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物語3

この物語の始めに引っ越しの話をしました。
その回には登場しなかったもう一人の息子のお話をしましょう。
その子は上の2人の姉兄とは明らかに違っていて、人からの評価を全く気にしない訳では無いけれど、評価のためにがんばることに意味を感じていない様子でした。偏見かもしれませんが、大抵の子供は、お母さんに褒めてもらうのが嬉しくて勉強だったり習い事だったりを一生懸命頑張ります。(親の方もその子のためになると信じて励ますわけだから、何も悪くないよ!)そう、上の二人はそうでした。でも、3番目は全然ちがったの。僕は僕のままでいいんだ。ママが僕を愛していることはちゃんと分かっているから、みたいな感じだと思う。自由で優しくて人一倍健康。私が忙しくてイライラしているせいで、ほかのみんなが気を使って緊張感に包まれている時でも、彼が何の気なしに話し出した瞬間、その緊張した空気は消えてなくなり穏やかで和やかな時間が流れ出す。

その子はずっと家に居ました。高校を卒業後、イラストレーターになるといって専修学校へ行きました。就職活動をする様子はなく、そのあともアルバイトくらいしたら?と勧めてみたけど全く響かず。
一生懸命描いている時もあって、お年玉以外に小遣いはあげてないからケータイ代くらいは何か収入があるのかな?とか思っていました。
なんでだろう。
自分の人生をどんなふうに生きようとしているんだろう?もしかして、本当に何も考えていないのでは?居てくれるのは全然構わないのだけど、でも、いつかはみんな居なくなるんだよ?
あの子が卒業してからずっと、そんなふうに思ってきました。彼の心の内はわからないけど、リミットがあることは理解していてくれたのかも。

我が家は就職した翌年から家賃5万円です。
お姉ちゃんは同棲を始めるまで払っていました。帰ってきた今も払っています。兄は、就職して1年も経たずに家を出ました。ただ、二人とも大卒。そして例の彼は今年24歳。先月からバイトを始めました。
なんか、ほっとしました。止まっていた時間が動き出したようで。
どうか、生き活きと人生を生きてください。あなたが選んで生まれてきたこの世界には求めていた何かがきっとあるのだから。
あなたが生き活きと生きてくれることが私の幸せです。


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