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6月の短歌から10首

確実に左へ行けば冒険が始まる朝に右へ出勤

教科書のようにのんきな眼差しで「想いの強さ」などと供述

踏み締めたケヤキが折れて僕らには朽ち果てるほどの猶予がない

雨粒の如く潰える命あり ワイパーで拭く高速の夜

木星へカカシを摘みに行きましょう冷やし中華が始まる頃に

紫陽花と墓地に優しい雨が降り濡れた先から日曜になる

魂の返却期限を過ぎており死ぬまで隠すと決めた夏至の日

尾根がまだ夏の陽射しの色の頃 山村の夜は谷から溜まる

大脳と頭蓋の隙を撫で回す夏の夜風は記憶の如く

これはもう夏だ夏だと叫ぶとき今日が季節の背後に消える


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