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黒い傘とコロッケうどん


大学生になってから気分が落ち込むことが多くなってきたけれど、4年生になってからは簡単に戻るのが難しいくらい落ち込んでしまうようになってしまった。

原因なんて卒業制作に決まってる。
これは全く人に言ってないが、制作をしてて楽しいと思えた瞬間が今までで1番少なかった。1番の締めくくりだというのに、自分の思う表現や人と関わるのが上手くいかなかったように感じている。大好きな事が楽しく出来ない、ということ程苦しいことは無い。

1月の企画書作成から躓き大きく落ち込み、担当の先生からコテンパンにダメ出しされる日々に6月いっぱいずっと逃避行して、9月~10月辺りから物語を見るとしんどくなっちゃうようになって受け付けられなくなって、12月~1月辺りで人間関係がダメダメになり……。
振り返ると殺界か?ってくらいで、我ながらよくサボったりしなかったなぁ〜と、ハードルを低くして褒めたりしている。よくやった!!

そんなこんなで卒業制作が終わったはずなのに、2月も相変わらず落ち込んでいる。疲れるような事はもうほとんどないはずなのに、家に帰った途端コートも脱がずカバンも置かずに床に突っ伏して1時間以上気を失うように寝てたりしていた。多分1年間揺さぶり続けていた心の余震が続いてるのかもしれない。相変わらず物語はあんまり見れないし、大好きだった観劇もほぼ全く行けていない。人間関係も大して修復していない。

事は終わったのに、あたしの心の中では終われていないらしい。1番の締めくくりがこんな感じなので悔しさが沢山募っている。もちろん出来たところもあるし、たくさんの人に褒めて貰えたし、卒業制作の企画に対して後悔は無いけど、もっとやれたな〜と思うし、あたしがもっとちゃんとしてたら良かったのになぁと思う事に飲み込まれてしまい、こうして未だに希死念慮に苦しんでいる。

そういえば今日はたくさん雪が降った。今年の冬は沢山雪が降っているので、傘を差す機会が多い。あたしの傘は大きくて骨の多い、黒い傘だ。
濡れるのが大嫌いなあたしを包んでくれる傘だ。
今日も冷たい雪から傘に守られていた。まっくろくろすけな服装に真っ黒な傘を差すあたしは、雪で真っ白なあたしの心にぽっかり空いた穴だった。冷たくて寒くて白くて、あたしだけ黒くて、しかも寝坊したからすっぴんで、健康診断があるから朝昼抜かないといけなくてお腹がペコペコで、移動がめちゃくちゃ多いスケジュールで、もう濡れたコンクリになりたいとジメジメ念じていた。

健康診断が終わって、
「とりあえず胃に何かを入れたい!!とりあえず胃がびっくりしない優しめなものがいい!!うどん…うどんだ!!うどん食べよう!!ウヒョ〜〜!!」
と思い、駅ナカのうどん屋さんに入った。
食券機を見て選ぼうとした時に、「コロッケうどん」なるものがあった。
コロッケうどん!?!?かなりカルチャーショックだった。偶然の産物からでしか産まれなさそうなトリッキーなメニューに、なぜか惹かれてしまい勢いで頼んでみた。

普通のかけうどんにどっかり「一応おれも油揚げではありますよ?」みたいな顔をした、ふやふやのコロッケが乗っていた。
やわやわの安価なうどんをつまんで、お出汁の匂いの湯気と、それに否応でも混ざってくるコロッケの匂いを嗅ぎながら、はふはふすすった。頃合いを見てコロッケを食べた。

めちゃくちゃ美味しい!!?

おいもの優しさとお出汁がよく合っていて、衣の油が味をまろやかにしていてすごく美味しかった。食べ終わり、コロッケがバラバラになって散らばったお出汁をがぶがぶ飲んでしまった。

ふぅと息をついて、空になった器と、知らない間にポカポカになっていた心に、不思議な気持ちになった。なんというか………コロッケうどんは偉大だなぁ………。そんな事しか思えなかった。

なんか、何も大丈夫になってないし、解決もしてないけど、なんか今日はいっか〜と思って帰宅した。いつか勝ちゃいいんだ。とりあえず今日は6:4でギリギリ負けちゃったと思おう。昨日と一昨日は大負けしてるけど今日は善戦だったんじゃなかろうか。多分明日も負けるけど、今日善戦したあたしが戦うんだからもうちょっといい結果を残せそうな気がする。

何をどうやったって悔しい気待ちは変わらないし、それをどうこうするつもりもないけど、とりあえずこの悔しい気待ちを「あん時は悔しかったんだよな〜〜!」と気軽に人に話せるようにまではなりたいな。引きずるよりも抱えて、抱きしめてやれるようになりたいな。

これからもそんな事ばっかりだし、ナムさんの曲の「No.2」のように後ろを振り返らない強さはまだまだ持ち合わせてないけど、とりあえず今は、あたしの黒い傘に、しんどかった思い、悔しかった思い、ついでにコロッケうどんも入れられるようにしたいな。


沢山のことから、沢山のあたしを守ってくれる傘は、今日も雪景色によく映えていた。


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