やなぎだ けいこの店 #12「えとえとがっせん」
★「やなぎだ けいこの店」では、日々、我が家で選び楽しんでいる絵本や店主が読んだ本・最近おもしろいと思ったもの・こと・美味しいもの・やなぎだけいこレシピ、暮らしの中の発見・・・などなど、をマガジンにまとめ、紹介していけたらと思っています。★
今日のご紹介は・・・
絵本「えとえとがっせん」
そのむかし
かみさまの おつかいである
干支にえらばれた
十二ひきのけものがいた
けものたちは十二支とよばれ
かみさまの おつかいなのをいいことに
いばりちらしていた
そんな十二支たちをこらしめようと
たちあがった けものたちがいた
そんな出だしで始まるこの絵本。
「え?戦もの?」と、ページを開くと、そこは、「石黒亜矢子の世界」。
「えとえとがっせん」 石黒亜矢子
石黒亜矢子さんの絵は、日本画を思わせる雰囲気をまとっています。大胆なようで、緻密な線。そして写実的だと思います。
この絵本を選んだのは、3歳の末娘。子どもたちの感性は、大人が勝手に「子ども向け」と思っているものとは、かけ離れているな、といつも思います。
絵巻物「十二類絵巻」が下敷き。
室町時代前期に成立した絵巻物「十二類絵巻」を下敷きにした絵本だそうで、〈十二類絵巻ってなに?〉と全く知らなかったので、調べてみました。
京都国立博物館に所蔵されている「十二類絵巻」この博物館ディクショナリーの説明がとてもわかりやすいです。
そして、「自分の目で見てみたいな。」と思わせてくれます。
絵巻は、今で言う「漫画」のような存在だった、とのことで、描いた人のユーモアについても、書かれています。
なるほど。
石黒さんの絵本も、戦であるにも関わらず、どこかコミカルで、クスッと子どもたちも笑ってしまう。
そんな要素があちこちに散りばめられています。
漫画もそうなのかもしれませんが、まさに、絵本は、現代における絵巻なのかも。
絵巻に描かれている「狸は、腹鼓を打ちながら念仏する狸の姿には、深刻さはなく実に気楽な気分があふれています。」と解説されています。
へぇ~!!!!面白い!この説明を書かれている学芸員の方もきっと、ユーモアのある素敵な方なのではないな、と想像しながら読んでいました。
石黒さんの絵本の中でも、その「気楽な雰囲気」が絵本全体を通じて感じられます。
決闘を申し込んだり、戦が起きて勝敗がつくにも関わらず、なんだか深刻さはなく、ゆる~いほんわかした空気が流れているのです。
どんなときも、「深刻にならない」。
私が、日々の暮らしの中で思うのは、「深刻な事態になっても、自分が深刻になったところで、状況は快方には向かわないことが多い」ということです。
深刻になればなるほど、事態は重苦しい雰囲気に包まれてしまう気がするのです。
「深刻になること=真剣に物事を捉えている」とは限らないのではないでしょうか。
大変なときほど、「なんとかなる」「なんとかできるし、なんとかしよう」「どんなことができるかな」「どうしたらいいかな」と、ゆったりした気持ちで、事態を観察すると、なんらかしらの突破口が見えたりすることも多い気がします。
そんな「気楽さ」をどこか自分の中に備えておくことが、自分のことも、自分の周りの人たちをも、「楽」にしてくれるのかもしれないな、と思っています。
子どもたちには、「お母さんは、すぐ笑う。」と、半ば呆れたように言われています。
大変な状況でも、何でも、じっ~と観察していると、段々と面白くなってきて、笑ってしまうからでしょうか。
石黒さんの絵本を楽しみながら湧き上がってくることばは、こんな感じかな。
〈どんなときも、暮らしの中に、こころの中に、ユーモアを。〉
みなさんの暮らしの色が増えますように。 店主・やなぎだ けいこ