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【投資家インタビュー#1】SUN METALONの新たな挑戦を後押しする追加投資をGCPが決めた理由(前編)

SUN METALONは2024年秋、シリーズAラウンドにて日米の投資家・金融機関より、総額約31億円(融資枠を含む)を調達し、調達額は累計で約45億円となりました。

前回の昨年のプレシリーズAラウンドに引き続ご出資いただいたグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社(GCP)プリンシパルの中村達哉さんと、SUN METALON日本法人代表取締役の瀧澤慶に、お話を聞きました。中村さんは当社の社外取締役としてもご参画いただいています。

インタビュー前編では、中村さんからみたSUN METALONの評価と、追加投資の判断理由をうかがいます。


3Dプリンタから金属リサイクルへ注力事業をシフト

  前回の資金調達(2022年のプレシリーズA)から今回の資金調達までの間の振り返りをお聞かせください。

SUN METALON・瀧澤慶(以下、瀧澤)
この2年間で、フォーカスしている事業領域が変わりました。前回は主に金属3Dプリンタの事業をしていましたが、今回のシリーズAラウンドでは、金属リサイクルにフォーカスしています。

当社は元々金属3Dプリンタで創業しました。その中で、金属を効率的に加熱する我々独自のコアテクノロジーを金属リサイクルに生かした方が、社会実装も早く、より社会にインパクトが出せるだろうと判断し、事業を推移していきました。

チームも前回は10人くらいだったのですが、今は日米合わせて約30人と3倍に増えています。アメリカでもフルタイムの社員が6人になり、積極的に増やしています。

  今回の資金調達を経て成し遂げたいことは何ですか。

瀧澤
ビジョンにも掲げている通り、金属業界の産業をクリーンな産業にしていく。そして金属業界を変えていきたい

当社は「人類の発展のために、クリーンな金属製造工程の導入を加速する」をビジョンに掲げている

金属業界は、全世界の温室効果ガスを約10%出していると言われる[※1]巨大産業です。
本質的に地球温暖化問題を解決し、脱炭素を実現していくためには、この業界にアプローチしていかなければいけない。金属製造業界を脱炭素化していくための第一歩が金属リサイクルです。

従来の金属リサイクル工程では大量のCO2が発生するのですが、我々の技術ではCO2をほとんど排出しません。金属製品の製造過程で発生する金属スクラップ(廃金属)を原料とし、低コストで高効率に資源価値の高い金属原料へと蘇らせることができます。

金属スクラップというとビルや車の解体、空き缶などをイメージされる方が多いと思いますが、我々のリサイクル工程で原料にするのはより細かい、粉末状やらせん状などの金属切屑(きりくず)や金属切粉(きりこ)といった金属加工屑です。

これらは金属スクラップの中でも特にリサイクル資源としての利用価値が低い。時には産業廃棄物になってしまっています。これまではあまりリサイクル資源として重宝されてきませんでしたが、リサイクルできるようになれば大きなインパクトがあります。

昨今は金属資源価格の高まり、LCA(ライフサイクルアセスメント、環境負荷の評価手法)、材料再生率の向上などの課題があり、顧客のこういった課題解決につなげていただけるように開発を進めています。

金属リサイクルの原料となる鉄スラッジ(左)、アルミ切粉(右)

資源価値の低い金属原料を低コスト・高効率で、かつ環境負荷の少ない手法で再資源化できる金属源の製造技術の開発を目指しています。

まずは我々の金属リサイクルを世の中に広めていくことにきちんと向き合って、投資していただいたお金を使っていきたいです。

※1 参考:国立環境研究所, 2021年6月4日, 「炭素制約が世界規模での金属生産と利用にもたらす影響を推定」

スピーディーな注力事業の移行の成功が投資の後押しに

  GCPとの関わりを教えてください。

瀧澤
中村さんには社外取締役として関わっていただき、毎月の取締役会で戦略や事業に関して意見交換し、ご助言をいただいています。
加えて月に1~2回、私個人とも1on1させていただいています。時には私の経営への悩み相談も含めて、寄り添っていただきながら、取締役会では話せないようなディープな話をしています。

また人材、組織、採用に関してもサポートをいただいています。グローバルに活躍している投資先での好事例や失敗事例を含めてご助言いただき、多くの採用候補者をご紹介いただいています。

  今回の追加投資の意思決定で、評価されたポイントをお聞かせください。

GCP・中村達哉さん(以下、中村)
事業領域をずらしたなかでしっかりと進捗を見せられた点が、当社のみならず他の投資家も含めて評価されたのだと思います。端的に言うと、想像を超えるスピードで結果を出してこられた

