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おいしい魚をつくる!「フィッシュファーム産業」の挑戦 vol.2

SUNDREDの新産業共創プロジェクトの一つ、「フィッシュファーム産業」。ECサイト「CRAFT FISH(クラフトフィッシュ)」での商品販売も含めて、養殖でおいしい魚をつくるという挑戦を続けているさかなファームの現在について、原さん・國村さんにお話しをうかがいました。

●プロフィール
・原 和也  SUNDRED株式会社 パートナー / 株式会社さかなファーム 代表取締役社長
・國村 大喜 株式会社さかなファーム 取締役

エコシステムづくりの中で、生産技術における課題感や解決方法を教えてほしいです。

國村:まずはスマートフォンのアプリを作っています。日本各地での養殖業者さんには、家族経営で小規模な事業者がたくさんいらっしゃいます。そこではメーカーの指示通りに餌を使うといった感じで、なかなか試行錯誤に手が回らないといったケースがあります。でも、海外に販売する際に、例えば日本の農作物だと特徴的な育て方をしていることをアピールしておいしい農作物として提示しています。魚も同じような状況に持っていかなければなりません。生産量や価格ではなく魚自体の品質で価値を出し、差別化がしやすい環境を実現したい。そのために、誰もが使いやすく、かつ養殖業の最先端技術を自分の養殖に活かすことができるアプリを開発しているところです。

大学との研究も行ってらっしゃいますが、温度管理や生産技術から品質向上を目指しているのですね?

國村:はい。日本全体において新しい養殖産業を起こすには、1つの会社だけで完結するのは稀で、大学の先生、地元の企業、IT会社などとチームを組むことが必要です。パートナーとなるような大学と話を進めながら、生産者さんといっしょに高度な養殖を実現していこうとしています。

例えばノルウェーだと、国家ぐるみでサーモンの養殖のみにしぼったエコシステムの構築を行っています。大学生のなりたい職業を聞くと、漁業が1位もしくは2位に入るんです。水質や漁業の管理のIoT化は、国が中心となって進めています。日本でも自動車産業での技術を魚へ転用・応用しできたりすれば、世界でもトップ争いができるはずです。でも自動車産業は業界として潤っているが、水産業が業界として潤っていないというところが課題で。まずは水産業が儲かる業界になることが大事です。

原:加工については、地域と国内外での差があります。北海道や東北といった昔から魚がたくさん獲れて産業が盛んなところは、加工会社もたくさんあります。でも例えば、九州では東北などの様に加工会社のバリエーションが多くないので、養殖で魚をつくっていくら付加価値をあげてもクオリティやコストの面で妥協せざるを得ない場合があります。国内のいろいろなところで、やりたい加工ができる環境を整えることが必要です。

もう1つは、国内だけでなく海外でも販売できる日本の加工会社が少なくて、HACCP(ハサップ)という国際規格を重要視している国では認証を持っていないと販売できません。だから日本でいいものを作っても海外に持っていけない。認証を取ろうとすると、時間もお金もかかります。加工工程における衛生管理がからんでくる認証ということもあり、工場を建てるところから計画し直さなければならないケースもあります。日本でHACCP対応の加工工場がたくさん出てくるかどうかは重要なポイントですね。


課題感を共有するために、それぞれのプレーヤーとどのようにディスカッションをしていくのでしょうか?

原:相手によって直面している課題が違うのですが、例えば生産者だとシンプルに売れなきゃどうしようもないので、その課題をいかに乗り越えていくかという話をしています。結果として、強いブランドが必要で、そしてもっと究極的においしいものを目指すべきといった話になることが多いです。で、SUNDRED流の取り組みとして、生産者とシェフをつなぐことによって、生産者が思ってもいなかった調理法や食べ方がレストランでは行われており、それを目の当たりにすることによって、新たな生産に関するアイディアが出てくる、という流れをつくっています。

國村:生産者はどのように消費者に届けられているのか、シェフはどんな意図で作られた魚なのかと、お互いに気にはなっていましたが、これまでは接点がなく話せていませんでした。「CRAFT FISH(クラフトフィッシュ)」という私たちがつくった言葉のコンセプトの元に、生産者とシェフが集って議論をしているのは、見ていてもうれしくなります。

