熱量

ツイッターを見ることで、情報収拾において多大なる効果が得られるようになった。推しの情報を得られるようになった以外にも、興味があること全般における先駆者の情報が惜しみなく提供されているのだ。

食事のバリエーションは格段に増えた。テレビ番組のアカウントや料理研究家のアカウントが絶え間なく提案してくれる。

本当にありがたいのは、美容アカウントだ。コスメマニア、美容マニアのOLさんが、今まで集めた情報をまとめて公開してくれている。もちろんアフィリエイトやYoutube動画再生回数を伸ばして収入にしたいという下心があるのだろう。しかし同時に、本当に自分を可愛くすることに興味があって、研究することや実践することが大好きな人たちなんだなぁと感心する。

顔の形や肌の色を分析し、メイクや髪型や洋服選びに反映させるべきなんだとか、芸能人の写真やイラストを例に挙げて説明してもらうととても分かりやすい。

しかし、教わったエクササイズを早速実践しても、私は割とすぐに面倒になってしまう。最長で3ヶ月くらいしか続けられず、たまに思い返してまたやり始めるが、また忘れてしまう。熱量を継続することができないのだ。ちなみに長く継続した習い事もない。

妙な情報も得た。最近の大学生くらいの年齢の女の子は、割と簡単に整形するし、程度の軽重はあるが要するに風俗と呼ばれるところでアルバイトをし、パパ活をする。

〝可愛くなれば人生楽勝コースに進めるのは分かっているんだから、効率よく大金を稼いで、自分の悪いところ直して、痩せるべきなら痩せて、とにかく早く取り掛かるべき〟〝やるべきこと分かってるのにやらないのはサボり〟インフルエンサーのお嬢さんがこうツイートして、たくさんの賛同を得ている。ずっと痩せられないオバさんの私にもググっと刺さるが、この強気のポリシーを見習って可愛くなろうと追従するお嬢さんがたくさんいる。

高校生くらいでこういう思考を叩き込まれてしまって、成功とはこういうことなんだと信じてしまうとは恐ろしい。就職活動の王道の質問「大学生の頃打ち込んだことは何ですか」に対して「勝ち組になるべく、可愛くなることです。パパ活で○百万稼いだのが実績です」と強気で返答するのだろうか。ほんの数ヶ月前だが、コロナ禍で採用活動が凍結されてしまう前の幸せな時代の話だ。追従していたお嬢さんたちがまともに就活で成功するとは思えない。

女児持ちの友達は大変だと思う。高校生や大学生あたりでも、あまり目を離すととんでもないことになる。子育ての熱量は長く継続的に維持しなくてはいけないと肝を冷やした。


他にも、何かに対して徹底的に頑張っているママの頑張っていることに関するツイートを追っていると、思わず夢中になってツイートを追ってしまうことがある。

糖質制限をしている人は、徹底的に砂糖や小麦粉を何かに置き換えて料理する。○さんのレシピを参考にしました〜から先の記述がすごい。あらゆる材料をザラザラした茶色の代替品に置き換えているので、多分最終的に別物になっていると思う。本人は当たり前だと思っているし、脳内で全部置き換えられるようなプログラムが組まれているし、食品のカロリーも覚えている。すごい記憶力だ。


私たちはたまたま近所にあった小中高一貫校の付属幼稚園に子どもたちを入れたが、エスカレーターを利用せず公立学校へ進学させることにしている。十分納得の上でこの選択をしたのだが、折々これで良いのか悩んでしまう。

そんな時、小・中学受験家庭のママのツイートから、小・中学受験体験ブログを辿って見ると、その熱量に驚かされる。ママが子どもの特性に合わせて学校を選択し、学校の受験傾向を分析し、その学校に合った塾に通わせる。ママが子どもの宿題を添削し、模擬試験を分析し、得意不得意を分析する。ママが日々の学習内容をプランニングし直し、塾を増やしたりもする。進学する学校のロケーションに合わせて持ち家を手放して引越しする家もある。だいたいのパパは「いいんじゃない?」と言いなりになってくれる。ママの持っている裁量権が絶大で、そこにも驚きを隠しきれない。

ブログの趣旨を優先するために、意図的に記載していないのだろうとは思うが、日々のご飯どうしようとか、今週は何曜日に買い出しに行こうかとか、お母さん業務に関する記述がない。きっとママがその分野も全部やっているんだろうけど、脳内の思考の割合が私と全然違う。私はそんなに熱量を子どもに捧げながら日常を過ごしたら、気持ちがスカスカになってしまう。好きなように雑誌を読んで、映画を見るような自分の時間も欲しいし、子どもにも自由時間を過ごして欲しい。あと、何百万円も私の意思で動かすのは怖いから、そんな裁量は要らない。


頑張っているママたちは、思い描いた理想像や目標に対して突き進むエネルギーが段違いだ。私に生まれ備わった装備と全然違う。四駆のラリーカーが泥々になりながら険しい山に挑むドキュメンタリーを見ているような、同じヒトとは思えない不思議な気持ちになる。


「やっぱりキッチンは奥様の理想を詰め込んだ夢の仕様になっていますか?」注文住宅に関する番組や雑誌の記事には必ずこう質問があって、奥様がよくぞ聞いてくれましたとばかりにあれやこれやを説明する流れがある。これも私にはない。家の全体の設計と同様に、夫と2人で思い描いたようにしてもらった。

家を建てる時、私たちは何年もかけてリサーチをした。建物探訪を漁るように見て、雑誌を読んで、スクラップした。今でもかっこいい居住空間の写真を見るのが好きだ。もっとずっと前に遡ると、大学の卒論はアメリカのティーン誌を創刊号から全部読んで分析して書いた。一次資料の集め方が上手かったと、教授からとても高い評価をもらうことができた。

こう振り返ると、かつては私にも熱量があったように思う。色々調べて集めることが好きなのは確かだと思う。色々調べて情報を集めるのは好きだけど、それを燃料にメリメリ進む機構を持ち合わせていないのだと思う。


最近、強目のカロリー制限をしている。ステイホーム期間なら強目のカロリー制限ダイエットをして仮に倒れても、夫が24時間一緒だと気がついたからだ。〝やるべきこと分かってるのにやらないのはサボり〟と若いお嬢さんが言っていたのをちゃんと学習した私は、気がついてから間をおかずすぐに色々リサーチし、挑戦している。

なのに、1週間経って体重はピクリとも変動していない。みるみる体重が落ちる程肥満ではなかったという朗報なのか、食べてよい食品の判断基準が間違っているのか、よく分からない。ちゃんとやる気を出して取り組んでいるのに結果が出なくて納得いかない。

残念なことに、私には熱量がないだけではなく、摂取したり排出する熱量をコントロールする技量すらないらしい。家庭の家計を動かして、子どもの進路を決める熱量は欲しくない。だけど、せめて食物の熱量は正確に身体に反映させたいのに。

目標設定や効率的な歩み方、熱量の抱き方については、私は子どもに何にも指導できないと悟ったのだった。

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