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生成AIを活用した「AI*deation」を使って仮想大企業の新規事業を考えてみた

生成AIを活用した「AI*deation」 を使って仮想大企業の「新規事業」を考えてみた

Sun Asteriskは2023年7月から、Generative AI(生成AI)を活用した新規事業のアイディエーション支援サービス「AI*deation」(アイディエーション)の提供を開始しています。

これまで600以上の新規事業・サービスを創出してきたSun*ですが、これまでの知見を盛り込んだプロンプトエンジニアリングをもとに、大量のアイデア発想による新規事業アイデア創出支援を行うことが可能になりました。

アイデアの創出・検討のサイクルを早め、より人が注力すべきサービスデザインやプロダクト開発に集中することで、成功確率が上がりやすい状況を生み出します。

今回のnoteでは、その「AI*deation」がどのような考え方のもと生み出されているのか、またクライアントとして「仮想大企業」を想定して、実際に「AI*deation」を使って新規事業構想のシミュレーションを行ってみようと思います。


AIの「アイデアの発散」と、人間の「アイデアの収束」のサイクルを作る

「AI*deation」案件では、クライアント企業様の前提条件をいただいて、それに合わせて全体の設計を行っていきます。まずはその前提条件に、マーケットの機会(トレンド)と、自社の強み(アセット)を組み合わせて「アイデアの発散」を行っていきます。

「アイデアの発散」は、M-F-Tフレームワークの方法論を使って行っています。まずマーケットの機会(トレンド)から「要求機能」を抽出することでユーザーのニーズを洗い出します。次に自社の強み(アセット)から「訴求機能」を洗い出します。双方の新たな結合を発想することで新しいアイデア(提供機能)が生み出される仕組みです。

こうして出てきたアイデアを、Sun*独自のフレームワーク「バリューデザインシンタックス(VDS)」を使って、より高次元に磨き上げる作業が「アイデアの収束」です。クライアント様とSun*のビジネスデザイナーがアイデアをピックアップし議論しながら、VDSに書き起こし有望度をチェックしていきます。

「アイデアの収束」は、人間側の得意とする柔軟な思考や創造性を活かすフェーズです。AIが出したアイデアは、上司など関係性のある人が出したアイデアではないので、気軽に批判しやすく、率直な議論がしやすい題材です。そうしたコミュニケーションを通じてアイデアを磨き上げリアリティをつけ、注力するアイデアを決めていきます。

アイデアを、事業構想フレームワーク「VDS」に落とす

ここからは「仮想大企業」として、年商1,000億円以下の老舗食品加工会社をクライアントとして想定し、Sun*のビジネスデザイナー・遠藤和真、岡沢唯香と「AI*deation」のシミュレーションを行っていきます。

――ここからは業界トップ20くらいの企業担当者が実際に「AI*deation」を依頼し、Sun*のメンバーと会議を進行しているイメージでお伺いしていきます。新規事業をやりたい理由として、自社の強みはボリュームのある冷凍食品(唐揚げなど)だったが、業務用スーパーのPB商品などの台頭によってやや陰りがある。直近は自社製品よりも大手小売向けのOEM売上が伸びているが、既存のサプライチェーンに頼らない売上の種を作るため、新規事業部を立ち上げたという想定です。なお、シミュレーションをしているメンバーはあくまで食品加工会社の知識はない前提で会話をしているので、その点ご容赦ください。

遠藤:ありがとうございます。いま伺った内容を「アセット」としてインプットし、さらにマーケットを分析し「トレンド」と組み合わせてみました。「トレンド」はSun*でリサーチする場合もあれば、クライアント様とのヒアリングによって設定する場合もあります。

遠藤:まずは「ユーザー」「ユーザーの抱える課題」「手法」「ユーザーへの価値」という4つを発散させるということをやっています。これは何かと言いますと、Sun*で用いている「バリューデザインシンタックス(VDS)」の「ミクロ」の列で、サービスコンセプトを語る上での最小単位となる部分を発散させるという形を取っています。

遠藤:さらに「シナリオ」ですが、トレンドをインプットしたときに、AIに更にアイデアを発散させるという目的で、トレンドから近未来に世界がどうなっていくのかを考えさせています。「シナリオ」が発散されていることによって、同じトレンドの中でもアイデアにバリエーションが出てくることになります。「サービスの概要」はアイデアをサマライズしたものですね。

遠藤:本来であれば、これを発散・収束と繰り返して何サイクルかで行って、のべ1,000案くらいを出して行く形なんですが、今回は1回目として140案を出しました。この発散のあと、人間が主体となって「アイデアの収束」を行っていきます。収束フェーズでは、まず人の目で、気になったアイデアや、鍛えがいのあるものなどを選定して、ミーティングの場でそれを持ち寄って議論してもらいます。

AIが出す、「仮想大企業」の有望な新規事業アイデアとは?

