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「小林」と寝落ち

中国に留学する人間はたいてい個性が強い。というか少し変わっている人が多い。私の留学していた大学では、ルームメイトが期(約半年)ごとに替わる。私は4人の違う同屋(トンウー:中国でルームメイトのこと)と一緒に過ごした。4人とも強烈な人たちだった。その一人、小林について書いてみる。彼は当時、東京の某私立大学の4年生で大学の交換留学制度を利用して中国に来ていた。6カ月間短期留学すると単位がもらえるという制度で、彼の専門は漢文で教師志望の男だった。初めて彼と話したときは好印象だった。自分より年上で知識もそれなりにあった。しかし、彼には難点があった。「話がとても長い」ということ。小林は自分の興味のあることは永遠と話し続けるのだ。「日東駒専、四大学野球の歴史」について朝の5時まで話されたときはかなりキツかった。またある時は「大学院を出たらどれだけ教師としての職に有利か」という話を朝の4時まで聞かされた。その時は寝落ちしたふりをした。さすがに毎日そんな話は聞いていられないので、私はよく彼がシャワーに行っているときを狙って、早めに布団に入り、寝るようにした。次第に会話も少なくなり、最終的には一言も話しをしない関係になった。そんな小林の長話は寮の中では有名で、私が寝た後、そのストレスを発散するべく、様々な部屋に出没しては一方的に長話をしていたという。そうとう周りからは迷惑がられていたそうだ。彼は今、何をやっているのだろう。もし教師になっていたら意外といい先生になっているかもしれない。


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