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おいぬ様2

おいぬ様にご挨拶をした帰りの話。

ゴールデンレトリバーに呼ばれるままに行ったら、その子はシッポを振ってそれはそれは喜んでくれました。前足を私のお腹につっぱって、ニコニコ。大きな体でのしかかってこようと、お母さんに買ってもらったお気に入りのコートが毛だらけになろうと、その無邪気な喜びのハイテンションの前で、私はただ犬への愛しさを噛みしめ相合を崩すしかないのでした。可愛いなあ。犬。お腹を見せて撫で撫でしてと催促するものだから、わっしゃわっしゃ撫でてあげました。これでどうだ、満足かあ、よしよし。犬は飼ったことなかったけれど、意思疎通は経験あるなしの次元でなく気持ちの問題なのねと、初めて犬にスリスリされながら悟ったのでした。家族の前でもこんな姿を見せないのに、どうしてかしらと飼い主さん。ふと私は、今日、御嶽神社に参拝してきたので、ここにおいぬ様を連れてきてしまったのかもしれませんね。なんて、初対面にも関わらず、なんともオカルトな返答をこぼしてしまったのですが、それを聞いた飼い主さんが、きっとそうね、と、微笑んでくださったので、ひとり心温まる思いでした。

大きな体で、はしゃぎまくっていたゴールデンレトリバーの犬さんは、ようやく落ち着いて、ヘッヘッと言いながら私の足の上に、スッキリ整った毛並みの頭を乗せて、ご機嫌そうに私と飼い主さんの話が終わるのを待っていたので、ではこれでと、飼い主さんは立ち去ろうとしましたが、犬はやっぱり私にぴたりと寄り添い、テコでも動かない意志を表明。困ったなあと飼い主さん。では、そこまで送って行きますよ、と私は道の角まで一緒に飼い主さんと犬と歩きました。ああ、このワンコのように、心の向くままに、私ももうちょっとはっきりとした意志の上で生きていけたら楽なのかなあ。ああしてこうしてと、正直に甘えることを、いつからか出来なくなってしまったことに気づきました。いつの間にやら大人になってしまったと自覚する束の間のセンチメンタル...なんか、思い出させてくれてありがとう。うふふ。

私の歩調に合わせて歩く犬さんの、つぶらな瞳を見ながら、やっぱりここにはおいぬ様がいらしてるわと思わせる不思議な出会いでした。