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曲に込めた想い①:「夏空キャンバス」編

初めましての方は初めまして、こんにちは。すなじろと申します。
打ち込みロックをメインに制作しているボカロPの端くれです。
歌詞とかコードに込めた想いについて、備忘録を兼ねてだらだら書いていきたいと思います(今回は特にコードにフォーカスしてみました。)。
筆者は音楽理論に精通した人間ではないため、独自解釈によるコードの表記や選択が多々あります、というかあまり論理的ではないです。叩かないでください。お願いします。


青春の片思いをイメージした夏ロックです。


コード

夏空キャンバスの曲構成は
Key = D major
184 BPM, 4/4

イントロ → A1 → B1 → サビ1 → 中トロ(?) → A2 → B2 → サビ2 → 間奏 → B3 → サビ3 → ラスサビ → アウトロ
という非常にわかりやすく普通の進行になっています。特別な部分もありませんので、コードについて細かく書き連ねていきます。

イントロ

ⅠM7|ⅣM7|Ⅴ6|Ⅵm7(11)|
ⅠM7|ⅣM7|Ⅴ6|Ⅰ|

×2

特筆すべきこともないT→SD→D系コードだと思います。夏の明るさを表現し、何かが始まっていく予感を残すにはこれが良いだろうなと思いました。Ⅴが6thなのはⅲ音(F♯)を保持し、あまりコードを動かしすぎることなくイントロらしさを出すためです。Ⅴ7がそんな好きじゃないから手癖ともいう。

A1

Ⅰ/Ⅳ|Ⅲ7sus4|ⅣM7|Ⅲm7omit3|
空は青く澄んでどこまでも深くて 燃える日差しの下、夏の帰り道
Ⅰ/Ⅳ|Ⅲm7|Ⅰ/Ⅳ|Ⅲm7|
「暑いね。」なんていう当たり障りのない言葉を投げかけた交差点

二小節でループしていく、イントロと比べてゆったりとしたコード進行になります。4343系のユラついたコード進行になりますが、序盤のコード進行は内声音をⅴ→ ⅵ → ⅶと順次進行で上昇させるのに対し、後半のコード進行は内声音をⅴで保持しています。
これは物語のフォーカスを地に着けるという意味で後半は動きのないコードを採用したのに対して、前半は歌詞の入りでもあるので、世界観を提示するため空と夏の暑さを表現するために少し動きのあるコードを採用したことがこの変化に繋がっています。作っているときはそこまで考えてなくて感覚なので後付けですが……。
そもそも4343の進行がすごく曖昧なところで止まっている印象があるので、このパートはもじもじとした青春の心模様を表しているといったところでしょうか。

B1

ⅣM7|Ⅴ|Ⅲm7|Ⅵm7|
「じゃあまたね。」手を振る君が
Ⅱm9|Ⅴ7|Ⅴ♯dim7/Ⅱ|Ⅵm7|
背を向けて遠ざかってく
ⅣM7|Ⅴ|Ⅲ7/Ⅴ♯|Ⅵm7|
「さよなら。」と今日も言えなかったな
Ⅶ♭M9|〃|Ⅶm7-5/Ⅱ|Ⅲsus4 Ⅲ
なんて思うだけ

コードが一気に動きます。4536の王道進行からスタートし、そのまま25と連続四度上行の強進行から、Ⅴ♯dim7/Ⅱを交えて切なさを出していきます。
物語としては帰り道で「君」と別れるシーンであり、「『さよなら。』と~」と、少しの後悔を含んでいます。その心模様を(よくあるパターンではありますが)Ⅲ7で表現し、そのまま「なんて思うだけ」と少し捻くれたような歌詞が続くので、コードもそのままⅥm7から半音進行して浮つき、Ⅶ♭M9→Ⅶm7-5へ。Ⅲsus4→Ⅲで〆てサビの入りだ~ってことを提示します。

サビ1(前半)

Ⅵm7|Ⅳ6|Ⅴ6|Ⅵ♭aug|
真夏の雲のキャンバスに描いていく未来を
Ⅱm7|Ⅴ♯dim ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅶ♭6|
「馬鹿だ」といっそ言ってくれたら

