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パフォーマンス向上は歯と口から

普段、何を食べるか、いかに質の高い睡眠をとるかといった健康状態に気配りするスポーツ選手やアスリートは多いと思います。でもオーラルケアは意外とおろそかにしがちではないでしょうか。

実はスポーツ選手の歯や口の中は、う蝕(虫歯)や摩耗、歯周病といった危険にさらされています。歯や口に問題が起こると、口腔機能の低下⇨栄養の偏り⇨筋量や筋力の低下⇨免疫や代謝機能の低下⇨運動能力の低下、というように負のスパイラルに陥る可能性があります。

今回はスポーツと口腔トラブルの関連性と、それを防ぐための方法にフォーカスをあててみました。パフォーマンスの向上に直接つながるオーラルケアの重要性を、一緒に確認してみましょう。

選手の5割に虫歯

英国で実施されたスポーツ選手の口腔疾患に関する調査で、選手の49%でう蝕(虫歯)、41%で歯の摩耗、77%で軽い歯周病(歯肉出血・歯石の存在)、4人に1人は親知らずの問題を抱えているという結果が出ました(調査対象:11競技、352人のエリート・プロアスリート)。

虫歯になる確率は、持久力スポーツよりもチームスポーツの方が2.4倍高く、歯の侵食が起こる確率は、持久力スポーツよりもチームスポーツの方が 2.0 倍高かったそうです。

全体の3割は「パフォーマンスに何らかの影響が出ている」と回答し、具体的に次のような影響を挙げています。「笑顔になれない」というのは決して笑いごとではありませんね。

口腔内の痛み(29.9%)
・通常のトレーニングや競技への参加が困難(9.0%)
・パフォーマンスへの影響 (5.0%)
・トレーニング量の減少(3.8%)
食事が困難(34.6%)
・リラックスできない(15.1%)
笑顔になれない(17.2%)

Oral health and performance impacts in elite and professional athletes調査より

マイケル・ジョーダンにもあった歯の悩み

オリンピック級の選手でも歯や口の衛生状態は昔から悪いようです。夏季・冬季オリンピックを通して何百人もの選手の歯と口を診察してきたポール・ピッチニーニ博士は「彼らはアドニスの身体とゴミのような口を持つ」(アドニスとはギリシャ神話で美少年の代名詞)と表現したほどです。(ESPN

ロサンゼルス・オリンピックに参加したマイケル・ジョーダン選手が「歯に重大な問題を抱えていた」ため「試合に出られなかったかもしれない」と述べた同博士のコメントは有名です(*当事者側はノーコメント)。

キーワードは唾液、糖、酸

なぜスポーツ選手の口腔環境は悪化するのでしょうか。研究によると、関連しているのは唾液の量やpH、総細菌数、う蝕原性細菌などです。

スポーツにおいて、激しい運動をしているときは交感神経優位のため唾液の量が減少します。唾液の減少は、外からの細菌などに対する防御機能や、抗菌作用や自浄作用の低下を意味します。また、汗をかいた後のスポーツ飲料や、エネルギー補給のためのスポーツ食品を必要以上にとれば、「糖分」と「酸」の過剰摂取につながり、う蝕、歯周病、歯槽膿漏のリスクを高めます。

スポーツ飲料1本(500ml)に含まれる糖分:25~30g
  ⇒ 角砂糖7個分(1個4g)で糖分過多
スポーツ飲料の酸性度合:pH3.5
  ⇒ 中性値のpH5.4と比べ酸性度合が高い

各資料より

脱水やストレスによっても唾液の分泌量は減り、口の中は乾燥し、ドライマウスを引き起こす可能性があります。これもう蝕、歯周病、歯の摩耗、歯ぎしり(ブラキシズム)の要因となります。

水泳や水球の選手は、プール水の消毒剤とプール内で過ごす時間の長さが歯に影響を及ぼすようです。プール水のpH値が低かったり(正常値は7.2~8.0)塩素消毒が不十分だった場合は、侵食性の歯の摩耗リスクにさらされます。

さらに、口の中の衛生状態が悪い選手がスポーツ中に生理的変化を起こすと、場合によっては心血管疾患や食道がん、関節リウマチなどの全身疾患につながる可能性も指摘されています(Dentisty Journal)。あなたがスポーツ選手ならなおさら歯や口の衛生状態を意識する必要があるのはお分かりでしょうか。