岡沢:いろいろなアイデアが出ている中で、一人暮らしの人の悩みは大きいなと。一人分作るのは難しいし、作りすぎてしまうことも。なので「冷凍ミールキット」は、いま世の中にあまり無いサービスなのでチェックを入れました。

あとはアート志向の人が増えていること。今はただ食事をするだけ、食品を変えるだけでは新しい価値にはならないので、アートなどの体験と組み合わせたり、パーソナライズされたサービスであったり、ユーザーの好みやニーズに合わせて冷凍食品を作成する、というのは面白そうだなと。

ターゲットを変えるとお母さんたちの悩みも大きいと感じました。子どもだからこそきちんと栄養を摂らせたいという悩みにフォーカスした食品は良さそうだなと思って、「子どもの成長段階に応じた栄養素を考えた冷凍食品」というのはロジックの深掘りが必要ですが、離乳食の段階を超えた2歳からの食事のニーズをカバーする商品は実際に求められており、市場としては良いかなと思って選びました。

また地方特産品というトレンドも入っていたと思うのですが、過疎地域の農家では野菜を余らせている実態もあり、社会課題となっている例もあります。SDGsの認知の高まりにより「食品ロス」や、「地域を助ける」といった商品に関心のあるお客さまが今後増える可能性もあるため、バックグラウンドに共感してもらえる原材料の工夫はいいなと思いました。

あとは米粉ベースのファストフードチェーン展開ですね。個人個人への販売網ではなくて、お店を構える形ですがアリなんじゃないかと思っています。日本では海外ほどグルテンフリーの需要が高いわけではないのですが、これまでも欧米の文化が入ってきたように、将来的にはそのニーズが高まるという想定で、先駆けて店舗を出すのも良いのでは?と思って選択しました。

遠藤:こうして選んでいったアイデアを、それぞれ鍛え上げて、ここから発散していくに近いような議論をしていきます。これは良い、これは悪い、あるいはこれをぜひやりたいという意思の話でも良いですし。今回は岡沢がアイデアをピックアップしましたが、いつもはクライアントさんが選んでくださって、それをもとに議論していく形になります。

――ありがとうございます。冷食業界で言うと、ターゲット発想があまりないので、結局小売りに求められるものとして定番品、ボリューム、宣伝費をかけるという発想になる。なので、ディスカッションの中で細かくターゲットをセグメントして決めていくことに興味があります。あとは社長1代で築いた自負があるので、細かいアイデアよりも大きなアイデアのほうが好まれそう。そういった意味ではセントラルキッチンを持っているファストフードチェーンのような業態は作りやすいのかなと思いました。

遠藤:確かに米粉ベースのファストフードに関しては、他にはないですし差別化しやすいですよね。

岡沢:ベビーフードを出している企業との明らかな差別化点として、冷凍の販売網というのは強みだとも思います。赤ちゃんの専門店をイメージしてもらうと、冷凍やチルドの売り場ってないですよね?スーパーでも売り場面積がとても小さいと思います。ベビーフードが冷凍コーナーに商品を出すことはとてもハードルが高いことが伺えます。もともとその販売網を持っていて、冷凍食品としてお母さんたちにニーズがある離乳食や幼児食は、可能性が高いのではと考えています。

――今までにこうしたベビーフードの冷凍食品が無かった理由は分かりますか?儲からないのか、技術的なハードルがあるのか…。

岡沢:要因の1つとして、物流の問題は大きいと思います。市場が小さいので、ベビー向けを運ぶだけでは元が取れない。逆に一般の冷凍食品を売っていて、それに乗じてベビーフードも載せられるということであれば、可能性はあると思います。そこは強みだと思いますし、お母さんたちは冷凍のものを求めている。自分で作るとレパートリーが少なくなる悩みがあったり、冷凍のほうが添加物を減らせて安心して使えるという側面もあると思います。

――別ニーズで工場に1ライン作ればできるので、これなら確かに筋が通っていて現場が支持しやすいのかなと思いますね。サプライチェーンのアップセルの発想としては良いかなと。一番現実味があるかもしれません。

岡沢:地方に強いというのも活かせますね。それこそベビー専門店って地方にはなくて困っているという人もいますし、赤ちゃんがいる家庭って新たな家に引っ越したりとライフステージが変わるタイミングなので、そこで生活の最初から入っていくというのは戦略としては有効ですよね。

遠藤:ありがとうございます、こうした議論をした後に、通常のフローでは「このアイデアでVDSを描こう」と意思を持って選択して、次のMTGでVDSを持ち寄って議論して深掘っていくという流れになります。今回はこのベビーフードのアイデア、「子どもの成長段階に応じた栄養素を考えた冷凍食品」が盛り上がったので、VDSを作ってみましょうか。

