身の言葉は伝えることが出来るけど、他者から受けた刺激を、他者に伝える事が出来ないジャンなら、有り得るかなと思ってしまう。これなら最後に自分の心の絵を描いた時、筆が進んで楽しそうな表情がよくわかる。

仮説2「悲劇の彫刻家も、妻の表面の美しさしか捉えておらず、彫像におっさんの心が宿って、それがジャンの心に残ってしまった」
これは仮説1とは違う解釈で「ジャンは表面的というより、印象付けされたものしか見ることが出来なかった」場合、彫像を見て覚えているのが「おっさん」だけだったという説。
だって、あのおっさんなら、妻に逃げられても仕方ないジャン。
「木を見て森を見ず」な感じで「美しいは美しい」と一つの認識しか出来なかったジャンが、周りを見て、自分の心を見て、そこでようやく一歩踏み出すと考えると、この説も納得いく。

仮説3「ただオッサンを出したかった」
僕としてはこれが一番面白い。「美女を伝えるのがオッサンだったら面白くね?」の一言で全部終わり。最高だ。このぐらい貫いてほしい。

そんな訳で、とても有意義な演劇祭でした。
大学生達が創り出すお話は、時にピュアで、時に大胆で、これからいかようにも変化できる楽しみに満ちていました。

僕もますます頑張ろうと思います。

良い時間をありがとう。

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