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詩|静寂をきく

あ いま音をたてるものがない
そう気づいたら 静寂をきく準備をする
たとえば古いブラウン管テレビのノイズのように
さー
というような
たとえば沢山の人の中であの子が内緒の合図で
しー
と耳元でいうような
そんな静寂を聞くために 目を閉じる

じぶんのおなかがくるると鳴く
心臓のボリュームがいつもよりあがっている
となりの住人がトイレを流す
換気扇がいつものようにまわっている

素敵な静寂を聞くには相当な努力が必要だ
もしなにもない宇宙空間にひとり取り残されても
自分の鼻水をすする音に邪魔されそうだ
宇宙に花粉は飛んでないはずなのにおかしいな

とかく自分が消えてなくならない限りは
完全なる静寂は聞けなそうにないので
ぼくの代わりに君が聞いておくれ
深くて遠くてどこまでもつづく 静寂を

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