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「SNS -少女たちの10日間-」の擁護に見えるアグレッシブロリコンの考え方

 チェコで話題となった「SNS -少女たちの10日間-」が日本でも上映されることになった。
 これはチェコで製作されたドキュメンタリー映画だ。成人(18歳以上)の三人の女優が12歳のふりをしてSNSに登録して友達募集をしたところ、たった10日間で2458人の成人男性が群がってきて、少女を性的な捌け口にしようとしたというドキュメンタリーである。チェコ警察にも証拠品として映像提出を求められた作品だ。
 予告を見るだけでも少女たちに性器のようなものの写真を送りつけてきたり裸になるよう命じたりといった場面や、少女の写真をネット上で拡散したり脅迫したりといった暴挙をしているのが見える。

 結論から先に言っておく。
 アグレッシブロリコンは正常な男性とは価値観や物事の捉え方が違いすぎる。性癖という意味ではなく、常識という意味でだ。

 日本のインターネット上でもこの映画についてはそれなりに話題になっている。もちろん、「怖い男性もいるものだ」「こういうのは早々に逮捕してほしい」という声も多いが、同時に残念ながら擁護の声も見られる。
「男が若い女を求めるのは当たり前」
「ババアを選ぶ奴より種としてまとも」
「やっぱりロリコンは正常」
「生理が来てるから男の本能として仕方なくね? 正常な本能を規制するのは男性への人権侵害だろ」
 などなど、目を覆いたくなるような言葉だ。
 なお、補足しておくとチェコの人口は2020年で1071万人。その中の成人(上限は70歳までとする)は40%弱だ。その中の今回の釣られた男たちを考えると(まあさすがに全員がチェコ人ではないだろうが)男性の中でも0.05%ほどの超少数派である。

 まず先に、若い女性を求めるのは男の本能だと言う人に対して反論がある。
 人間の本能における3大欲求は食欲、睡眠欲、性欲だ。
 お腹が空いたからといって、目の前にある他人の食事を奪って食べた人を本能だから仕方ないと言うだろうか? 否だ。他人のものだって、店の商品だって会計前に食べる人はいない。眠いからといってショッピングモールの通路で寝たり大事な商談中に仕事中に寝る人はいない。いずれも犯罪や人の迷惑になるからだ。大抵の人は法を守り、正しい手順を踏んで食事をしたり眠ったりする。理性で本能を抑えるのだ。
 性欲も本来そうであるべきはずだ。
 未成年との淫行、性的虐待は犯罪であるし、判断能力が十分でない子供に性的行為を強要するのは常識的に考えていけないことだ。本能だろうがなんだろうが、社会的なルールを守れないことを肯定してはいけないのだ。肯定することによって、そういった守らない連中が我が意をえたりとばかりに活動する土壌が育ってしまうのだから。割れ窓理論である。
 あと普通にティーンエイジャーは内臓も発育の途中なので子供を作るにも向いていない。14歳の母を見てほしい。

 さて、この映画の予告で、この実験に関する重要なポイントがある。12歳になり切った女優たちに課されるルールだ。

ルール1
 自分から連絡しない。
ルール2
 12歳を強調。
ルール3
 誘惑や挑発はしない。
ルール4
 性的な指示はやんわり避ける。

 もし普通の男性がちょっとした下心をもって彼女たちに連絡をとった場合どうなるか想像してみよう。
 最初のこちらからの呼びかけには答えてくれたが、会話の中でやたらと12歳であることを強調してくる。誘惑などもしてこないし、エロトークに持ち込もうとしてもかわされてしまう。向こうからは連絡がない。
 普通はこう考えるのではないだろうか。
「自分は彼女のお眼鏡にかなわなかったのだ。エロ目的ではなく、純粋に友達を募集していたのだろう」
 と。

 女優に課せられたルールを想像すると、とかく12歳の少女たちはエロ目的ではないのだ、という予防線を張っていることがうかがえる。
 特にルール2だ。
 ペドフィリアと定義されるのは13歳未満の子供に性的恋愛的に衝動を抱く人間のことである。
 1度なら自己紹介であるが、少女たちが自分は12歳だと強調するということはつまるところ、
「大人っぽく見えても私は子供だよ?(手を出したら犯罪になるよ?)」
 という牽制なのである。
 チェコにおいても未成年に対しての性的虐待は当然犯罪である。年齢を言うというのは、いわばうっかり間違えてコンタクトしてしまった人を引き返させるチャンスを与えているのだ。