パフォーマンスへの影響

口腔内の衛生状態が悪いと、パフォーマンスへの影響は次のような形で現れます。

1.生活の質(QOL)とウェルビーイングの低下
2.運動能力への影響(虫歯や歯周病が体内の炎症や感染症を引き起こす可能性がある)
3.歯のかみ合わせが悪い場合は姿勢や歩行に影響し、ケガのリスクを高める
4.競技前に歯槽膿漏や感染症、親知らずの萌出などの緊急事態が発生すると、競技のパフォーマンスが低下したり、棄権しなければならないこともある。

出典:国際歯科連盟(FDI)

口腔環境を良くしよう

でも安心してください。虫歯や歯周病は予防可能です。外傷や傷害もマウスガードの着用で未然に防ぐことができます。今からでも遅くはないので、自分の歯と口の衛生環境をチェックし、問題があれば改善するよう心掛けることが大事です。それがパフォーマンス向上にもきっと役立つはずです。

次の項目をぜひチェックしてみてください。「食生活」の改善や「毎日の歯のメンテナンス」などは今すぐ取り組めるのではないでしょうか。

  • 早食いを改め、よく噛む

  • スポーツ飲料などによる糖分の摂取量と回数を減らし、代わりに水か経口補水液を飲む

  • 歯磨きは最低でも起床直後と夜寝る前の1日2回は行う

  • 飲食後は歯間ブラシデンタルフロスを使う

  • 高濃度のフッ素配合歯磨き粉を使う(二次虫歯や根面虫歯予防のため)

  • 年に1回は歯医者でフルチェックアップをしてもらう(歯石取り等)

もしスポーツ飲料を飲んだ場合は、酸の影響を軽くするために、そのあと水で口をすすぐことをお勧めします。また、歯垢(プラーク)をコントロールしてくれる唾液の働きを妨げないためにも、食後すぐには歯をみがかないことも大事と言われています。

マウスガードの使用

コンタクトスポーツではマウスガードは必須

歯を保護し口腔内の外傷や傷害を防ぐために、中・高校生のラグビーなど幾つかのコンタクトスポーツではすでにマウスガード(マウスピース)の使用が義務化されています。激しい衝撃や食いしばりにも耐えうるスポーツ用のマウスガードは、個人の歯に合わせたカスタムメイドが望ましいでしょう。

ただし、マウスガードは衛生的に保つことが大事です。長時間の使用や不衛生なマウスガードには細菌やカビが繁殖しやすくなり、口腔内の損傷を引き起こすリスクがあります。使用後は専用のスプレーやマウスガード用洗浄剤で除菌洗浄することを忘れないでください。

おわりに

個人的にいつも感心するのは、米メジャーリーグ(MLB)で活躍する吉田正尚外野手の歯。輝くほどにピカピカの歯と抜群にきれいな歯並びは、見ていて気持ちいいだけでなく、「ああ、この人はプロとして一流の心構えで臨んでいるんだなあ」と思わせてくれるからです。どのようなケア・施術を行っているかに関わらず、欧米での見た目基準の評価は間違いなく高いものです。また自身のパフォーマンスにも少なからず寄与しているはずです。

「口は健康の入り口」と言われますが、アスリートの皆さん、あなたの歯と口は大丈夫ですか? この機会にぜひ日頃の習慣を見直すとともに、メンテナンスを行ってさらなるパフォーマンスの向上を目指してください!

文・久保田久美
編集・翻訳者/サポートスペシャリスト
Sunbears マーケティングチーム

【参考資料】
・ヘッダー画像:Michael Jarmoluk氏、pixabayより
・画像:Paolo Bona氏、Shutterstockより
・"Oral health and performance impacts in elite and professional athletes" Community Dent Oral Epidemiol. 2018 Dec;46(6):563-568. doi: 10.1111/cdoe.12392.Epub 2018 Jun 25.
・"Olympians dogged by dental drama" AP May 16, 2014 by ESPN
・"IOC Dentist Says Michael Jordan Among the Many Olympians with Dental Problems" Dan Carson, May 16, 2014
・"The Impact of Sport Training on Oral Health in Athletes" Department of Medical, Oral and Biotechnological Sciences, University “G. D’Annunzio” of Chieti-Pescara, Via dei Vestini 31, 66100 Chieti, Italy
・「歯科衛生士さんに聞いた【フッ素配合歯磨き粉】を紹介!虫歯予防効果を高める使い方も
・「歯はみがいてはいけない」森昭 (講談社新書)
・「スポーツ好きの人が歯で苦労しやすいわけとは?」2022年10月2日


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