恋してるかわかんない時の感情ってぐっちゃぐちゃですよね~~っ、分かりません? それをコードで表現してみました。
ここまで明るめな感じで進行しましたが(特にコード頭でメジャー系のコードが多いため)、サビ頭はⅥm7スタートと少し暗めな感じでスタートし、その後もⅣ6→Ⅴ6と進行しますが、これはⅡm7/Ⅳ→Ⅲm7/Ⅴと解釈することも可能であり、少しマイナー系の雰囲気が漂います。その後一般的にはⅥm7やⅠに進行するところをⅥ♭augに進行させることで上がりきらず煮え切らない印象を植え付けています。
最初から暗めで、歌詞「雲のキャンバス」「描いていく未来」のような明るそうな歌詞とは真逆の雰囲気になっていますよね。それもそのはず、「『馬鹿だ』と~」と、前半の歌詞は否定される方向に走ります。それに付いていくように、Ⅱm7からⅤではなくⅤ♯dimで浮つき、一般的な進行から考えれば逆行するようにⅣmM7、Ⅲm7と続き、Ⅶ♭6(Ⅴm7の転回形)へとまた浮つきます。とにかく逆張りの連続です。ここは葛藤の歌詞なので、爽やかさは残しつつも明るすぎる雰囲気をとにかく出さないように心がけています。

サビ1(後半)

Ⅵm7|ⅣM7|Ⅴ6|ⅠM7|
君を忘れないなんてことなかったはずだろ
Ⅱm7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅴ|
帰り道、胸を占める感情に色づけて
Ⅱm7/Ⅳ|Ⅲm7/Ⅴ|Ⅵ♭|Ⅶ♭|
一人で空を見上げ真っ白な雲を見ていた

最初の方は大きく変わりませんが、メロディが盛り上がるのに合わせてⅠM7をぶち込み、葛藤に踏ん切りがついた、というイメージを持たせます。前半でⅥ♭augなんていうクソキモい違和感のあるコードに向かったのとは対照的です。
この後は極めて普通に進行し2345、そしてⅥ♭→Ⅶ♭と短三度上への部分転調を行いながらどんどん盛り上がり、「見ていた」と中トロ(???)に被せる形で歌詞を繋ぎます。ここは前半とは一転して素直に進行することで、歌詞も含めて恋の自覚と一種の決心を表現しています。

中トロ(?)

ⅠM7/Ⅲ|ⅣM7|Ⅴ6|Ⅵm7(11)|
ⅠM7/Ⅲ|ⅣM7|Ⅴ6|Ⅰ|

イントロとほぼ変化はありませんが、コード頭のベースラインのみが3へと変化しています。ここは物語の接続なので、イントロを想起させつつ、ベースラインを少し滑らかな形で繋ぐ役割を持たせてみました。

A2

Ⅰ/Ⅳ|Ⅲm7|Ⅰ/Ⅳ|Ⅲm7|
雨上がりの匂い、湿気た南風 また今日も二人で歩いてた

A1後半と何ら変わりないため割愛。

B2

ⅣM7|Ⅴ|Ⅲm7|Ⅵm7|
「じゃあまたね。」微笑む君の
Ⅱm9|Ⅴ7|Ⅴ♯dim7/Ⅱ|Ⅵm7 = Ⅶ♭7 Ⅶ7-5|
顔なんてまっすぐ見れずに
ⅣM7/Ⅵ|Ⅴ|Ⅲ7/Ⅴ♯|Ⅵm7|
「さよなら。」と今日も言えなかったな
Ⅶ♭M9/Ⅳ|Ⅶ♭M9|Ⅶm7-5/Ⅱ|Ⅴsus4 Ⅴ
なんて思うだけ

B1との差異は以下の2点。
・8小節目のⅥm7に続くⅦ♭7→Ⅶ7-5の半音上行が追加された
・16小節目、Ⅲsus4→ⅢがⅤsus4→Ⅴへ
前者の変化は「まっすぐ見れずに」にも表れている恥ずかしさの表現、後半の変化は葛藤の種類が変わったという表現になります。どちらにも共通して言えるのは恋心を自覚したことにより、抱く感情への理解と整理が進んだということです。
他にも何箇所かオンコードになっていたり変化がありますが、ベースラインのなめらかさや動きを意識した結果形成された、偶成オンコードとでも言うべきものだと思います。

サビ2(前半)

ⅣM7|Ⅳ6|Ⅴ6|Ⅵ♭aug|
蝉の鳴き声甲高く 胸の鼓動高鳴る
Ⅱm7|Ⅴ♯dim ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅶ♭6|
響け心よ、もっと遠く

後ろ四小節は変わりませんが、サビ頭がⅥm7からⅣM7へ。結果として進行は王道進行に近づき、暗さを少し失ったことで迷いが減ったイメージを表現。でも恋心って複雑ですし、それと分かったところで簡単に外に出せるものではありません。声に出すことは難しく、それが与える影響が分からない、という意味でまた別の葛藤が生まれます。なのでコード進行は大きく変わらず、ほとんどがそのままです。

サビ2(後半)

ⅣM7|〃|Ⅴ6|ⅠM7|
「声にならないな、感情は」消えた独り言
Ⅱm7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅴ|
帰り道、君にかける単純な言葉さえ
Ⅱm7/Ⅳ|Ⅲm7/Ⅴ|Ⅵ♭|Ⅶ♭|
未だにわからぬまま真っ白な雲を眺めた

