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「在りし世の面影」元ネタ

先日出した「在りし世の面影」というアルバムには、いろいろ元ネタがあります。
この記事ではマニアックな聞き手 / 音楽の作り手向けに、「何を考えて作ったか」「何を元ネタにしたか」の解説をします。

僕自身、インタビューなどを通してそういうのを知るのが好きなこと、
民謡とかにいろいろかけ合わせると面白いと実感してもらいたいことが執筆動機です。

※以下の動画で試聴できます。

この記事ではマニアックな聞き手 / 音楽の作り手向けに、「何を考えて作ったか」「何を元ネタにしたか」の解説をします。


※収録曲の歌詞と曲紹介の記事はこちら

1. 串本の子守唄

『日本のワークソング』(1991年、キングレコード)所収の、太田きのえ「串本の子守唄」を下敷きにしました。
このCDを聞いているなかで一番心を掴まれた曲でした。

歌詞の一部は、以下のサイトも参考にしています。
音源も、以下のサイトで聞けます。
http://www.kitohan.sakuraweb.com/uta-ongaku/karekinada-no-komori-uta.htm

アレンジはとくに元ネタなく、「歌におしゃれなコードつけよ、ギターのほうが合うかな……でもギターだけだとさびしいからシンセ付け足そう」という足し算の発想です。


2. もう一度生きてやる

もともとは「都節音階」という和風な音使いを活かしつつ、ファンクとかのかっこいいバンドサウンドにしてみようというところから出発しています。

一応、俗曲「間がいいソング」を念頭に置いて作りはじめました。

ファンク(しかも最低限のバンドサウンドで再現できるシンプルなもの)といえば、Daft Punk「Get Lucky」。

ギターやベースのリズムパターンはまんまですし、ドラムも原曲を叩いているオマー・ハキムのサンプルを購入して使っています。

ただ、曲の全体構成は原曲ではなく以下のカバーを参考にしています。

さいしょはメロディの譜割りも似せていたんですが、流石によくないなと思い、サビはFranz Ferdinand「Take Me Out」をうっすら意識しました。

本当はLouis Cole「Weird Part of the Night」っぽくしたかったんですが、うまく行かず……サビで「フッフッ」言っている女声コーラスだけ拝借しました。


3. ふじの山・今様

原曲はご存知かと思うので、アレンジの経緯や元ネタを紹介します。

なぜこのアレンジにしたかというと、睡眠時間の足りていないなか長々と散歩していたところ「文部省唱歌の富士山って、5拍子になるのでは」という妄想が湧いてきたからです。なりましたね?

5拍子といえば、The Dave Brubeck Quartet「Take Five」。

原曲だとボーカルが入っていないので、ボーカル入りのカバーでかっこよいものがないかと探し、Al Jarreauのカバーに行き着きました。
ドラムパターンはほぼここから拝借しています。途中の転調もパクってます。

※1分くらいしてやっとはじまります。

構成は悩みつつ、シンプルにまとめました。
各楽器のソロ回しは我ながら気に入っています。


4. 写真立て

もともとは「蓮の花」という曲名でした。

友達とバンドをやるためにつくり、そのときはドラムの子にRed Hot Chili Peppers「Scar Tissue」みたく叩いてもらったのですが、どうにも合わず……

それならいっそ、レゲエとかにしてみるかと思い立ちつつ、レゲエの教養がなかったので2-3週間ひたすらSpotifyで探しまくりました。
一番気に入ったのが、この曲です。これを下敷きにいろいろ作りました。

一旦静かになるところからの戻り方は、以下の曲を。

最後のシューゲイザーギターは、初期のTAMTAMを意識しました。確か1回ナマで観たことがあります。最近はこの路線じゃなくて、ちょっと寂しいです。


5. もみじ・今様

この曲と次の曲は、曲数が流石に少ないとあわてて入れたのですが、
けっこうアレンジに紆余曲折がありました。

最初はラテンジャズみたいにしたかったんです、Antonio Loureiroとか。

でも弾けないことに気づき、なんとか何かひねり出そうとギターをじゃかじゃかしていると「これはカントリーになるかも」と感じました。

そこからは写真立てと同様、ひたすらSpotifyで探しまくる日々。
なんとなくドラムパターンだけ浮かんでしまっていたので、イメージに合うものを探すのはかなり大変でした。
結果的に、超大御所の超有名曲をなんとなく下敷きにすることにしました。

