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また明日から

記録に残さなかった日常は、記憶のどこかに紛れ込んで、きっかけがない限り永遠に見つからない。

そういった日常達は、死んでしまったに等しいのではないか、と思ってしまう。

大切な大切な日常を、なるべく忘れないために、文字に起こす。

全てを書き表せなくても、せめて忘れたくない今日だけは、ここに留めておこう。

帰省

一昨日の夜、人生初の帰省をした。

↑これ参照ね

憂鬱な気持ちが80%位を占めていて、荷物も重くて、足取りが重かった。

でも

まあそんなことになるだろうと思った。

最寄り駅まで迎えに来てくれた母の車へ乗り込んだ途端、涙が溢れてきた。

ああ、帰ってきた。

なんだかそんな感じのモワッとした気持ちになった。

そして

実家の玄関に入った。

ああ、帰ってきた。

そんな気持ちで胸がいっぱいになった。

涙が溢れてきそうだったので、必死に堪えた。

そこからがとても不思議な気持ちだった。

過ごす時間全てが、今までの日常の中の一部のような、でもなんだか非日常の夢の中のような時間だった。

口にする母のご飯も、お風呂の湯船も、階段の上り下りも、二枚重ねた敷布団も、全てが昔の日常だった。

しかしなんだか、私だけがいないパラレルワールドに迷い込んでしまったような、違う世界にいるような気持ちも少しあった。


やたらピヨピヨ外から聞こえて目が覚めた。

どうやら地元には鳥が相当いるらしい。

穏やかな朝を迎えて、ハッとした。

鳥がこんなに鳴いているなんて、今まで気づかなかった。

何かと何かを比較しないと、気づかないことはきっともっとたくさんあるだろうと、ピヨピヨで気がついた。

進んでいる時間が、夢のようなすごくリアルな現実のような、やっぱり夢のような日常のような、不思議な気持ちだった。


今は、新幹線の中だ。

夜ご飯は家族で回転寿司に行った。

小さな頃から、私と妹がレーンの近くに座り、私の隣は母、妹の隣は父だ。

誰よりも私が早く注文して、父はビールを飲んで、妹とは母えんがわを食べる。

なんてどうでもいい日常なんだろう。

しかし、そんな日常が愛おしい。

手放さないと気づけなかった。

家族は素晴らしかった。

行きの荷物より帰りの荷物のがだいぶ大きい。

何かのCMで言っていた。

私も本当にそうだった。

帰ってからまた帰るまで、誰も泣かなかった。

しかし、みんながきっと、堪えていた。

愛されているということはこういうことかと感じた。

離れていくのが辛くなった。

離れたから気づけた。

自分で選んだ。

後悔はしていない。

この気持ちは、幼い子どものようだ。

大切に大切に抱きしめていよう。


車から降りた。

「改札まで行くぞ」

いつもはそんなことしない父がついてきた。

キャリーケースを引いてくれた。

改札に入った後

「がんばれよ」

サッと手を上げて、一瞬目が合った。

私も「うん、ばいばい」

そんなようなことだけを言って、顔を上げた。

同じくらいのタイミングで歩きはじめた。

振り返らなかった。

父はもしかしたら振り返ったのかもしれない。

いや、そのまま真っ直ぐ歩いて行ったのかもしれない。

それでいい。

愛が伝わるのは十分だった。

新幹線

さっきからダラダラと涙を流しながら、鼻を永遠にかんでいる。

割と人が乗っているこの時間の自由席。

皆が思うままに時間を過ごす車内。

隣の人がパズルゲームに夢中でよかった。

愛を与えられて、愛されることを知った。

私は誰かに愛を与えられる人間になれるだろうか。

涙を流しすぎて急にドッと疲れが押し寄せてきた。

さっきから言ってるけど鼻水がより止まらない。

この辺にしておこう。

ああ、本当に帰ってよかった。

いつか

きっと恩返しができるように

そして、私も誰かを愛せるように

愛を与えてくれた、父と母のように

何でもない日常を、続けていってやろうじゃないの

私の人生で1日しかない明日を、愛せる日がまた来るように

ありがとう

頑張ってくるね。

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