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「crossing sushi beats」(sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司)感想

この記事は2021年4月16日にリリースされた、sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司さん主催のコンピレーション・アルバム、「crossing sushi beats」の各楽曲について、個人的に感じたことや思うところを、自由に書き綴ったものです。技術的な分析や、音楽的な批評を加えたものではないので、その点はご了承ください。

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1曲目「ハッピーだけ歌ってたいよ(feat.Fra)」sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司 feat.Fra

まずは1曲目、「ハッピーだけ歌ってたいよ(feat.Fra)」。

主催であるsumeshiiiさんと、BOOGEY VOXXのFraさんによるコラボ楽曲です。

最初に言っておきたいのは、やっぱりsumeshiiiさんの制作されている楽曲は本当に音がいいな、ということ。リリース前日に公開されたMVを視聴した際は、(当然)初見の映像や詞を平行して追わなければいけなかったため、一つ一つの音を丁寧に拾うことは出来なかったのですが、アルバム購入後、目を閉じてじっくりと聴き込んだ結果、やっぱりいい音鳴ってるなあという感情になりました。鼓膜から全身に響いて心地のいい、そして実にsumeshiiiさんらしい仕上がりの曲になっていたと思います。

Fraさんが担当しているラップパートも、真っ直ぐに胸へと届く気持ちのいいものでした。Fraさんのフロウのよさは今更語るまでもなく、言葉選びのセンスについてもあまり突っ込んだことをいうとただの野暮になりますが、個人的に『とにかく海を目指した中古車が「次はいつだよ」って言ってくるのさ』が特に刺さったということだけは言っておきます。

そして、この楽曲に込められたメッセージについてですが、これはもう本当に付けられたタイトルそのまんまで、『ハッピーだけ歌ってたいよ』ということに尽きるのだと思います。

世の中には、つらいことも、かなしいことも、やりきれないこともあります。それはきっと、誰しも知っていることだと思います。

そんなことは、わかっている。

わかっているけれども、それでも『ハッピー』を歌っていたいんだと。

sumeshiiiさんが伝えたいことは、たぶんとてもシンプルなんだろうと、自分は解釈しています。

それはたとえば『楽しい』だったり、あるいは『希望』だったり、それから『前向きさ』だったり、そして『幸せ』だったり。

それらを、『ハッピー』という一つの言葉に集約して、そういうものを歌いたい、歌っていきたいんだと、切実に心から叫んでいる。

いいことばかりの人生じゃない、どうしようもない毎日だけれど、それでも今目の前にある――あるいは手を伸ばした先にある――偶然の『ハッピー』を大事にして、それを信じて歩いていきたい。

そういう歌として、自分は受け止めました。

後部座席の御三方の賑々しさも、とてもよかったです。

(本当はもう少し長々と語りたいのですが、かなりの自分語りになってしまうので、そちらについてはまた機会を改めることにします)


2曲目「芸術的に美味い寿司が喰いたい(ピクニック・ディスコ Cover)」入江陽 & Picnic Disco

続いて2曲目は、Picninc Discoさんの楽曲「芸術的に美味い寿司が喰いたい」の、入江陽さんによるカバーです(Picnic DiscoのKotetsuさんご自身が、アレンジのトラックメイカ―としても参加されています)。

音楽というのは音を楽しむと書いて音楽ですが、この曲に関してはむしろ、『音が遊んでいる』という表現のほうがしっくり来るなあと思いました。

あとは、レトロなコンピューターゲームを思わせる味わいがあったのが愉快でした。後からお聴きしたPicnic Discoさんの原曲にもその雰囲気はありましたが、こちらのアレンジカバーのほうが、よりその印象が強まっている気がします。

そして歌詞からは、sumeshiiiさんの楽曲「いつか回らない寿司屋で」に通ずる雰囲気――ありふれた特別や、なんでもないことの大切さ――も感じました。

ほとんど感想らしい感想が言えていないですが、とてもよかったです。


3曲目「まなざし」森永陽実

3曲目は森永陽実さんの「まなざし」。

音楽でありながらとても映像的というか、頭の中に情景が浮かんでくる作品でした。人によって心に描くイメージは異なると思いますが、自分の瞼の裏にあったのは街中の喫茶店でした。木で出来た椅子とカウンター、落ち着いた雰囲気、窓の外では緑のつるや葉っぱが白い朝の光に照らされている――そんな幻燈が写し出されていました。

優しい曲調と、朗々とした歌唱に心を揺さぶられ、最後にはそっと、それでいて力強く背中を押されて、澄んだ風の中に送り出されるような、不思議な聴後感がありました。わかりやすく言うと、この曲もとてもよかったです。

それから、sumeshiiiさんの手がけている昭和歌謡カバーのことも頭を過りました。

勿論、この「まなざし」という曲には、旧き佳さや懐かしさだけではなく、新しさや鮮やかさという魅力も含まれていると思います。


4曲目「闇夜にUmm(feat.高峰伊織)」いけだゆうた feat.高峰伊織

アルバムの折り返しを過ぎて4曲目、いけだゆうたさんと高峰伊織さんの「闇夜にUmm(feat.高峰伊織)」。

今回のアルバムの中で最も直接的に、リアルとバーチャルがcrossingをしている楽曲です。

結論から言うと、この作品も非常に独特というか不思議な聴き心地でした。神話のようでありながら童話のようでもあり、たぶん伝わらないと思いますが、『ステンドグラスに描かれた絵物語のような』曲でした。

うまく言葉に出来ませんが、すごい広がりがあるのに閉ざされている世界観があって、その中で沈んだり膨らんだり、揺れたり舞い上がったりしながら響いている高峰伊織さんの歌唱が素晴らしかった、とだけ言っておきます。

端的に言うと、とてもよかったです。

この記事を書いているのは深夜ですが、こんな真夜中に聴き返すのにぴったりの曲だと思います。


5曲目「crossing sushi beats(BONUS TRACK)」sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司

そして最後を飾るのはボーナストラック、「crossing sushi beats」。

思わず身体が動く軽快なリズムに乗せて、何度も何度も繰り返される『ここからどうしたい?』という問いかけ。

個人的に全ての歌詞が好きですが、『選ぶことはすり減らすことさ』というワードが特にフェイバリットでした。

ここまでもろくに感想らしい感想は述べてきませんでしたが、この楽曲にはもう、難しい言葉を並べる必要はない気がします。

アルバムの最後に相応しい、素晴らしい曲でした。

本当に、とてもよかったです。

sumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司さんは最高です。言いたいことはそれだけです。

今回のアルバムからsumeshiiiさんを知ったという方には、是非、いくつもの交差をしながら回転しているベルトコンベアを逆走して、始まりの曲である「回転寿司屋のランデヴー」まで辿り着いてもらいたいものです。


おわりに

素晴らしい音楽に出会わせてくれた主催のsumeshiii a.k.a.バーチャルお寿司さん、このアルバムの制作に携わった全ての方に、最大級の感謝を。

そしてこの記事を最後まで読んでくだった貴方にも感謝します。ありがとうございました。

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