みさこ

人と話すことが好きな人見知りです

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最近の記事

ゆうれい係

「この学校、ゆうれいが出るの」 にっと笑うと、いたずらっぽい目が、きらっと光った。初めての登校日、3時間目のあとに声をかけてきた田中さんは、20分休みには真っ先に飛び出して鬼ごっこをしていた、ちょっと声が大人びていて、中学生って言われても納得する、不思議なオーラがある女の子だ。彼女の言葉が信じられなくて、ちょっと待って、とぼくは聞き返す。 「今、ゆうれいって言った?ゆうれいって、あの、こわい」 「そう、あの『ゆうれい』。信じられないかもだけど、うちの学校のは『ほんもの』だよ。

    • ガラスのかけら

      思えば、小さいころからわたしは手に入れられないものを常に追いかけていた。それは、湖の底に静かに横たわり、陽のひかりを反射して揺らめいて、わたしのことを誘惑してくる。手に入れられたら、きっともっとしあわせになれるとわたしは信じて疑わなくて、その水の中にもぐって、おぼれそうになりながらびしょびしょになってもがいていた。 けれど、おとなになればなるほど、もぐってももぐっても、どうしても手に入れられないものがどんどん増えていった。入りたかったけど入れなかった会社、結ばれなかった恋、

      • マスクのある日常

        マスクをして、外出するようになって、もう4か月ほどが経つだろうか。街ゆくひとたちみなが顔を半分覆い隠して何事もないかのように過ごしているさまが「世にも奇妙な物語」の世界線に迷い込んでしまったような感じで、未だに自分は幻覚を見ているんじゃないのか、そのうちネタばらしの札を持った人が出てくるんじゃないのか、と心のどこかで思っている節がある。 マスクという存在は、本当はただ口元を覆い隠して、飛沫感染を防いだり、花粉を防いだりするとても有用な道具だ。でも、今はそれよりも、「マスクを

        • 卒業式がなくなって

          「学生・教職員及び関係する皆さまの健康面、安全面を考慮し、2019年度卒業式を中止することにいたします」 発表があった後、わたしの周りは意外とその状況を受け入れて、想像したよりずっと冷静に対応していた。「連絡遅いよね」、「袴どうしよう、キャンセル代取られるの嫌だな」と、次々とSNSに投稿していた。そしてわたし自身も。悲しいけど仕方がないよね。感染拡大しちゃうし、こんな状況でやったら何起こるかわからないもの。大学も大変だね、なんて、ひとごとみたいに言っていた。 でも、時間が

        ゆうれい係

          言葉を紡ぐこと

          言葉とは、なんと不自由なものなのだろうか。 ここ最近、頭の中をそんな思いが支配しているのは、映画「マリッジ・ストーリー」を見たからに他ならない。「マリッジ・ストーリー」は、Netflix制作の映画で今年のアカデミー賞の候補にもなった作品。ぼんやりとした前情報しか知らぬまま、それこそなんとなく見始めた。この映画で描かれるのは、もちろん「離婚」をめぐる夫婦のすれ違いだ。しかし、わたしがそれよりも絶望的なまでに打ちのめされたのは、夫婦という「形」に収まっているはず、「分かりあって

          言葉を紡ぐこと

          コミュニティを築くということ

          大学に入って驚いたことのひとつに、「ひとり」が許容されていることがある。当たり前だけれど、講義が各々の裁量に任されるからいわゆるおひとりさまがとても多い。入学直後、めっぽうな美人さんがおひとり様シート(というものがわが大学の食堂には存在する)で淡々とラーメンを食べている現場に遭遇したときにたいそうびっくりしたのだけど、今ではおひとりさまでラーメン屋さんも動物園も行けるようになるのだから、人間とはわからないものだなぁと思う。 わたしが属していたゼミは、そんな「おひとりさま」が

          コミュニティを築くということ

          戻れる日常があるということ

          先日、久しぶりに夢の国に行ってきた。気の置けない友人のうちに泊まって、そのまま開門直後から閉門ぎりぎりまでくたくたになるまで遊び倒して、とにかくけたけたと笑いまくった一日だった。 帰り道、ふらふらと最寄り駅まで歩きながら、小学生くらいの頃に親と夢の国に行ったときのことを打ち明けた。当時のわたしは、とにかくそこから離れなくてはいけないことが悲しくて、やりきれなくて仕方がなかったようで、車に乗ろうとすると泣いていたのだという。そのこと自体は覚えていないのだけど、車の窓から園内の

          戻れる日常があるということ

          ことしの目標

          2020年は、オリンピック・パラリンピックが開催される年として、なんだかみんながふわふわと希望に夢を膨らませているように思える。わたしにとっても(きっと)、あとから振り返ったらターニングポイントだったなぁ、なんて思うだろう、せわしない一年になるはずだ。それは、自分自身の生活リズムが大きく変わる、就職というライフイベントが発生するから。 去年(もう去年!)、noteを始めたときはまだまだ、全然そんな日々がくるなんて想像もできなかった。そして今もわたしは、言葉では想像できるけど

          ことしの目標

          まずは、一歩

          Twitterも、インスタグラムも、SNSと呼ばれているものが基本的には苦手だ。正確にいえば、見るのは好きだけどやるのはできない。それは、インターネット上に、自分のことを書こうとすると、「わたしのことなんてだれも知りたくないし、よみたくもないだろう」という声が心のなかから聞こえてくるから。 じゃあなんでnoteなんて始めたのか?それは、その苦手を少しでも克服したいから。なにか行動を起こさなきゃはじまらないと思ったからだ。 心のなかの自分というのはとても厄介だと思う。なまじ

          まずは、一歩

          はじめまして

          はじめまして。 わくわくするもの、したこと。ふわふわと心踊ったこと。なんでかしらないけど、涙が溢れてしまったもの。自分が今まで心のなかの宝石箱に閉じ込めていたものを、書いて文字化することで整理してみたい。そんな思いで始めようと思っています。 ゆらゆらと書き続けていければいいなあ。

          はじめまして