具体的なアイデアを「VDS」に落とし、さらに議論を重ねる

遠藤:第一次案としてはこんな感じです。これを見ながら2周目で議論を深掘っていく感じですね。VDS化することで、評価や検証、ブラッシュアップをしていく要素が明確になっていきます。また評価観点として、「20の問い」というVDSのそれぞれの要素について事業成立の不確実性を下げるための問いがあります。これを活用して議論して、アイデアの成功可能性を上げていきます。

遠藤:たとえば今回のVDSで僕が気になったのは「競争優位性」のところで、親の目線からすると冷凍食品と比較されるのではなくて、手作りも含めたほかの離乳食と比較されてこの新商品が選ばれるか選ばれないかが決まるんじゃないかと思ったんですよね。

――親観点で見ると、離乳食はそれほどバリエーションがあるわけではないので、たとえば1か月あって、5日~10日くらいは冷凍食品を使ってもらうのが関の山なのかな。“疲れた、作りたくない”みたいなときに使われるのかなと思います。「競争優位性」のところでは、マネされてしまうという懸念はありますね。

遠藤:いま「競争優位性」を作るためにどういうリソースを活用するのかという話なんですが、VDSの中では「加工技術」や「栄養士」などが挙がっていますが、これではなく農家とのリレーションシップで生産者の顔が見えるといった安心感を提供していったほうが良いですかね?

――演出的には可能ですが、農家さんも大量に栽培して安定供給できるという部分を強みにしているので、どうなんだろう…。自分たちとしてもマヒしてくるんですよね、ストロングポイントがどこなんだろうという部分で、VDSで改めてテキストで見て本当にこれを活かせるのかと迷う部分もあります。

岡沢:確かに、それが本当に第三者を入れる良さなんですよね。クライアント様の中で当たり前になっているものが「外から見たらすごい強みじゃないですか」と勇気づける部分も。改めて「強みだったんだ」と再認識するコメントも出てくるので、そこを気づかせてあげて、新たな認識とそこを活用してどういう価値を生み出せるのか?という会話をするのも良いのかなと思いますね。

私たちはトップダウン、ボトムアップどちらの支援も行っており、こういった情報の整理は双方の視点でお互いを説得するためにも有効だと考えています。強みが強みであることの説明や、このアイデアはお客さんに支持されているという“型”を作って、説得材料として活用する。そのためにVDSで整理して、可視化して、説得力を増していくというのが大事だと考えています。

あとは1項目ずつを検証していくという明確なビジョンができるので、たとえば「既存の食品加工技術と設備」が「競争優位性」で挙がっていますが、自社で当たり前となっている技術を一覧にして全体で把握している企業は少ないと思っています。だから改めて自社のアセットを振り返る良い機会にもなります。VDS上で仮説が出て、これを確信に変えていこうというToDoリストができているんですよね。

アイデアを深掘りした先に…「AI*deation」のゴール

――新規事業をやったことがない会社からすると、AIが出した人間の色がついていないアイデア、収束での議論、フレームワークで文字として可視化されていくという一連の過程が新鮮な体験ですよね。こうした議論を重ねていって、「AI*deation」のゴールはどこになるんですか?

遠藤:いまのような議論を踏まえて、より具体化したVDSを出すなどして、VDSをどんどん良くしていきます。ブラッシュアップが終わったVDSがいくつか出てくることになるわけですが、そうなると次にどのアイデアを前に進めようかという話になります。

遠藤:クライアント様によってどういうアイデアを何を重視して採用するか。たとえば「競争優位性が高いもの」「実現可能性が高いもの」など、どの評価軸でこのアイデアを選定しますか?と一緒に議論していき、アイデアを選定できたら、それをサービスデザインフェーズにつなげて実際にユーザーに当ててみるなどして検証し、実際に形にしていく所がゴールですね。

評価軸については、新規事業の意思決定者のような方と別時間を取って話して、どういう軸で判断したいですか?という部分の議論をしておくこともあります。またアイデア発散から収束フェーズで何をピックアップする際にも、その評価軸が活かせる場合もあります。いかに良いVDSを作れたとしても、通らずに実現しなかったら意味がないので、会社としてどういうことをやりたいかという部分は重要視していますね。

岡沢:あとは、実際にクライアント様を見ていて思うのは「本当にそれをやりたいか?」という部分が一番重要だなと思います。そこは測れない部分で、他の条件は完璧なんだけれど、自分の意思が伴っていなければ絶対に新規事業は作り上げられない。そこは一番聞くところですね。本当にやりたいですか?と。新規事業をやるのであれば、その「意思」を持つ人がずっとメインで走り続けられる環境を整えてあげることが重要なのではないかなと考えています。

――ありがとうございます!以上、「AI*deation」のシュミレーションはいかがだったでしょうか?もしご興味があれば是非一度お問い合わせいただければ幸いでございます。

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