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18-19 PL 第13節 Bournemouth × Arsenal

インターナショナルマッチウィーク明けとなるプレミアリーグの第13節は、アウェイのボーンマス戦。

アーセナルは前節も引き分けており、ここまで公式戦4戦連続で引き分けと不敗は継続しているものの波に乗り切れていない。対するボーンマスは12節終了時点で6位ながらも連敗中と、こちらもここ数試合で調子を崩し気味。どちらがこの試合を制して復調するのかに注目が集まる。

アーセナルは怪我人が増えてきており、モンレアル、ウェルベック、コシエルニーに加えラカゼットも怪我の再発らしく、この試合を欠場している。

そんな中、エメリはまさかのエジルをサブに置いた3バックシステムを採用するが果たして。


試合結果:Bournemouth 1 × 2 Arsenal

得点
30分:オウンゴール(レルマ)
45分+1:キング(アシスト:ブルックス)
67分:オーバメヤン(アシスト:コラシナツ )
交代
73分:ブルックス → スタニスラス
73分:ゴズリング → L.クック
79分:トレイラ → ゲンドゥージ
82分:イウォビ → ラムジー
82分:キング → ムセ
90分+3:オーバメヤン → エンケティア
■チーム概要
・ボーンマス(監督:エディ・ハウ)
フォーメーション
基本:4-4-2
保持:3-4-3
非保持:4-4-2(前プレ時:4-3-3)

・アーセナル(監督:ウナイ・エメリ)
フォーメーション
基本:3-4-2-1
保持:3-4-2-1
非保持:4-4-2


■ボーンマスの基本ゲームプラン

【オフェンス】
ビルドアップではショートパスで時間を使いつつ隙を見て2トップをアーセナルの3バック横のスペースへ走らせ、そこへロングボールを蹴る。
FWがボールを保持出来た時は、SBがオーバーラップを仕掛け、FW+SH+SBでサイドを中心に押し込む。
ファイナルサードまで押し込み前線で起点が出来た時には、両SHのブルックスとフレイザーがハーフスペースからペナルティエリアへ侵入を試みてフィニッシュへ繋げる形が多かった。

【ディフェンス】
前プレ時は4-3-3へ可変。
アーセナルの3バックに対して左SHのフレイザーを上げて数的同数でショートパスでのビルドアップを阻止する狙い。
ビルドアップの出口となるWBにはSBを、2シャドーにはCHとCBで圧力をかけ、ボールが出てきた際には強くあたりビルドアップを阻止していた。
ビルドアップを許し自陣までボールを運ばれた時には、4-4-2で撤退守備へ切り替え。ボール奪取からのカウンターを狙う。

■アーセナルの基本ゲームプラン

【オフェンス】
基本は3CB+2CHでビルドアップ。出口は2シャドーまたはWB。ただ、CHからシャドーまでの距離が遠く、なかなかシャドーの2枚を前向きにする事が出来なかった。
ビルドアップでCHが前を向ければシャドーにあててWBへ。WBから全体的に押し上げる形を狙う。
押し込めた時には、サイドチェンジを行いつつ隙きを見てハーフスペースを活用したシャドーとWBの連携でサイドを攻略。サイド深い位置からのクロスを中心にフィニッシュへ繋げる。

【ディフェンス】
前プレ時はムヒタリアンを前めに、イウォビは下がりめの3-4-1-2に近い形でプレッシング。サイドへの誘導と共にロングボールを蹴らせる。
ミドルサードでは、ボーンマスの楔のパスに対してトレイラのインターセプトやCBの積極的なプレッシングで中心に中央を守る。
ただ、押し込まれた時には5バックとなるが、ムヒタリアン、イウォビのポジションが高いため5-2-3のような形になり、サイドで数的不利になる頻度が多かった。


■試合の流れ

ホームのボーンマスは積極的な前線のプレッシングでアーセナルのビルドアップを阻止。アーセナルは狙い通りのビルドアップを行えず苦し紛れにロングボールを蹴らされるシーンが目立っていた。

ボーンマスはオフェンス面でも非常に動きがよく、SHのブルックス、フレイザー、2トップのキング、ウィルソンを中心にアーセナルの3バック脇を突き、前半20分近くまでボーンマスがアーセナルを押し込むシーンが続いていた。

対するアーセナルも徐々にプレスをいなしはじめ、20分からは押し込み返し始める。そんな中、左サイドからチャンスが生まれる。左WBのコラシナツが蹴った球筋の早いクロスをボーンマスのレルマがクリアしにいくもボールはゴールへ飛びオウンゴール。

全体的にボーンマス寄りにゲームが進んでいた中で、アーセナルは少しラッキーな形で先制点を奪う。(ラッキーとはいえクロスまでの形はエメリの狙い通りだと思う)

ボーンマスは不運な失点だったものの、内容は良かったのでゲームプランは変えず、引き続き2トップと両SH、SBからサイドを中心に攻める姿勢を見せる。

このまま前半が終了するかと思ったアディショナルタイム。追加点の好機だとトレイラも上がりゴールを決めにかかったアーセナルだったが、ゴール前でボールロスト。そこからボーンマスの電光石火のカウンターが炸裂し、前半終了間際に同点ゴールを許した。

後半からは、ボーンマスがフォーメーションを変更。
これがアーセナルとしては逆に良かった。

押し込む時間帯が増え、67分には一瞬の隙きを突き、素早いリスタートからきれいな崩しで勝ち越し点をもぎ取る。

その後、お互いにカウンターを中心に何度かゴールへ迫るが得点は動かず。試合はそのまま1-2でアーセナルが勝利した。


■アーセナルが3-4-2-1を採用した意図

ここまで公式戦で4戦連続で引き分けており、勝ちきれない試合が続いているアーセナル。個人的にその理由はアーセナル対策が浸透してきた事が一つの要因ではないかと考えている。

