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夜の中に朝をみつけたい
夜が全然得意ではない。
小さい頃、隣で寝ている母の寝息が聞こえてきたら、この世にたったひとり取り残された気がしてほんとうに不安で仕方なかった。中学生の頃、文化祭の練習と称して夜の公園に集まったりしていた時も、薄暗い中で見る友人の顔は昼間と違うように感じて不安が募り早く帰りたかった。修学旅行の夜も、みんな夜遅くこそこそ話すのを楽しみにしていたようだが、最後にたったひとり眠れなくなる方が数万倍嫌だったので「先寝るわ!」と言って寝ていた。人が眠っている姿を見ると、こんなにも近くにいるのに全く手出しできない遠いところにいる気がして怖かった。いつも取り残される気がしていた。夜に人と居るのが苦手で、それは大学生くらいまで続いていたように思う。夜はできるだけ眠っていたかった。
おとなになったら、お酒を飲むようになって一人暮らしをして、随分と夜を過ごせるようになった。むしろ夜の中でしか見たことのない人も増えたし、一人暮らしでは夜眠れなくても隣で寝息が聞こえることもないので取り残された気もしない。それでも夜はそんなに得意ではない。夜の中にいると、これ以上もう何も変えられないと感じたり、何か間違った選択をしてしまうように思う。夜に安心できる場所はなく、常に朝におうかがいを立てながら夜を過ごしている。眠って朝が来ると安堵する。朝の暴力的な明るさに勝てる気がしない。朝の強さに従っていれば怒られない気がする。これは夜が苦手で朝が好きな話というより【夜が苦手で朝に怯えている】ということだろうか。全然よくわからない。困る。
いつもどこかで、取り残された、置いてけぼりになったと感じるのはみんな同じなのだろうか。
先手必勝
じゃあまたねの後
不通音を聞きたくない夜
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