頭がⅥm7からⅣM7になっただけです。サビ2前半とサビ1後半の複合形で、特に語ることはないため割愛。

間奏

ⅣM7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅲm7|
Ⅱm|Ⅲm|Ⅳ|Ⅴ Ⅴsus4|

ストリングスが入ってくる間奏パートです。ここも二小節ずつコードが移り変わっていくAメロに近いパートになります。見上げた空と雲の表現をするため、大きな変化のないめっちゃ普通のコード進行を用いてみました。
ただし、意識が地に着くことはないため、ⅠやⅥmといった純粋なトニックの使用は避け、ゆったりとした、それでいて時間の進行は感じる進行にしています。

B3

ⅣM7|Ⅴ|Ⅲm7|Ⅵm7|
「どうしたの?」遠くの君が
Ⅱm9|Ⅴ7|Ⅴ♯dim7/Ⅱ|Ⅵm7|
振り向いて首をかしげる
ⅣM7|Ⅴ|Ⅲ7/Ⅴ♯|Ⅵm7|
「好きです」はついに言えなかったな
Ⅶ♭M9|〃|Ⅶm7-5/Ⅱ|Ⅲsus4 Ⅲ
なんて思うだけ

B1とほとんど変化がないため割愛です。メロディは少し違いますが、表現したいものがかなり近いためコードは同じものを使用しました。

サビ3(前半)

Ⅵm7|Ⅳ6|Ⅴ6|Ⅵ♭aug|
真夏の雲のキャンバスに描いていく未来を
Ⅱm7|Ⅴ♯dim ⅣmM7|Ⅲm7|Ⅶ♭6|
「馬鹿だ」といっそ言ってくれたら

サビ1と歌詞同じ、コードも同じです。イメージとしては回想編、でしょうか。

サビ3(後半)

Ⅵm7|ⅣM7|Ⅴ6|ⅠM7|
この想いだってなんてことなかったはずだろ
Ⅱm7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅴadd9 Ⅶm/Ⅳ♯|
今でも思い出せるあの夏の日々を

ここもほとんどサビ1と変わらないのですが、ラスサビに接続するためⅦm/Ⅳ♯を用いてみました。半音下降でⅣに接続できるのが大きな理由ですね。

ラスサビ(前半)

ⅣM7|Ⅴ|Ⅵm7|Ⅲm|
透き通るように鮮明で真っ白なキャンバスは
Ⅳ6|Ⅴ7 Ⅴ♯dim7|Ⅵm9  Ⅵ♭aug|Ⅴ/Ⅱ Ⅶ7sus4/Ⅴ♭|
眩しくて苦く切なくて

恋には、そのうち諦めがつくものもあります。今回は、そのようなイメージで曲を作っていました。
捻くれた進行がラスサビで4563という普通の盛り上がる進行になりました。それをベースに後ろ4小節では半音進行を使いまくり、とにかく未練がましく、それでいて踏ん切りは付いている、そんな曖昧な着地点を目指したコードを畳みかけました。
Ⅶ7sus4/Ⅴ♭は音の響きで選んだので自分でも意味不明ですが、おそらくⅤ♭を根音とする4度堆積の和音だと思います。

ラスサビ(後半)

ⅣM7|Ⅴ7sus4|Ⅵadd9|ⅠM7|
もう最後だったチャンスなら届けばよかった
Ⅱm7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅴ|
帰り道、蝉の声に「さよなら」はかき消され
Ⅱm7/Ⅳ|Ⅲm7/Ⅴ|Ⅵ♭|Ⅶ♭|
一人で空を見上げ真っ白な雲と歩いてく

そしてそのままラストへと走り抜けます。4561でストレートにⅠM7へと進行し、そのまま2345、部分転調しながらアウトロへ。できることはやった、というやり切った思いを表現するために、ド直球に上行形のコードを使いました。まあ実際には好きですとは伝えてないですし、相手に「さよなら」が届くこともなかったわけですが、青春の恋愛なんてそんなもんですよね。え、そんなもんだよね?

アウトロ

ⅣM7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅲm7|
ⅣM7|Ⅲm7|ⅣM7|Ⅴ6 Ⅳ/Ⅴ|

間奏のコード進行と同じで、空にフォーカスを映しながらこの物語は終了です。しかし、今回は失恋(というか始まってすらない)に終わってしまいましたが、空も、人生も、まだまだ長く続いています。
Ⅳ/Ⅴを用いて、まだ先があることを予期させる終わり方にしてみました。

あとがき

これ楽しいけどめっちゃ疲れる。
ボカロの曲以外は比較的単調なコード進行になってるのでやらないと思います。ボカロ曲は作ったらまた書くかも。



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