ディープテックの投資は、売り上げが出る、量産化が始まるというようなわかりやすいステータスになるまで時間かかります。通常量産化まで5~10年とかかるところを、金属リサイクルを始めてから約10ヶ月で顧客に評価され、なおかつ広がり、協力してもらえる状態まで持ってこられた点が驚異的で、そこを高く評価しています。

さらにそれをアメリカなど他の国に広げていける可能性も見えてきた。事業をスピーディーにシフトし、さらにスケールさせる道筋が見えてきている
しかもこれを実行できるチーム作りが進んだことも決定材料になりました。

GCPプリンシパルの中村達哉さん

需要の大きさやユニークさの説明に時間をかけた

  逆に注力事業の転向について、懸念されたことはありましたか。

中村
注力事業の転向に対して懸念よりも期待が圧倒的に上回っていたのですが、追加投資に必要な検討プロセスは丁寧に進めました。

投資の意思決定機関である投資委員会でも、市場構造から事業モデル、今後の展望までしっかりゼロベースで説明する必要がありました。
一見するとリサイクル市場はきらびやかではないのですが、マクロでは不可逆なニーズであることは間違いありません。顧客から聞こえてくる現場目線の期待も大きかった。市場構造の説明、技術の特徴、ユニークさを説明し、勝ち筋を理解してもらうためには丁寧に説明する必要があったし、それなりに時間を要しました。

当社が独自に開発した金属の熱処理装置では、あらゆる金属粉末を高効率に再資源化できる

  新たに金属リサイクルの事業を切り拓いていくなかで、どのような手応えを感じましたか。

瀧澤
かなりの数の顧客に興味を持ってもらったし、私も営業したところ、金属3Dプリンタよりも明らかに食いつきが良かった。
顧客のペイン(課題意識)の深さ、特に今まで原料として使えなかったものを原料に戻していく脱炭素のプロセス、時代の潮流、金属の資源価格の高騰など多くの要素が合わさり、いいところに刺さった

ただ、この事業の強みはかなりわかりにくい。投資家のみなさんへの説明には時間をかけました。ただ既存の投資家の方々は知識をアップデートされており、特に中村さんは製造業をご経験されていたこともあり業界への理解が深く、助かりました。

チームのキャラの多様性で柔軟さが生まれている

  SUN METALON経営陣の印象はいかがですか。

中村
21年の冬に初めてお話をうかがったときに、このチームは世の中に大きなインパクトを生み出しそうだとワクワクしたことを覚えています。

西岡さんとサシで飲みながら、事業展望などを議論した時の言葉が印象に残っています。グローバルレベルでの産業のあり方に加えて、将来人類が火星に移住することも見据えてどのようなものづくりが必要かを本気で熱く語っていました。
ビジネスとして大きく事業を成長させたいという思いがあり、そしてそれ以上に、事業を通じて生み出す世の中へのインパクトの大きさにこだわりの強いチームだなと思いました。その軸がありつつ、柔軟でスタートアップらしい経営をしていますね。

当初柱に据えていた3Dプリンタから、金属リサイクルという別の事業へ軸足を移す際、経営陣はチームの納得感を得られるように気を遣ってコミュニケーションしていたのを覚えています。

スタートアップの最大の武器はチームです。そのチームが新たな価値を届けていく上で、自分たちの生み出す価値に対してワクワクしていたり、情熱を持てることが大事です。
西岡さんが大胆かつ野心的な絵を描き、瀧澤さんが実現確度の高い適切な進め方に落とし込む面を丁寧かつ柔軟に進めていた姿が印象的でした。
それができているのも、西岡さんと瀧澤さんという、真逆のキャラの2人が同居しているからでしょう。

当社の西岡CEOと瀧澤日本法人代表取締役

西岡さんは、金属材料のエキスパートでありつつ、既成概念に囚われず柔軟な思考を持った熱い方です。目線が高くインパクトドリブンなところも、これだけいいチームができている要因かと思います。

他方で、それをちゃんとデリバリーしたり、会社や組織のステージに合わせて目標設定することも含めて結果を出したりするのはとても難しいことで、それをきちんと回せるのは、チームの多様性があるからでしょう。

元々、製造業出身者が多いチームなだけに、メンバーには誇りを持って「しっかりとしたものを届ける」「適当な仕事したくない」というプロフェッショナル意識が高い方が多いので、方向転換するときや柔軟に動くときも、納得するまで話すことは「急がば回れ」で必要なことなのかなと思いました。
スピーディーに動きながらも、説明は丁寧にすることを心がけている。瀧澤さんは特にそこの意識が強いので、いいバランスなのでしょうね。

後編に続きます。

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