 しかしながら今回の映画のロリコン擁護、またロリコン肯定派の人間の言説を見ているうちに、衝撃的なことに気づいてしまった。
 この「12歳だ」と強調するのは、どうやら彼らにとって「性的な魅力アピール」に見えるようなのだ。そう考えると彼らの言動に納得がいく。一般男性と隔絶している彼らを仮にアグレッシブロリコンと呼ぶ。
 アグレッシブロリコンは、例えるならば合コンの「私脱いだらすごいんです」とか「私、Fカップなんです」とかいうアピールと「12歳です」を同じに感じているのだ。何故ならば彼らは幼い子供に性的な魅力を感じているから。だから同じ理屈で子供も性的な魅力として幼さをアピールしていると思っている節があるのだ。そして子供から見て自分が恋愛対象であると勘違いしている節もある。
 一般的な大人にとって子供は庇護する対象だ。だがアグレッシブロリコンにとっては子供は性的なターゲットであり、恋愛市場に参戦している相手で、自分に性的アピールをしてきている相手なのだ。
 先の合コンの例で言えば、アグレッシブロリコンが好みの合コン参加者から“積極的性的アプローチ”を受けたので話しかけようとしたら、好みじゃない別の合コン参加者が邪魔してきている状態なのである。だからこそ子供を守ろうとする成人女性に対して「ババアの嫉妬」などというトンチンカンなセリフが出てくるのだ。
 また、「自由恋愛だ」と妄言を吐くのも同様である。彼らにとって子供は(自分が20代でも40代でも)自分と同じ恋愛市場に出ている相手なのだ。なんなら、幼い方が支配しやすい、丸め込みやすいと考えている人間もいるだろう。

 つまり恐ろしいことに、対アグレッシブロリコンにおいては、一般的常識的な男性に対するやんわりとしたお断り文句が通じないのである。逆に、性的なアピールしてきていると取られかねない。

 この場合、子供を持つ親はどうしたらよいのか? 悲しいかな、自衛と教育を強化する他ないのである。とかく性教育とネットリテラシーについてしっかり教えるほかない。少なくとも、一般と画した思想を持つ上に行動力もあるヤバい奴がいることを教えなければならない。安易に自分の写真をネット上に流すのも危険だ。向こうはそもそも価値観や考え方が違うのだ。自分や身近な人と同じと考えると痛い目を見る。
 何せ厄介なのが、異常者というのは一目で見分けがつかないのだ。よく夜道で痴漢や変質者を警戒する若い女性に対して「男を一括りに変質者あつかいするなんて!」と憤って口撃する方がいらっしゃるが、そういった方は世の変質者を片っ端から見つけ出して警察に突き出してほしい。きっとその方は変質者の見分けがつくのだろう。残念ながら多くの人にはわからないのだ。人気のない道や夜間ぐらい見知らぬ人は警戒させてほしい。別に日中のオフィスやカフェであなたを警戒しているわけではないのだから。
 なお日中でも女性から警戒されるという方は、身近な人に自分が歩いているところや食事をしているところを動画で撮影してもらって確認してほしい。ヤバそうな小汚い挙動不審の男が写っているかもしれない。


 最後に、性的嗜好の是非について。
 個人の思想という意味では性的嗜好も自由であるべきだと思う。が、問題はその性的嗜好を行動に移したとき、それが社会的法律的に正しいか否かであると思う。今回の12歳少女に群がった男たちは当然ダメなほうだ。
 極端な話、「あいつムカつくから殺したい」と考えることと、「あいつムカつくから殺した」では雲泥の差があるのだ。前者はまだ周囲から共感が得られるが、後者は得られないだろう。また、前者にしても公共の場で大きな声で言えば周囲からの批難の眼差しを向けられることは間違い無いだろう。
 例えば家の中では裸族だという方が家の外にそのまま出た瞬間犯罪者になってしまう。
 心の中で思うのも、プライベート空間で自由に振る舞うのもその人の自由だ。しかしそれが他社が存在するパブリックな空間でどうなるか、どう見られるか、というのはよく考える必要がある。
 特に昨今はインターネット上という、パブリックでありながらもプライベートの属性を持つ場所が増えてきた。
 wwwで情報を発信するということは他者と関わることなのだということを、大人も子供も肝に銘じておかなければならない。

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