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【二人のアルバム~逢瀬~①枕辺 (ピロートーク)~】(フィクション>短編)


 ――で、何処へ行きたいって?

あ、そうね。北陸…かな。

――また、寒いところを選んだね。

そうね。でも高山には行きたいなぁ、って思ってるの。

――高山か。古い家並みがいいよね。何か行きたい理由あるんだ。

そう。昔、小さい頃、母と訪ねた事があるのよ。

――へぇ。小さいころ?

うん、そう。とっても小さいころ。まだ、小学校の3年生くらいでね。
突然、母が
「冬休みに高山行かない?」
って話していたんだけど、理由も分かんなくて。
当時ね、父がまだ帰宅していなくて、刑務所から。
母は一人でお店を経営してね。
キャリアウーマンしていたのよ。

――へぇ。あなたみたいにしっかり者だね。

…、母と一緒に一週間弱で色々な所へ廻ったんだけど、高山は二日程度でね。何か、クーポンみたいな、招待券みたいなものを持っていて。

…二人で朝ごはんの後、散歩で朝市行ったりして、凄く楽しかったの。でもね、子供でしょ(苦笑)、なんでこんなところに来たのかな、って思っていたわ、小さいなりにね。

…夜、すぐに寝ちゃってね…。
母が一人で夜動き回っていたの、知らなくて。

――…あのさ、「一人で夜動き回る」って、どう謂う事?

ん~、マッサージとか、温泉とか。クーポンや招待券の奴よね。
当時ね、眠れなかったみたい。
ホテルと旅館の間の様な処でね。素敵なところだったのに、すぐ寝ちゃって。ガキだからさ(笑)。
母ね、誰かを忘れようとしていたのかな。今、考えるとね。

私がグッスリ寝ちゃった、と思って、詰まんなかったのかな。
一人で下の階に行っちゃって。

夜、午前1時ごろに目覚めたら誰もいなくて、外は雪じゃない?
泣きながらフロントに電話したりして、大騒ぎになって(笑)。
今、考えると顔から火が出ちゃう(笑)。

女将が母をマッサージのお部屋で見つけてくださって。すぐにお部屋にお電話くださって。「お母様、すぐ帰ってきますよ」って。
…、母にも、女将にも、悪かったなって(笑)。

――あ~、心配しちゃったんだ。子供だから、ママがいなくて寂しくなって。

そうそう。ママがすぐに帰ってきて、笑ってて、
「ごめん、ごめん」って。私はガキだから、大粒の涙を流していてさ(笑)。

――でもさ、子供だったんだし、しかたないさ。
…で、俺と一緒に行ってくれるの?

高山?

――うん。高山。あなたより若いけど、すぐ寝ないようにするから(笑)。

あはは。大した年の開きじゃない癖にぃ(笑)。数年じゃ大した違いはないわ。

――そうだね(笑)。

勿論。大歓迎だわ。
一緒に来てくださると心強いし、嬉しいわ。

ねぇ、泊まるところ、何処か決めてくださる?

――俺が決めていいの?

好いわ。あなたがご一緒してくださるなら、何処でもいいけど、あなたが宿を決めてくださいな。泊まった場所はね、名前も憶えていないの。

結構素敵な温泉ホテルだったのよ。
ホントにご一緒してくださるの?

――うん!勿論。あなたがいいなら、何処へでも行くよ。あなたが俺を連れて行ってくれるなら、ホントに行くよ。
忙しい?うん、忙しいけどさ。何とか、スケジュール片付けてね。
ん~、休みの取り方を考えないと、だけどさ。冬がいいんだよね。

ん。いつでもいいわ。あなたとなら夏だって。

――ん。一緒に行こう。楽しみだ。

素敵。

――で、体調はいいのかな。

あ、こうやってね、あなたの指が私のと絡むの、ねぇ、凄く好きよ。

――ホントに?

ホント。…体調はね、好いわ。最近、クラクラしないし。
貧血もないし。仕事も楽しいし。風邪がやっと直ったわ。

――あぁ、良かった。いつも心配してるんだ。あなたは身体が弱いからな。

ごめんなさいね、心配させちゃって。
あなたって私を甘やかし過ぎだわ。私、あなたが大好き…。

――俺も好きだな、あなたの事。

嬉しい。…ね。

――ん?

高山で朝市、行きましょ。お土産、たくさん買っちゃう。母がね、高山でしょうゆ味のニンニクのお漬物、凄く憶えてるの。母が大人買いしていた(笑)。

――あはは~、にんにく、においそうだな(笑)。
いいよ。朝早く起きなきゃね。叩き起こすぞ(笑)❣❣

そうよ。夕ご飯食べたらすぐに部屋にこもって一緒にグーグー寝ちゃって、翌朝、超朝早く起きちゃうのよ(笑)。

――あはは~。そんなに早く寝れるかな。俺達、たくさん愛し合えるな。

厭ぁだ、恥ずかしい。顔が熱いわ。

――可愛いな。あなたは俺の可愛い人だよ。

嬉しいわ。あなたのモノよ、私。こうやって抱きしめられるの、素敵。
こうやって少し手を繋げるだけで充分よ。
あなたの事、大好きよ…。

――俺も大好き…。



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