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This is a pen. を馬鹿にする前に知っておきたいこと。 真の問題はソコジャナイ!

中学校英語を批判するときに、

「This is a pen. なんてまだ言ってる奴がいて」
「まだ教科書で This is a pen. とか言ってるようじゃダメだ」

等々の言い方で、中学校の教科書でよく使われていた "This is a pen." という例文を馬鹿にする声は多い。

中学校で初めて英語を習うとき、日本の教科書では「お決まり」なのが、

This is a pen.
This is a table.

などの例文であり、批判の内容としては、「こんなことを日常で言うわけがない」と言う趣旨が多い。


こちらの記事でも、「This is a pen. 問題」を橋本徹氏が口にしていた。


その部分を抜粋したのがこちら。

橋下氏は乙武氏の提案を受け「大いにありだ。今の教員免許が必要な技量を測っているものなのかを問い直すことが必要だ。加えて、そのための教育や試験の中身はどうなんだということを見なければいけない。たとえば英語の先生の免許だっておかしいと思う。"This is a pan"なんて、日常生活で絶対使わない。

*ちなみにこの記事、「教員免許を取得するまでの過程や、現在の教育がおかしい」という趣旨の話で、その点については私もそう思っているので、全体的な主張には賛成であることは明記しておく。良い記事なので読んでほしい。


驚き! This is a pen. が掲載された歴史

恩師の若林俊輔先生の授業で、This is a pen. がそもそも何故、中学校の教科書に掲載されたのかを教えていただいた際は本当に驚いた。大きく言えば、これで英語教育を見る目が変わったので、ここで紹介する。

This is a pen. という例文が掲載された当時、まだ「ペン」というものは大変な高級品だったそうで、庶民はなかなか手に入れることが出来なかったそうだ。

かつ、西洋の文化から取り入れられたものとして、異文化を持つ国で作られた技術を目にするという意味でも、「ペン」の実物を見るのはとても日本人学習者にとって刺激的なことだった。

教師が本物の「ペン」をクラスで見せると、生徒たちは目を輝かせて、
「あれは何だ?!」
と、集中したそうだ。

そこで一言。

"This is a pen."

おおー!!と、歓声が上がったという。

なるほど、これが「ペン」か!!!This is a pen!! なるほど!!

こんな、素晴らしい教育が行われていたそうだ。

同じような話で、マッチも同様だったと若林先生は仰っていた。授業でお話しされていたことを、記憶だけを頼りに書いて見れば、こんな感じで教えてくださった。

「"This is a match." なんて、誰が見ても分かるだろう!」なんて、歴史を知らない奴は言う。だがね、昔はマッチが貴重だったんですよ。マッチを取り出すと、生徒はみんな注目する。そこで、パッと目の前で火をつけて見せる。わーっとクラスみんなが驚く。そこで教師が一言、"This is a match."  だ。カッコいいだろう!
(若林俊輔先生談。羽織の記憶で書いております)

学生の頃の私は、何て素晴らしい教育をしていたのだと感動して震えた。

当時の見慣れない海外の技術で出来た「ペン」や「マッチ」を見せて、生徒を驚かせる。
何だろう?と言う好奇心を書き立ててから、英語の基本文型を用いて教え、そこから練習に入る。何と言う教育戦略、、、ッ!!

まず、こんな歴史があったのかと知ることで、一見おかしな英文だとしても、安易に馬鹿にする前に、「もしかしたら、そこに教育的な意図があったのかも知れない」と、思うようになってもらえたら嬉しい。英語教育の歴史を学ぶと、心から尊敬出来る偉人がたくさんいる。


だが、ここまで読んだだけでは、「でもやっぱり、現代で This is a pen. はおかしくね?」と言いたくなるだろう。分かる分かる。

でも、This is a pen. を馬鹿にする前に知っておくべき重要ポイントはもう一つある。


 This is a pen. を活かすも殺すも、指導者の腕次第!

実は、This is a pen. は、初期の学習者に教える際にとても良い例文でもある。

英語の文を話せるようになる過程で非常に大切なポイントが、「いかに英語の文を自分で生成できるか」と言うことがある。簡単に言えば、「英単語を自分で組み立てて、文にする力」だ。

この、文を組み立てる力を養うためには、2つのトレーニングが有効だ。

1、基本的な構造の文の意味を理解して覚えること
2、その文型を壊さずに、単語を入れ替えること

このトレーニングには、This is a pen. はとても向いている。

ペンを見せて、"This is a pen. " と言えば、「ペンですよって言ってるんだな」ということは分かる。つまり、目で見た情報だけで、おおよその英語の意味を推測することができる。トレーニングの1の、「意味を理解して」というところが比較的容易にクリア出来る。さらに、短い文なので、「覚える」のも楽だ。

トレーニングの2「その文型を壊さずに、単語を入れ替えること」というのは、

This is a table. 
This is a chair.
This is a book.
This is a ruler.
This is a bag.

