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最強カスハラ客にボコボコにされた話

おはこんばんちは。
現役リフォームプランナーの寸尺かんなです。
人生最大の危機と言っても過言ではない、ひどいカスハラ被害に遭ったお話をします。

カスタマーハラスメント、略して「カスハラ」

カスハラとは、カスタマーハラスメントのことです。
小池都知事がカスタマーハラスメントの条例を作ると言ったり、NHKのクローズアップ現代で特集されたことでも、この問題への社会的関心の高さがうかがえます。

カスタマーハラスメントは、アパレルやスーパーなどの店頭販売から行政窓口まで、あらゆる業種で深刻な被害が報告されています。電車に乗っても、「迷惑行為やめてください」と呼びかけているポスターが貼ってあるのを目にすることが増えました。サービス提供者側に、一方的で理不尽な怒りをぶつける顧客が増えているのです。

リフォーム業は、カスタマーハラスメントという言葉が一般的になる前から、クレーム産業でした。新築購入に次いで、高い買い物がリフォームです。貯金やローンで高額な工事を注文し、住まいの悩みが改善すると期待していたのに、それが裏切られたと感じると、激しい怒りに変わるということが起こります。

リフォームはもともと、古い家を直すだけなので、当然ですが新品になるわけではありません。最終的な完成度を、施主と施工側とが相互に、納得できるポイントを擦り合わせることが、この業務の最も重要な点です。長年この仕事をしていますが、お客様から100点満点の評価をいただくことは滅多にありません。一年に1件、80点をもらえたら良い方です。

それまでの私は、クレームが起こるのは、リフォーム担当者の責任が大きいと思っていました。お客様にしっかり理解を得られずに工事を進めたり、伝えるべきことが伝わっていなかったりするために起こるものだと考えていました。キャリアの中で何度か、地雷のように嫌な客に当たることはあっても、基本的には、しっかり現場をコントロールできていればトラブルは回避できると、接客には自信を持っていました。

ところが、ちょうど一年ほど前、ついに私自身がカスタマーハラスメントの被害者になりました。

カスハラ経営者、登場

安住氏(仮名)は、60歳前後の会社経営者です。
NHKの特集番組が、カスタマーハラスメントを起こす人の特徴は、45から65歳ぐらいの社会的地位の高い男性が多いと報道していました。安住氏はまさに、この特徴に当てはまる人物です。

当初、打ち合わせは順調でした。インテリアに対するこだわりが強い安住氏は、照明計画についても、間接照明やライティングコントロールなどを要望しており、専門知識を持っている私のことを気に入ってくれました。あちこちのショールームへ同行し、キッチン、照明器具、壁紙などの商品選びから、間取りの細部にわたるまで、打ち合わせを重ねました。

安住氏は、なるべく早く新居に引っ越したいと言っておられたので、 こちらも休日を返上してショールームに同行し、なるべく早く見積りとプランを提出し迅速に対応していました。ところが、リフォーム内容を詰める最終段階で、ぷつっと音信が途絶えました。

恐らく、安住氏はこの期間、他社に「あいみつ」を取っていたのだと思います。「あいみつ」とは、同じ内容の工事費用がいくらになるか、他の会社にも見積もりを取ることです。

ハラスメント開始

2週間ほど経ったころ、安住氏から唐突に、
「工事はいつから開始するつもりなんだ」
と連絡がはいりました。しばらく連絡が途絶えていた上、こちらが提出している複数の提案、例えば、 キッチンを変えるプラン、変えないプラン、ライティングコントロール設置するプラン、しないプランなど、どれにするのかも、どこまでやるのかも決まっていないにも関わらずです。

当然、契約もまだ結んでおらず、工事をいつから始めて、引き渡しするのかの具体的な日程を組むには至っていない段階だったのですが、それにも関わらず、いますぐにでも工事を始めるよう、要求してきたのです。

「リフォームの打ち合わせが途中で止まっていたので、急に言われても難しいです」とお伝えした途端、 最初の爆発が起こりました。
「どういうことなんだ?!」
「打合せの当初から、何月何日には引っ越しして住み始めたいという意図はちゃんと伝えていたはずだ!!」
と、怒鳴り始めました。
こちらも、「引っ越しを急がれていることは分かっていたので、スピーディーに対応していました」と、いくら言い分を説明しても、聞く耳を持ってくれません。

この時点で、こうまで埒が開かない相手に対して警戒心が起こり、安住氏の工事は受注しない方が良いと判断した私たちは、「ご理解いただけず残念ですが、今回の工事は辞退させてください」と、メールで丁重にお断りしました。

ところが数日後、私たちはお断するどころか、安住氏に謝罪させられたうえ、工事を請けることになっていました。その理由は、安住氏が呼びつけた不動産屋が仲裁に乗り出したからです。

不動産屋の介入

ここで、不動産屋とリフォーム会社の関係について、少しご説明します。
不動産屋とリフォーム会社は、業務提携していることが多く、不動産を購入した客を提携先のリフォーム会社に紹介すると、リフォーム会社側は、顧客を紹介してもらった見返りとして、リフォームの売上から数パーセントの紹介料を不動産屋に還元するのです。

安住氏も、この不動産屋から紹介された客でした。つまり、安住氏は不動産屋に頭が上がらない当社の弱い立場を理解した上で、間を取り持たせ、こちらの工事拒否の意思を撤回させたうえ、段取りを怠ったという理由で謝罪までさせるように図ったのです。

ここで、この案件を拒否できていれば、これから始まる不幸は防ぐことができたのですが、時すでに遅しでした。

不穏なスタート

不本意な謝罪をさせられたとはいえ、リフォーム内容を決めてもらわないことには工程すら組めないため、打ち合わせを再開することにしました。ところが、工事を急いでいると言っている割に、安住夫妻は何を決めるにも時間がかかりました。夫婦間でも好みが違い、意見を擦り合わせするだけでも苦労しました。打合せを再開してから2〜3週間ほどもかかって、ようやく工事内容が固まり、リフォーム費用と工程が決まりました。

しかし、事ここに及んでも、一番大事なことが終わっていませんでした。安住氏からの支払いです。通常なら、工事の1週間前までに工事金額の半分を着手金として支払ってもらうのが決まりです。しかし、安住氏の場合、クレームの体裁に持ち込まれて分が悪い我々は、着手金を催促することが出来ないまま、工事を始めることになってしまいました。

次回に続きます。

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