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「勝手にお前の物語に組み込まれて感動のネタにされるのが腹立つ」

これは私が以前友人に言われた言葉。
私には、得てしてそういうところがある。


退屈が苦手だった。
小さなきっかけから物語を脳内で展開して、勝手なエモを作り上げる。
この少し気どったような文章を投下するnoteだってそう。
自分で自分を感動させたいがために、色んなものを歪めてきた。
それまではアニメ等の作品に対して行ってきた物語化を、生身の人間に当てはめた。
それは人を人でなく、友を友でなく、コンテンツとして消費することへの非難だった。
彼にこれを言われて初めて、はしゃぐ自分が踏みつけていたものを知った

あの日noteに書いた"感動中毒"という言葉は、きっとこの記憶が影響していた。


2020年11月24日放送の征服ちゅうずでぃ。
冒頭のフリートークを担当したのは的場さんだった。
「この前、とある虹コンだいすきマンのブログを読みまして」
で始まるトークは、まさにこの感動中毒の話だった。

話を要約するとこうだ。

・ファン側の立場で、応援する人の物語の登場人物になれたような大感動を味わったことがある。
・それは勝手かもしれない勘違いかもしれないって当時は少し思ってた。
・でもアイドルになって、「ファンが演者の物語の登場人物になる」という感動は、演者側からも勘違いじゃなかったって思える場面がたくさんあった。
・頑張れないってときも、みんなと過ごしたエモを思い出して奮い立たせたりする。
・そのエモには確かに、登場人物としてのみんながいる。
・だから虹コンで感動することに罪悪感を持たないで欲しい。

※この要約は私の主観が多分に入っています。誤解を避けるため、できればラジオのアーカイブを見ていただきたい。一週間以内ならradikoでタイムフリー視聴できます。

つまり、
キミが勝手なエモだと思ってるものは、演者も共有してるし勝手じゃない素敵なもの。
私たちアイドルはむしろ、エモを乗っけて共有して欲しいんだよ。

と言ってくれているわけだ。

……めちゃくちゃ良い話!!!!!!!!!!!!!!!!!
いやすごくないか???????
ファンのブログ読んで一晩寝ずにこんなこと考えてたの??????
しかもこんなに綺麗にまとめてラジオで話してくれるの??????
好き~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

とまあ感情大暴れだったわけだが、いざ冷静になって言葉にしようとすると、詰まるものがある。
当然「了解!罪悪感キレイサッパリ無くなりました~!」とはならないわけで。

このフリートークを受けて考えたことを、つらつらと書いていこうと思う。
的場さんがこれだけ真摯に向き合ってくれたのだから、
「ありがとう~~好き~~推しメン~~~~」
で済ませる訳には行かない。


「もっと感動を見せてくれ」という願いは時として暴力になりうるということを、私は忘れたくない。
欅坂46の映画をみたとき、恐ろしいと思った。
どこまでも苦しんで傷ついていく彼女たちの断末魔、
それを見て聞いて感動している自分が。
熱狂している観衆が。

傷付いた人が再び立ち上がるための物語に、その傷を勲章のように掲げるのは決して悪ではないし、素晴らしいことだと思う。物語にはそういう魔力がある。
ただ、他人が、他人の傷に勝手に物語を見出して楽しむ行為は、暴走すれば、傷つく必要のなかった人を傷つけることにつながる。

例えば「辞めたい」とアイドルが言い出したとき、
「今はつらいかもしれないけど、いつか今を誇れる日が来るよ」
なんて言葉をかけたとする。
それで勇気づけられる可能性だって勿論ある。
でもその無責任で物語に酔った発言が、本人を致命的に傷つけてしまうことだってあるはずだ。
大丈夫や頑張れって歌詞に苛立ってしまう夜を、的場さんは知っているはずなんだ。

清水さんが新型コロナ陽性になったとき、
それを悲劇の物語にしようとする感情を、私は必死で抑えつけた。
障害が残ったら。二度と歌えなくなったら。亡くなったら。
私はそれらの想像を、ただ悲観するだけでは飽き足らず、
苦境を乗り越える虹コンの物語に組み込んで感動したがっていた。
もっと素直に悲しめる人間だったならと考えずにはいられない。
私は常に、人でなし予備軍なのだ。
だがそこに気付けたという点だけは、誇りすら持っていた。

自分という人間に、罪深い恐ろしい部分が含まれていることを忘れない。
物語と感動を愛するからこそ、それらに溺れた人でなしになりたくないという自戒。
胸に刻んで、生きていきたい。

これは無償の愛でもなければ正義でもない。
身勝手すぎる恋は、好きな人が受け入れてくれるから成立する。
だからこそ、こんな私でも愛していいと認めてくれることを、奇跡と抱き締められるのだ。

ここまでつらつらと語ってきたように、つまり私は、自身に潜む悪魔に怯えていた。
もし的場さんが的場さんじゃなければ、
私が今ちゃんと持てているアイラブユーさえ風に飛ばされていたかも。

推しがこれだけ覚悟決めて腰据えてんだから、私も多少は傷つける覚悟を持って、エモとエモで殴り合おう。
今夜も寝かさないぜ。

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