人間くさくて、可愛らしい。

歌劇11月号を読みました。
舞台写真と講評を読んで記憶を取り戻したので、極美慎さん初主演作「ベアタ・ベアトリクス」について思ったことを書いておこうと思います。

「ロックオペラ モーツァルト」のジュースマイヤ役で一目惚れして以来、応援してきた極美慎さんが主演をするということで、とっても楽しみにしていました。
チケ難に加え、仕事が忙しい時期だったこともあり、惜しくも配信での観劇となりましたが、本当に見られて良かった、配信のある時代で良かったと心から思える素敵な作品でした。

幕が上がり、キラキラの笑顔でイギリスのまちに現れるロセッティ。
お坊ちゃん然とした風貌ながら、心の内には文学の道を諦めた劣等感故の自信のなさを抱えたロセッティは、華やかなビジュアルながら真面目さ故の遠慮が伺えることのある極美さんに重なるところがあり、ぴったりのお役だと感じました。

帽子屋でリジーを誘うシーン、エヴァレットがオフィーリアを描くシーン、夢の中でリジーと対話するシーンなど、好きな場面は尽きないのですが、やはりこの作品はエヴァレットとロセッティの和解のシーンが印象的でした。
私が観た公演では、エヴァレットがロセッティの横たわるベッドに涙が落ちるくらい泣いていて、つられて私も号泣。
そこからはティッシュ箱が手放せませんでした。
「2人でスターになろう」という台詞や若手の生徒さんが涙ながらに声を合わせて「we will make it!!」と歌う姿は眩しく、活力に溢れていました。

観劇後、過去に囚われてうだつのあがらなかったロセッティがリジーに受け入れられたのはなぜだろう、問題児であったロセッティをウィルが気にかけ続けたのはなぜだろう、退学寸前のロセッティをエヴァレットが助けたのはなぜだろう、とふと考えました。
私としては、熊倉先生がご挨拶にて書かれていた、「人間としてのかわいさ」が答えかなと思っています。
上手く行かなくとも、見当違いなように見えても、悩みながら前進する姿は人間くさくて可愛らしい。
極美さんはじめ、みなさんのご贔屓の生徒さんが健やかに芸事に邁進できることを祈るばかりです。

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