など、例えば最後の名詞部分を入れ替えていく練習にあたる。

これを繰り返すことによって、英語の基本文型を感覚で理解して、他の状況でも、「自分の体の近くにあるものを指して、それが何であるかを述べる」ときには、この文型で最後の名詞を変えて使えるようになる。

この文型をマスターしていれば、例えば

This is your ticket. (これがあなたのチケットね)

とか、

This is a present for you. (あなたへのプレゼントです)

とか、完全に実践的な英語で使えるようになる。

さらに、この This is 〜. の形が人の紹介にも使えるということを教えれば、下記のような基本的な紹介も出来るようになる。

Hi, Ken. (ケン!)
This is my mother.(こちらが私の母です)
Mom, this is Ken.(ママ、こちらがケンです)

つまり、This is a pen. は、指導者がその文型を理解し、かつてペンやマッチで生徒を驚かせていたような創意工夫溢れる英語レッスンという形で生徒に提示し、効率の良いトレーニングを積ませることが出来るのであれば、素晴らしい例文の一つとなり得るのである。

ちなみに、私の主催するSUNNY BUNNYバイリンガル育成スクールの子ども英語基礎クラスのカリキュラムには This is a pen. がある。英語だけで子ども同士が笑いながらおしゃべりする英語教育を支える、大切な基本文の一つである。

"This is a pen." の例文は、活かすも殺すも教える教師の腕次第

と言える。

最後に、私が考える真の「This is a pen.問題」について解説する。今後、This is a pen. を批判するときは、こちらの批判にアップデートしていただきたい。


真の 「This is a pen. 問題」

つまり、真の「This is a pen. 問題」は、「This is a pen. なんて誰も言わない」ことではないのだ。

そこはむしろ、問題ではない。

真の問題は、指導者の知識不足、指導力不足にある。

つまり、子ども英語教育の指導法のアップデートこそが必要なのだ。This is a pen. が問題なのではなくて、This is a pen. の文に込められた意図を正しく理解し、また指導出来る教員を増やさなければならない。

ということで、繰り返しになるが、上述した橋下氏と乙武氏の対談について、教員免許の内容のアップデートが必要だという点は大いに賛成。教員に求められる資質の見直し、教員免許の資格試験の内容の見直しが求められる。

現行の子ども英語教育は、「子ども達が英語を話せるようになる」という結果を伴っていない。子ども達が英語を話せるようにはならず、依然として、大人たちが「小学生からやれば良い」とか「高校は英語だけでやれば良い」とかの思いつきで、教育の現場を荒らすだけ荒らしている。日本の宝である子どもたちの教育時間を無駄にすることは、一刻も早くやめなければならない。

筆者がもどかしく思うのは、この問題については既に恩師の故・若林俊輔先生が10年以上も前に仰っており、また改革のために人生を賭けて闘われていたのに、何も変わらないどころか、益々悪くなっていることだ。

さらに悔しいことに、先生の教えに従って、忠実に信頼出来る英語教授法を実践しているSUNNY BUNNYでは、実際にバイリンガルの子どもたちが育っており、子ども達の笑顔が溢れるレッスンが出来ている。もっともっと改善したいと思っているが、週に2回の通学だけでネイティブと間違えられるバイリンガルに育つ生徒達を見ていると、「こんな英語教育を自分も受けたかった」と思えることは確かだ。実績が出る方法があって広めたくても、嘘ばかりの広告をする英語教育学校が多すぎて埋もれてしまう。発信力とSNS拡散力を付けていくというのは今年の大きな課題の一つだ。これを読んだ「バズなら任せろ」「拡散なら任せろ」的な神がなんかの拍子に助けてくれたら良いのにと切に願っている。というかどうかお願いします。

ちなみに良い文献が知りたい方は、とにかくこちらの「これからの英語教師」を読んでいただきたい。中古で値段が釣り上げられてしまうので、どうか、大修館様、最近若林先生の著書を復刻させてくださった研究社様でも良い、復刻させてほしい。あと中古本の業者は私が買いまくるからといって値を釣り上げるのはマジでやめろ。

復刻を待ちながら、私も有効な英語教育の方法は今年はひたすら公開しまくる方針でいるので、どうかフォローして応援してほしい。というか本当に心からお願いします。誰も復刻してくれない、誰も日本を変えてくれないのなら、自分たちでするしかないのだから。やれることはやっていく。


本の出版を目指しています!

正しい子ども英語教育方法にアップデートするための情報を投稿し、記事をまとめて本にしたいと思っております!

専門家の皆様のご指摘や、初心者の学習者の皆様からの質問、英語の先生からのリクエストも大歓迎します。感想などもいただけると、頑張るぞ!!という気持ちがUPするのでとっても嬉しいです。

この本を出版したい編集者の方、いつでもどこでも、お話だけでも聞いていただけるようでしたら伺いますので、是非とも office@sunnybunnyle.com (羽織宛)にご一報ください!

「スキ」や「シェア」、「pick」や「ツイート」していただけると、喜んで他の発音に関してもアップデート方法を全公開して参ります!応援のほど、よろしくお願いします!


日本の英語教育をアップデートする!!

子どもたちにとって最高の英語教育を研究し、広めて、日本の英語教育をアップデートしたい! 早期英語教育研究会をNPO法人化するため、クラウドファンディングをしています!

100万円を目標にスタートし、既に70万円のご支援をいただいています。この支援金を活用して、日本の子ども英語教育を全面的にアップデートします!
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