そのアーセナル対策は、ハーフスペースの封鎖

実際、前節のウルヴス戦では、見事にハーフスペースを封鎖されアーセナルは攻撃の手段を失い、やむを得ず手前をスペースから半ば強引なオフェンスでなんとか引き分けを勝ち取っている。

特にアーセナルの肝となっているのが右サイド。
右SHがハーフスペースを使い、大外レーンを右SBのベジェリンが使う。
右サイドから押し込み、フィニッシュは左から上ってきたオーバメヤン。
そういう形での崩しを意図しているように見える。

だが、そのアーセナルの肝と言える右サイドの攻撃を封じられてきているのが最近の数試合。であれば、左サイドを。となるのが常だが、肝心のモンレアルが怪我で欠場続きとなっている。

そのモンレアルに変わってここ数試合、スタメンで出場しているのがコラシナツ。ただ、コラシナツはそこまでビルドアップが上手いわけではなく、どちらかというとファイナルサードでの仕事を得意とする選手だと認識している。深くえぐってのクロスだったり、こぼれ球をバイタルで拾ってのシュートだったり。

守備面でも相手が後ろを向いたときなどはフィジカルの強さを活かしてボール奪取出来るが、反面、モンレアルほど危険なスペースの認知や気の利いたフォローなどが苦手な印象がある。前節のウルヴス戦でもコラシナツの裏は狙われていた。

つまりコラシナツはオフェンスが得意だが、ディフェンスは苦手だ。
守備をベースにしたSBよりも攻撃をベースにしたWBの方が向いている。

と、言うわけで、前置きが長くなってしまったが、エメリがこの試合で3バックを採用した理由は下記の2つの点だと自分は考える。

1.ディフェンス面の強化(SB裏スペースのケア)
2.オフェンス面の強化(幅と高さの確保)

1.ディフェンス面に関しては、コラシナツの裏は左CBのホールディングにカバーしてもらい、押し込まれた際は、しっかりコラシナツも帰陣し5バック化することでスペースを埋める。
通常、SBだとオーバーラップの際に大きく空いてしまうスペースをCBがカバーすることでリスクを軽減する。

2.オフェンス面の強化に関しては、WBにいることでスタート位置が高く、幅と高さを取りやすい。SBから上がることで上がり下がりの距離が長くなるが、WBであることで距離も短くなり、スタミナの面でもオフェンスに注力しやすくなる。

この2点を考えた結果、エメリは3バック。つまりWBを採用する戦術を選んだのではないかと考える。

実際、先制点も追加点もハーフスペースのイウォビ、大外レーンのコラシナツのコンビネーションからサイドを突破し、クロスからの得点となっている。

結果として、コラシナツを最適なポジションで使えたということと、勝利できたという点では良かったが、そんなに上手くいったとも言えない内容だった。

オフェンス面では、ビルドアップ時に2シャドーの位置が高すぎて上手くつながらない場面が多かったし、ディフェンス面でも3バック脇のスペースを何度も突かれ、5バック化したときには前線の帰陣が遅れてスペースを与えている場面も見受けられた。

”アーセナル対策”の対策としては、まだまだ完成度は低いと感じる。

今後も3バックを継続し、精度を高めていくのか。
それともこの3バックをオプションとして他の戦術も試していくのか。

今後のエメリ采配に注目したい。


■ボーンマスのフォーメーション変更の意図

ボーンマスは後半開始からフォーメーションを変更してきた。
4-4-2から3-4-2-1へ。アーセナルと同様のフォーメーションにする。いわゆるミラーゲームを挑んできたということになる。

狙いはおそらく上に書いたハーフスペース封鎖の”アーセナル対策”
前節のウルヴス戦と同様、前線からの守備時は5-2-3でサイドへ誘導し、そこから中央へ誘導してボール奪取。という形を狙っているように見えた。

ただ、ウルヴスとは違い、ボーンマスではこの采配はうまく機能しているようには見えなかった。

その要因は、DFラインの高さにあると感じた。

前節のウルヴスは、5バックでありながらDFラインを高く設定し、2ライン間を圧縮してスペースを消すことでボール奪取に成功していた。
一方ボーンマスはDFラインと前線の3枚が遠く、2ライン間のスペースも広く空いており、チームとしてボール奪取するポイントが曖昧になっていたように感じた。

結果、前線からのプレッシングは機能せず、アーセナルの両サイドのCB、ホールディング、ムスタフィに持ち上がりを許す展開が増え、5バックが押し込まれる形となり、前半よりも守備に回る時間帯が増えた。

エディ・ハウが採用したこのミラーゲームへの変更は、結果的に悪手となったのではないかと思う。


■あとがき

4戦連続の引き分け後、ようやく勝ちをもぎ取ったアーセナル。
とはいえ、この試合もうまくいったとは言えない内容だったと感じる。
課題はまだまだある。

この3バックのフォーメーションを継続するなら、エジルにはポジションがないことになるし、CBもコシエルニーがもうすぐ戻るとはいえ枚数が足りない。継続するのは難しい。だから個人的にはモンレアル不在によるコラシナツ起用がベースにある3バックの採用ではないかと思っている。

”アーセナル対策”の対策は、エジルを起用しつつ、また別の戦術を準備しておいて、次節のノースロンドンダービーあたりでお披露目。なんてことにならないかと密かに期待している。

次はELのグループリーグでアウェイ遠征を挟んで、ホームでのノースロンドンダービー。

ここで勝てば勝ち点で並び、得失点差でスパーズを抜くことになる。
絶対に勝たなくてはいけない試合だ。