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7月の短歌から10首

微笑んで人の会話を木のように聞く君だけが晴れの日よあれ

余りにも夏らしい日が現れて記憶がどこか贋作になる

この国は衰退すると言っていた そうなのだろう電灯に雨

寝転んだ畳に容赦なく垂れる気温の外でヒグラシの声

両の手で花瓶を上げて底を見る ここに生きてく理由を置いた

重そうなガラスの皿で桃が出てそのひんやりの記憶が祖母だ

煮詰められ小瓶に分けて出荷され社会制度と戦わされる

調べれば「駆除方法」が躍り出るクロアナバチのくびれは細い

引くことで世界を消せる紐があり 揺れる端部をそっと見ている

午後三時光る水面の露天風呂響く遠雷鈍色の空


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