「CRAFT FISH(クラフトフィッシュ)」というサイト名は、とても素敵ですね。

國村:日本は天然魚がもてはやされていましたが、これからの時代は養殖魚が担っていくということを伝えていくために旗頭となる言葉が必要と考え、「CRAFT FISH(クラフトフィッシュ)」と表現しました。これまでのただ人が育てただけの養殖ではなく、お客様の口に入ることを思い描いて育ててきた魚を、プロの料理人が加工して届けるという意味や想いをこめたのが「クラフトフィッシュ」です。

クラフトフィッシュから発売した「つきみいくら」は、宮崎大学発のSmoltというベンチャー企業との共同開発商品です。サクラマスの研究と生産・販売をする大学院生がいるとうかがい、彼らを手伝いながら、さかなファームの黎明期から一緒に検討を重ねてきました。Smoltは「循環型養殖」という、サクラマスを育て終わったあとに精と卵を採取して、次の世代をつくっていき、天然の資源を守りながら養殖する方法を採用しています。いくらの生産を自分たちの養殖魚でできるというのは、1つのフラッグシップになり得るモデルです。彼らのサクラマスのいくらをいい形で世の中に出すために、知恵を出し合いつくってきた製品が「つきみいくら」なんです。

トリガー事業や商品を開発していくにあたって、企業や個人を巻き込んでいくポイントを教えて下さい。

原:根っこにあるのは、同じ課題意識や意義を共有できるのかだと思います。将来世界的に魚がいなくなり、おいしい魚を日本人が食べられなくなることに対して、自分ごととして課題として捉えられるかどうか。それは個人も企業も同じです。そこで同じ方向を向ければいっしょに仕事ができます。特に対企業で言うと、最終的に彼らの利益と結び付けられる絵をいっしょに描いてあげられるかがポイントです
國村:企業はビジネスありきでないと動かないものです。でも僕自身の経験で言うと、大企業の中では、業務は分業されて歯車の一部になってしまいます。僕もデザイナーとしてお客様の側に立って、お客様目線で全体感を持つことを心がけていましたが、いざ独立して全体を見ないといけなくなると、大企業の中にいた時には世の中の全体像はなかなか見えづらかったということを痛感しました。そこにやりがいを感じますね。ひとつの企業のひとつの役割に終わってしまうと、人生つまらなくなると言いたいです。

求めているキープレイヤーはいますか?

原:すべてです。いまの私と國村さんの役割分担ははっきりしていて、1人3役、4役をやっています。私は全体のビジネスの設計、ファイナンス、プログラミングやプロダクトを見ています。國村さんは、デザイン、水産業や養殖業の培ってきた知見・ネットワークによるビジネスの拡大を図っています。

共創会を広げたり、ワークショップをやっていったりする予定はありますか?

原:ワークショップをやっていくプランはあります。魚というプロダクトのある産業なので、召し上がっていただく機会をつくるとか、いろんな立場の方々に参加いただくためにワークショップをやっていきます。商品開発については、もう少しクローズドな形で進めています。魚産業の現状や課題を知っていただくための勉強会とか、一緒に動いていく人を募っていく場です。


共創会を広げていく際に、企業が参画できる部分はどの領域にありますか?

原:魚を扱う技術に関する会社、例えば、水の浄化・濾過、ポンプ、餌、冷凍技術とかそれに加えて、データといったIoTに近い領域はすごく重要です。工程をモニタリングして、人の手を介さず管理することが将来は必要なので、仲間に入っていただきたいです。

最後にメッセージをいただけますでしょうか。

國村:すでに成果は出始めているので、個人・企業を問わずいろんな方々に参画いただきたいです。ベンチャーはすべてそうだと思うのですが、ゼロ→イチを成功させて、活路を見出すことができる人を募集しています。それを楽しみながらも、真剣な人、そして魚が大好きということは重要です。

原:おいしい魚をつくることは日本人に向いている作業だと思います。日本は、世界の中でもいろいろな魚を食べ、いろいろな魚のおいしい状態を知っているところが有利です。また日本は製造業が強かったように、養殖=管理された環境で魚をつくっていくことは、ものづくりにおいて改善を重ねていくのが得意な日本に向いています。それによって日本の養殖産業を世界に発信していくという可能性を、ぜひ一緒に探求していけたいと思っています。

フィッシュファーム産業

株式会社さかなファーム

CRAFT FISH(クラフトフィッシュ)