見出し画像

あおぞらの証明 #7

俺が今日の後片づけと掃除をしていると武さんが帰ってきた。
「裕、今日は夜ご飯食いに行くぞ。」
昼飯はよく行っていたが、晩飯は初めてだったので俺は戸惑った。だが、家に帰って一人で食う晩飯より武さんと一緒に食う方が楽しいので俺はすぐに返事をした。
 そう俺は一人暮らしを始めたのだった。働き始めて最初の給料が入ってすぐに親父のもとから去った。給料が入ったとは言ったが、一人暮らしをするにはぎりぎりのお金しかないため親父と住んでいたのとさほど変わらない2階建てのアパートに住みだした。家具も必要最低限の冷蔵庫と扇風機しかないような部屋だが、自分一人の空間があることに幸せを感じていた。

「裕、今日はお前が乾杯の音頭とれよ。」
武さんにそう言われ俺は席を立ち、姿勢を正した。
「僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきます。」
俺は改まって乾杯の音頭をとった。
「お前、アホなくせになんでそんな挨拶知ってんねん。」
まわりは爆笑に包まれた。
如何せん初めての乾杯の音頭で何もどうしたらいいのかわからなかったので、昔テレビで昔に見たドラマの受け売りで音頭をとったので居酒屋には相応しくなかったようだった。
「カンパーイ」
武さんと飯に来たつもりが、工場の従業員全員とグラスを交わすという状況になっていた。もちろんこれは武さんが仕組んだ状況であったが、何の説明もなく飲み会は始まった。
もちろん俺は未成年だからお酒は飲めないが、みんなで飯を食うのは楽しかった。
飲み会は夜の10時30分ごろまで続いた。

大いに酔っぱらって自分では歩けなくなった武さんを自宅まで送り届けた。次の日が土曜日でよかった。いや、次の日が土曜日だから飲み会をしたのか。俺も眠たさで頭が回らなくなり、1日の疲れをどっと感じながら眠りについた。武さんはかなり酒臭かったが、親父のような嫌な臭いではなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?