IPO後初の決算発表が重要な理由、そしてその評価・判定には注意を要する理由を説明しますね。
IPOは「By prospectus only」という大原則があります。
これは「販売や勧誘はIPO売出目論見書で行いなさい」という意味です。
だからIPOに関与した引受証券会社は事前にリサーチレポートを出す事はできません。
よくIPO前、あるいはIPOしたての会社について証券会社が「リサーチ開始しました!」というケースがありますが、あれは引受シンジケート団に名前を連ねてない、「外野」のレポートです。
読むに値しません!
引受けに関わった証券会社は、IPOから40日間は沈黙を守らないといけないルールがあります。
IPOした日が四半期末〆のタイミングに近い? ということが「いつリサーチ開始する?」という判断に大きく影響していきます。
コンセンサス予想というものが、アナリスト達が発表したリサーチレポートに記載された予想数字の集大成である以上、サンプル数が少なければ(例:2社程度)コンセンサスはアテにならないし、ましてや「外野」のレポートなど参考になりません。コンセンサスが眉唾である一つの理由はこれ。
IPOマーケティング開始直前やマーケティング中に四半期の〆跨いだ場合、「ところで決算の方はオッケですよね?」という主幹事の会社側への確認は、当然行います。
経営陣の喋り方で(大体数字はできているな?)ということはわかるけど、冒頭に言った「By prospectus only」の大原則があるので、細かい部分に関しては投資家とコミュニケーションすることは許されません。
IPOは①成功するかどうかわからないし②幾らの値段になるかわからないので、ストックオプションの行使にまつわる一時費用も、計算のしようがありません。だから外野のアナリストが見切り発車でリサーチレポートを出す場合、それを含んでないEPS予想を出す場合が殆どです。
コンセンサス予想を引用する場合(それに何が含まれている?)ということを吟味しないと、とんでもないおざなりな予想を金科玉条の如く有難る、誤った決算評価に繋がりかねない。
決算発表の日、僕がモタモタして短信をすぐに出さない理由は、このノイズの有無を確認しているから。
大半の証券会社は第一回目の決算発表が終わった後で、ようやく重い腰を上げ、リサーチ開始します。なぜならいま説明したような理由は、このノイズの有無を確認しているから。
言い換えればコンセンサス予想の信頼度は、一回目の決算発表をやり過ごした後には、格段とUPするということ。決算発表の直後、機関投資家向けセールスはファンドマネージャーに第一報を入れます。「これはあくまでも第一印象ですが……いま見たところ……こうです。」というような案内の仕方をします。
しかし……
その第一印象は、後でもっとゆっくり心を落ち着けて精査すれば、印象が変わってくることもあるわけで、そのような「心変わり」はぜんぜんオッケなんです。
だから「第二印象」「第三印象」…と、何度でも機関投資家に続報を入れてゆきます。
その間アフターマーケットの株価は乱高下します。みんなは(なぜ引け後の株価が変動する?)ということを考えた事、あります?
それはいま述べたような感じで、投資コミュニティーが、「真実はなんだったのか?」ということに肉薄するための努力をしている結果として、心が揺れているからです。
慌てる乞食は貰いが少ない。アフターマーケットでアタフタとトレードすることを僕が戒める理由はここにあります。
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