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ものの手触りと記憶

子供の頃、電車の中で知らない女性の下げていた紙袋の柄を、自分でも気がつかないうちに指でなぞっていたことがありました。

女性にとっては小さな子供に自分の持ち物を指でなぞられるという、奇妙な体験だったでしょうが、
僕はどうしてもその紙袋の質感を確かめてみたかったのです。(ごめんなさい。。)


ザラザラしていたり、ツルツルしていたり。ぼこぼこしていたりしていなかったり。
見た目だけでは分からない質感を楽しむというのは、大人になった今でも変わりません。

さすがに大人になってからは他人の持ち物を触ったりはしませんが、しっとりとした革のカバン。ざらっとした綿のオックスフォードシャツ。ずっしり大きく冷たい鉄のフライパン。

買い物に言ってもただ見るだけではなくてどちらかと「触る」ことに一生懸命になってしまいます。
店員さんに変な目で見られないよう、商品を汚してしまわないようあくまでさりげなく、さりげなく…


サニーサイドスタジオの看板の特徴は手触りや素材感です。
鉄や木の見た目は印刷でも再現できますが、触るとテクスチャー(質感)や凸凹がありません。

看板製作においてあまり重要視されない手触りですが、僕はこのテクスチャにこだわったモノづくりをしたいと思っています。

見た目だけでなく、質感や手触り、金属が触れ合うガチャガチャという音。
そういった素材の持つ質感を大事にしています。


女性が下げていた紙袋がどんな柄だったかは覚えていません。
でただ指先に伝わる上質な紙の触感や、電車内が西日で眩しかった事、効きすぎた暖房でムッとした車内の匂いはよく覚えています。

人の記憶のような感覚を刺激するのは、視覚からの情報だけではありません。
今でも百貨店の上質な紙袋に触れると、幼い頃の記憶を思い出すこともあります。

そんな五感を刺激する製品を作りたいと思っています。


いつもお読み頂きありがとうございます!