やなぎだ けいこの店 #10「くまとやまねこ」
★「やなぎだ けいこの店」では、日々、我が家で選び楽しんでいる絵本や店主が読んだ本・最近おもしろいと思ったもの・こと・美味しいもの・やなぎだけいこレシピ、暮らしの中の発見・・・などなど、をマガジンにまとめ、紹介していけたらと思っています。★
今日のご紹介は・・・
「くまとやまねこ」です。
2008年に初版が発行されています。
酒井駒子さんが描かれるこどもたちの絵がとても好きです。触れたときに、ふんわり、あったかい、おひさまの匂いのする、あの感じ。そして、どこか少しだけ、寂しさも併せ持っている。そして、どこか懐かしい感覚。それらが、私を惹き付けます。
そして酒井さんの絵と共に、湯本香樹実さんの選び抜かれたことばたちが、「生と死」というものは、いつでも日々の傍らにあることを静かに感じさせるのです。
「くまとやまねこ」湯本香樹実/ぶん 酒井駒子/え
ページを開くと、そこには、〈くまとやまねこ〉というタイトルからは、想像もつかない世界が広がっていました。
この絵本に登場するのは、くま、やまねこ、ことり、うさぎ、りす、などの動物なのですが、そこにあるのは人間の社会の縮図のような気がしてなりません。
「相手に良かれと思って」「相手のためを思って言っている」ということは、往々にしてある事だと思うのですが、そのようなことばや態度が、相手を深く傷つけてしまうことがある。
知らないうちに、相手を自分の思うようにコントロールしようとしてしまうことがある。
実は、自分が対応に困っているから、「あなたのためを思っている」という覆いを掛けて、その自分の気持ちを見ないようにしてしまう。
この絵本を読む度に、くまが自分の姿と重なったり、時には、くまを思いやり発言する、うさぎであり、りすになっているのかもしれない、と苦しく感じることもあります。
「寄り添う」ってなんて難しいのだろうと、日々思うのです。
「寄り添ってもらった」と感じるかどうかという事は、相手の感じ方に100%委ねられている事柄であり、「私は寄り添っている」とは、決して言えないのだと思います。
「私は、寄り添っている」と思うのであれば、それは、自分の行為のみにだけ、光が当たった状態なのでしょう。
相手の中の「決して理解しきれないであろう気持ち」に光を当てたときに、自分はどんな寄り添い方ができるのか、できないのか。
そのときに、「適した対応」「間違えのないことば」なんて、存在しないのかもしれません。
誰しも、誰かの扉に鍵をかけるきっかけになってしまうかもしれない。
そして、誰もが、〈やまねこ〉の様に、知らないうちに、誰かの一筋のひかりとなることもあるかもしれない。
恐れることなく、誰かに想いを馳せるとき、自分はどうするのか。
そんなことを、自分に問いかけることを忘れないよう、そっと傍にいてくれる絵本だと思います。
みなさんの暮らしの色が増えますように。 店主・やなぎだ けいこ
学校に行かない選択をしたこどもたちのさらなる選択肢のため&サポートしてくれた方も私たちも、めぐりめぐって、お互いが幸せになる遣い方したいと思います!