虹は一色じゃねんじゃ

これを読んでくれているあなたは、歌を聴くときどんな楽しみ方をするだろうか。

生活のBGMとして。
耳から直接幸せが流れ込む麻薬として。
自分を奮い立たせるエナジードリンクとして。
現実から離れられるファンタジーな物語として。

様々な楽しみ方がある上で、私には学生時代から魅入られ続けている方法がある。
「歌詞を拡大解釈し、自分を含めた複数の物語の重なり合いを楽しむ」という方法だ。


2020年7月15日、鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト水曜日に行われた”鷲崎健、虹コンを大いに語る”の回をきっかけに、虹のコンキスタドールのアルバム『レインボウグラビティ』を購入した。
17曲入りのボリューミィなアルバムだが、私が特に心惹かれたのは、アルバムの2曲目と3曲目に位置する、2つの夏曲だった。

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ある程度の共通認識として、アイドル楽曲といえば、女の子の恋愛の曲というイメージがあると思う。この2つの夏曲も例に漏れず、恋する少女という王道アイドル要素を満たした可愛らしい楽曲だ。
ただ、それだけではない。私が惹かれたのは、歌詞に余白と深みが満ち満ちていたからだ。

歌詞に登場する『わたし』と『キミ』とは、誰のことだと感じられるだろうか。
誰でもない、というのも一つの答えだろう。
『わたし』も『キミ』も、架空の登場人物であり、架空だからこそ様々な恋愛の形を見せてくれる。
ただ少なくとももう一つ、想定される答えがあるように思う。

『わたし』は虹コンのメンバーたる彼女たち、
『キミ』は虹コンだいすきマン。

例えば『ずっとサマーで恋してる』のAメロはこんな歌詞で始まる。

「彼女にもう一度会いたい」なんて ウジウジすんなっ!!
キミの目の前にいるのは誰だ?

この曲がリリースされた2018年は、元メンバーの奥村野乃花と陶山恵実里が卒業した年だった。
それを踏まえると、ただ可愛いだけの歌詞に猛烈な重みが増すのがわかるだろう。

リーダーの的場華鈴もよく「虹コンの夏曲はいつもそのときの虹コンの状況をすごく反映している歌詞」だと話す。
毎年リリースされる虹コンの夏曲には毎回同じ作詞家(NOBE)が参加しており、プロデューサーのもふくちゃんに「こんなモンじゃないだろ!!」と怒鳴られながら書いているらしい。

Pのこだわりもあり、虹コンの夏曲は「王道的かわいさ・POPさ」と「グループに寄り添った、魂に近いメッセージ」を兼ね備えた、エモかわいい楽曲に仕上がっているのだ。


なんかライターみたいなこと書いてるな!!!!本題はここから!!!!!!!!!

さて、『わたし』と『キミ』に当てはまる2つの例をあげてみたが、解釈は決してこれだけにとどまらない。

リーダーの的場華鈴は最新夏曲『サマーとはキミと私なりっ!!』について、”『キミ』って歌詞に『虹コン』を当てはめるとすごくグッとくる”と。

メンバーの岡田彩夢は、”レコーディングのときはいつも歌詞に好きなキャラを当てはめて歌ってます”と。

虹コン楽曲ではないが、パンサー向井も自身のラジオ番組で片想いソングをかける際”僕もお笑いに片想いなんですよ”と語る。

自分、推し、恋人、友人。
もっと抽象的な、宝物、幸福、夢、光。

無限通りの多種多様な解釈を受け止められる、普遍性と余白を持った歌詞。
そんな楽曲が、この世でいちばんの輝きを放つ特別な場所がある。

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アイドルの最大の特徴は、ファンとの双方向性だ。
虹コンの代表曲『トライアングル・ドリーマー』は、ファンのコールが非常に多いことで知られている。
オタクが推しの名前を叫び、”世界でいちばん愛してる”と伝える。
ライブはただのパフォーマンス発表会ではなく、会場にいる全員の多種多様な全力の感情が混じり合う不思議な空間なのだ。

ライブ会場で”キミが好きだ”と叫ぶとき、
その”好き”は、ありとあらゆる『わたし』と『キミ』を包含する。
その場にいる人数分の人生で張ってきたバラバラな全ての伏線が、歌詞の一節に収束、全肯定されるような連鎖反応的感動。

この感動は、コンテンツの外側にいるはずの我々にも干渉できる。
歌詞から意味を「見出す」ということも、自らの人生を歌に寄せていくことすらもできる。
その一例が、ファンになることだ。

アイデンティティに刻みつけるほどの重さを持って、「好き」の純度と濃度を高め、”虹コンの歌”を”俺の歌”にする作業。
円盤・ラジオ・ブログで情報を狂ったように収集するのもそう。
バカみたいに金使うのも、きっとそう。

そうやって虹コンと、だいすきマンと溶け合って、
毎日思い出を魔法陣のように刻んで、
いつか来るはずの、世界を変えるほどの大魔法を、もっと強力なものに。

ファンになることは、重なり合って感動を増幅できる、我々に与えられた魔法の形のひとつなのだ。

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ここまで言語化してみたところで、いちど立ち止まる。

つまり私は、ライブで泣きたいから、虹コンを愛しているのだろうか。
玉の輿に乗れるかどうかで恋人を選ぶような、この上なく打算的理由で。

人を愛する理由としても、音楽を楽しむ方法としても、
最悪としか言いようのない、邪道なのではないか。

「応援してます」「好きです」なんて綺麗な言葉で飾っておいて、
実際はなんて傲慢で自分勝手な愛し方だろうか。
ただの感動中毒。

こうして色々と考え込んで勝手に落ち込んだりするのだが、
結局、もう夢中になってしまっているので、簡単には抜け出せないのだ。

勝手な愛し方で本当に申し訳なくて、気持ちに自信が持てなかったけれど、
それでも、受け止めてくれたから。

出会ったのは偶然でも、あなたを選んだのは偶然じゃないことを、
誇りにすら思える瞬間があるんだ。

ファンになって本気で愛することでしか見れない景色がある。

より良い日の出を見るために山に登るように

美しい海を堪能するために飛び込むように

そうやって、自分の意志で、素敵を自分だけの特別にする誓い。

それは、もはや結婚ではないだろうか。



そう。結婚。



け……的場華鈴さん結婚しよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオン



はい。




こんなとこまで読んでるあなたは暇人ですか。
優しいからですか。プロだからですか。
私と同じくらい、自分勝手な理由だったらいいなと思います。

勝手な愛し方がたまたま噛み合って、
お互いwin-winな関係で、
奇跡みたいな幸せな日々でただありますようにと。
涙でグチョグチョのきったねえオタクが申しております。

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