ただ、この曲だとピアノとハーモニカが目立つところ、自分で作ると納得できる音色が得られず、結果的にオルガンで代用することにしたので、かなり聞き心地は違うかと思います。


6. 名前呼んでぇな

この曲は、Melanie Faye「It's a moot point」にインスパイアされ、
曲構成、全体に漂うほの暗い諦めのような感情を僕なりに噛み砕いてつくりました。

全体的な音使いは、2曲目の「もう一度生きてやる」と同様、都節音階というものを使っています。
下敷きにしたのは岡林信康「チューリップのアップリケ」です。
関西弁でシリアスなトーン、というのも活かしました。

作ってみると音域がかなり高くなってしまったのですが、まふまふも紅白に出る世の中なので、恥を忍んで思い切って女声で歌ってみました。


7. デカンショ節・今様

かなり有名な民謡で、いろいろな録音がありますが、
今回は『聴いて得する日本の大衆芸(3)~ハイカラ・ソングまるかじり』(2006年、キングレコード)所収の三橋美智也歌唱のものを下敷きにしました。
ちゃんと拍をとると、途中で11/8拍子のように思え、それでも自然なんですよね。
ぜひこの版を聞いてみてほしいです。

これに合うドラムパターンを考えてみると、1・3拍と2・4拍を逆転させたブルースっぽくなりました。
オルガンやベース、ギターは特に元ネタなく、こんな感じが聞きやすいかなと重ねていきました。

ギターソロは、せっかく民謡なので和の要素を取り入れたく、
人間椅子「りんごの泪」を参考にしました。


8. 闇夜の砂漠

この曲は2020年のゴールデンウィーク前に、近所の公園で遊んでいる子どもたちを見かけたとき、「イントロからすさまじい合唱ではじまる、めちゃめちゃテンポの遅い曲を作るしかない」とひらめきました。

当時、仕事がつらかったこと、ご時世がはじまりだしたこともあり、
ゴールデンウィークはこの曲のことだけを考えていました。

歌い出しのメロディは少しだけ追分っぽさというか、長~~~く伸ばそうと意識しました。

全体的な音作り、とくにギターの雰囲気はCigarettes After Sexを参考にしました。

コーラスの雰囲気は、ブルガリアン・ヴォイスをイメージしました。

サビのコード進行は、FFXのサントラの超マイナー曲「これはお前の物語だ」(ティーダがザナルカンドからスピラに行く直前、『シン』に吸い込まれているムービーの曲)から拝借しました。

歌詞は、岡本太郎とか禅とかも踏まえて練っていき、最終的にはスター・ウォーズのアナキンの故郷(タトゥイーン)みたいな、砂漠の星で明日にも死ぬんじゃないかと怯えつつ僅かな希望に祈りを捧げる、そんなイメージで書きました。


9. さくらさくら・今様

さくらさくらは、2曲目・6曲目でも使った都節音階の曲です。
この音使い(スケール)は現代人の耳には物悲しく聞こえますが、
昔の日本人は単純におしゃれな音使いとだけ聞いていたそうです(ソースを失念したので、僕の妄執かもしれませんが……)

とはいえ実際、さくらさくらはもともとただの箏の練習曲、「かえるのうた」ぐらいのポジションのやつです。なので、そんな悲しさとかではないよな、という発想でアレンジしました。

うっすらイメージしたのは、The Buggles「Video Killed The Radio Star」。

音作りとかは、中村佳穂「忘れっぽい天使」をイメージしました。


EX. アルバムタイトルなど

アルバムタイトルは、渡辺京二『逝きし世の面影』をもじりました。
この本を高校のとき読んだことが、この日本音楽への憧憬につながっているので、もうこれを元ネタにするしかない、そしてまだ「逝きし」とは言いたくない、という思いのタイトルです。

ジャケットの写真は、母方の実家の窓から見えた風景です。
きれいですよね。

ジャケットとして仕立てるにあたっては、「ココナラ」で依頼した、TO design様にご助力いただきました。
https://coconala.com/users/1569801

そして、ジャケットでも印象的なヤモリのロゴは、「ランサーズ」で依頼したRingo Works様に作成いただきました。

https://www.lancers.jp/profile/ringo_works

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