月に願う(4)

それから間もなくして、僕には関係ありませ~ん的な文字で、けんちゃんから連絡が来た。
「やあ、元気?」って…。
「いや、けんちゃんの言葉に一突きされて元気じゃありませんけど。」
「あ、ごめん。あまりにも冷静に出た言葉だった…。」
は?
ちょっとちょっと、今、それ送ってくる??
冷静に出た言葉って…余計にダメージくらうんですけど。
「大丈夫だよ。彼から連絡が来るだろうし、大切に思われてるよ、きっと。」
きっと…って…。
また返信する言葉が見つからず、そのままアプリを閉じた。

彼と最後に会ってから、もう、ひと月が経ち、メッセージのやり取り(そう、バレンタインデーの日)から2週間が経った。
2週間、ずっとスマホを睨み、いつ彼から連絡があっても直ぐ見られるようにしていた。なのに、スマホは黙ったまま、一向に連絡は入らない。
睨まれたままのスマホは可哀相よね。
私のせいではありません…けど…。
とでも言いたそうな雰囲気を纏い、すまなそうに私の手の中に身を置いていた。

このままフェイドアウトするつもりかな。
でも、彼と私が始まった時、
「もしも、別れる時がきたら、その時はきちんとするから。何も言わずにいなくなるようなことはしないから。」彼はそう言った。
だから、まだ少しの望みはある。
まだ、望みはあるよね。
自分に言い聞かして深呼吸する。
ちょっと連絡してみようかな…。
そう思って連絡用のアプリを起動してみるけれど、私からの連絡がきっかけで「言いたいことがある」とかメッセージが入る可能性もあるし、結局、怖くて何もできずにアプリを閉じる。

好きで好きで仕方がない。
会いたくて会いたくて仕方がない。
会えないひと月が一年にも二年にも感じる。
抱きしめてくれた彼の温もり、匂い、しゃべり方、忘れたくても忘れられない。忘れられないから、また会いたくなる。
忘れられないんじゃなくて、忘れたくない、…忘れない。

ねぇ、知っていた?
あなたの誕生月と私の誕生月を並べると、あなたの誕生月日になるの。
それでね、あなたの誕生日と私の誕生日を並べると、私の誕生月日になるの。偶然過ぎない?
こんなことで私は嬉しいの。
あなたと繋がっている気がして。
バカみたいだけど、そんなことが心の支えだったりする。
ねぇ、知ってる?
連絡がこない日は早く眠るの。
もしかして、明日は連絡がくるかもしれない。それなら早く明日になればいい。
ああ、今夜も、また早く眠ろう。
明日の朝早く起きて、空に残る月にお願いをしよう。
そういえば、いつからだろう、月が私の願いを叶えてくれると思うようになったのは。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?