見出し画像

風邪について(どんな薬を飲めば良いの?他)

Take Home Message

◻︎風邪とは咳、鼻水、喉の痛みなどの部分的な症状に、熱、倦怠感などの全身の症状を伴った状態
◻︎80−90%以上がウイルス感染なので、抗生物質は効かない
◻︎本人の免疫力に任せて症状を和らげながら、経過を見る
◻︎2次的に中耳炎や肺炎になる時には抗生物質を使用する

1 風邪ってなに?

 病院を受診すると医者から「風邪です。薬を出しておくのでゆっくり休んでください」と言われることが多いと思います。でも風邪って、モヤッとした言葉で、わかりにくいですよね。


 風邪とは咳、鼻水、咽頭痛などの部分的な症状に、熱、全身倦怠感、頭痛、関節痛、筋肉痛、食欲不振などの全身の症状を伴った状態です。
原因の80-90%がウイルス感染症で、そのほかの10-20%が細菌感染症によるものです。全部で約400種類以上のウイルスが風邪の原因となり、同じウイルスの中でも何種類もそれぞれ違った型を持っているので、何度も同じような風邪にかかってしまいます。集団生活を始めたばかりの乳幼児は、今まで風邪にかかった事がないため、しっかりとした免疫機構がありません。またお互いに様々なウイルスを持ち寄り、うつし合う事で、常に風邪を繰り返しています。しかし、風邪をひくことで自身の免疫機構を構築していき、徐々に丈夫な体になっていくのです。

画像1

(1)ウイルス感染症の対処療法とは
 基本的には対処療法という、体のサポートが治療になります。ウイルス感染症の場合には、ほとんどが自身の免疫力で病気が治るからです。その為風邪の治療は、自分の免疫で病気がいち早く治るようにサポートしてあげる事が治療の基本になります。無駄な外出を控え、自宅で水分や食事をこまめにとり、ゆっくり休む事で体力の回復を助け、同時に症状を抑える薬(痰を出しやすくする薬、咳止め、解熱剤など)を使用し、体をサポートしてくのです。

画像2

(2)風邪に伴う抗生物質の使用について
 「風邪の時に抗生物質は飲まなくていいのですか?」と質問を受けることがありますが、ウイルス感染症の場合、基本的に抗生物質は効きません。風邪をこじらせるのを予防する目的で、以前は初期から抗生物質を使用するような考え方がありましたが、数々の研究から予防効果がない事が証明されています。むしろ不必要な抗生物質を飲むことで、抗生剤が効きにくい細菌(耐性菌)が体にすみつく事があります。その細菌が体に悪さをすると、抗生剤が効かない状況を作り出し、自分を苦しめる結果となってしまうのです。お子さんを守るためにも、適切な抗生物質の使用を考えていきましょう。「風邪=抗生剤で治す」という考え方を一緒に少しずつ見直し、正しい薬の使い方が浸透していけばと、クリニック一同考えております。


風邪をこじらせることで、抗生物質が必要になることもあります。その件に関しては後で記載いたします。
インフルエンザ、ヘルペスウイルスなど、対症療法以外にも抗ウイルス薬が効く感染症もあります

2 どんな薬を飲めばいいのか

 咳、鼻水、熱などの症状を薬でサポートしながら、体の中で免疫ができるのを待つのが治療になります。つまり原因が解決するわけではないので、薬を飲んでも、咳、鼻水はすぐにはよくなりません。ゆっくり休みながら徐々に良くなるのを待つ必要があります。医師から出された薬に関しても、絶対に飲まなければならない薬ではありません。症状の強さ、治り具合などを見て、判断していただいて大丈夫です。もしわからなければ、クリニックに相談してください。
風邪に処方するサポートのお薬としては以下の様なものがあります。

●コカール・カロナール・アンヒバ坐剤(熱冷まし)
●アスベリン(咳を和らげる 止める働きはあまり強くない)
●ムコダイン(痰きり)
●ムコソルバン(痰きり)
●トランサミン(喉の炎症を抑える) 
など…

 サポートするための薬なので、これらを飲んでいても風邪をこじらせることがあります。その場合、気管支炎・肺炎や中耳炎になることがあり、抗生物質が必要になることもあります。なかなか症状が良くならない、3−5日以上熱が続くなどの場合は、細菌感染症がないか、重症な感染症がないか、さらなる治療が必要かどうかなどを判断するために、医療機関の受診を積極的に検討してください。当クリニックでは問診、診察、検査などを行い、追加治療が必要かどうかを判断していきます。

画像3

3  抗生剤を使用するタイミング

 明らかに細菌感染症がある場合は、抗生剤を使用する必要があります。風邪に付随する状態としては、経過をこじらせて二次的に気管支炎・肺炎や、中耳炎を起こした時です。また例えば、扁桃炎、咽頭炎といった、溶連菌などにより喉に膿がついた状態の時も使用する必要があります。さらに、最初は風邪でも、痰をうまく排泄できずに肺や、気管支にとどまり、そこで細菌感染が起こることがあります。また鼻づまりが原因で、耳から鼻へ繋がる部分である「中耳」に細菌が溜まり感染を起こし炎症を起こすこともあります。  
  細菌感染症の特徴としては、ぐったりしている、機嫌が悪い、活気がない、顔色が悪いなどの全身の症状が強く出ます。当クリニックではそのような場合、しっかり検査を行い、抗生物質が必要か判断をさせていただきます。抗生物質が処方された場合には、用法、用量、日数をしっかり守ってください。中途半端な内服は耐性菌を作り出してしまいます。

画像5

4 お家でできること

 「ウイルス感染に伴う風邪を治す薬がない」ということはご理解いただけたでしょうか?
風邪がどういったもので、どの様な薬やケアが必要かということを、まずはご家族の方々に知っていただけたらと思っております。そうすることで、お子様への接し方、ケアの仕方も変わるかと思います。お薬だけではなく、水分をしっかり取ってもらったり、消化しやすい食事を考えたり、なるべくお子様が休める様に寄り添ってサポートをしたりすることが大切なのです。そんな中で疑問や、不安などがあれば、迷わずクリニックを受診していただければと思います。



 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?